2018シーズン最後のグランドスラム、全米オープンテニス。8月27日~9月10日までWOWOWが連日独占生中継する。同中継の解説を担当するのは、おなじみ松岡修造さんだ。(取材・撮影・編集は、大日方航)
そんな修造さんが全米オープンで注目する選手の1人は、今ノリにノっている大坂なおみ選手。
今季、全豪オープンでグランドスラム自己最高のベスト16へ進出し、3月にはWTAツアー初優勝達成と、大きな飛躍を遂げた。
修造さんは、「大坂さん…。この間、取材で会ってきたんですよ」と明かしたあと、一定の間を空けて「僕は、好きですね」とボソッと述べ、報道陣の笑いを誘った。
先日、インタビューを大坂選手に対して行ったのだという。
「40〜50分くらいのインタビューをしたんですよ。マネージャーに、そんなにする必要ないと言われたんですが、だから必要なんだと。一問一答にならないように、策を練っていった。『どうして』と聞いたら『わからない』と返ってくる。じゃあ、『どうしてわからないの』と永遠に聞いていった。そこにはちゃんとなおみさんの答えがあった」
大坂選手の魅力とは
そんな大坂選手。改めて修造さんは大坂さんの魅力を「考えないこと。何をするかわからないこと」と認識したのだと明かす。だからこそ、大坂選手のプレースタイルが変化していることに違和感を抱いている。
「少し、型にはまっていく方向になりつつある。『もっと考えてプレーしなさい』と言われているんでしょうね。不安なのが、フォアハンド。良くなっているんです。コンパクトな振りで、ちゃんとコントロールできている。プレーヤーとしてはいいこと。だけど、考えてコントロールして打っているので、いままでのようにとにかく力いっぱいバカーンっと打っているわけではない。だから球が前ほど『怖くない』んです。『バカーン』と、フェンスに入るような打球。それがなくなった。これがどういう方向で試合に出てくるか。普通の選手だったら考えてコントロールして打つということはとてもいいことですよ。でも、彼女ならではの感性がどう変わっていくか…」
大坂なおみ選手(Getty Images)
『なおみキャンドル』を灯し続ければ、無敵
修造さんは、大坂さんの調子の状態を『なおみキャンドル』と命名している。強い心の炎を絶やさず、とにかく燃え続けさせること。それが大坂選手に求められることだ。
「彼女の炎がオンになっているときは、相手が世界一だろうが、攻撃的な選手だろうが、守備的な選手だろうが、100%勝ちますよ。太刀打ちできないです。でも、炎を消した時点で別人。それをコーチの人に言ったらものすごく喜んでいて。『そう、その現象は日本語で何て呼ぶんだ?ロウソク?』なんて聞いてきましたね」
「話してみて良く分かったのが、試合中に、自分のテニスがどうなっているか彼女自身がよくわかっていないということ。そんな人、俺ははじめて聞いた。でも、それがなおみさんなんです。わかっていないことがいいことだと捉えたい」
「見事優勝を飾ったインディアンウェルズ。あれだけいいテニスをしていたのに、自分がよかったというより、『相手があまり良くなかったから』と言うんです。『いやいや、なおみさんが良かったから相手が悪くなったよね?』と問うと、『そうかな?』って。でも、それがいい。知っていけば知っていくほど、じゃあミスしないように、と考えるようになる。いままでのいいところを残しながら、どんな自分も受け入れられるなおみさんになってほしいと思っています。」
「全米オープンで優勝しても誰も驚かないですよ。解説者も(優勝候補に)彼女の名前を挙げてくるんじゃないですかね。プレースタイルと才能を考えたら可能性ありますよ。トレーニングの様子も見学したのですが、練習中に腕立てとかダッシュとかやってるんですよね。それも楽しそうに。どんどん体力をつけてきています」
【編集後記】
インタビュー終盤、「大坂なおみ選手が全米オープンで優勝できる確率は」という質問に対し、修造さんは「100%か0%でしょうね」と笑った。
「なおみキャンドルが、つくか消えるか。大坂さんが(全米オープンで)勝った時は、『あなたはすごい、あなたがプレーしたら誰も敵いません』と称えられるでしょう。でも、負けた時は『え、なに、どうしたの?』という感じになるでしょうね。どっちかです」
大坂選手が『なおみキャンドル』を灯し続けたまま、全米オープンで無双する姿を、ぜひ見てみたい。
≪全米オープンテニス放送予定≫
・全米オープンテニス
・8/27(月)~9/10(月)WOWOWにて連日独占生中継
※第1日無料放送
※9/1(土)の第5日(7:30~15:00)無料放送
《取材・撮影・編集:大日方航》
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