プロ野球のレギュラーシーズンが大詰めを迎えている。10月に入ってから巨人、阪神との直接対決を制した首位ヤクルトに優勝マジックが点灯。6年ぶりのセ・リーグ制覇へ、カウントダウンがいよいよ始まった。
SPREAD編集部では、かつて広島の正捕手として活躍し2度のゴールデングラブ賞とベストナインに選出、引退後は巨人のバッテリーコーチなども歴任した、野球評論家の西山秀二氏にインタビューを実施。明暗分かれるかたちとなっているヤクルトと巨人、そして捕手の重要性などについて話を伺った。
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■「覚悟の采配」がもたらしたもの
屈辱の2年連続最下位から、6年ぶりの優勝がいよいよ現実となろうとしている。8日からの対阪神3連戦を全員野球で乗り越えたヤクルトの勢いは本物だろう。なかでも西山氏が高く評価する点が、就任3年目を迎えた高津臣吾監督の采配だ。
「ベンチを見ていても分かるように、素晴らしい雰囲気を作り上げていますよね。そして、覚悟を持って自身が全ての責任を負うという采配を貫いています。申告敬遠ひとつとっても、その姿勢が伺えます。最初から歩かせてくれるので、捕手としてもやりやすい。カウントが不利になってから同じ指示を出されても、その状況をつくったバッテリーの責任に見えてしまうのです。投手出身の監督にはあまりいないタイプなので驚きました」。
長年の懸案事項であった投手陣の整備に成功した点も見逃せない。リリーフ陣では清水昇や今野龍太が飛躍のシーズンを送り、巨人から移籍の田口麗斗もすっかりチームに欠かせない存在となった。
そして、ヤクルト躍進の象徴的存在となっているのが、高卒2年目の奥川恭伸。2桁勝利にも王手をかけている状況だが、9月以降は4戦4勝と抜群の内容でチームに勢いを与えている。西山氏も奥川について「昨年の時点で、もっと起用しないのが不思議なくらいだった」とその能力の高さに言及し、決して無理をさせずに慎重な起用を徹底する高津監督の“強い覚悟”を称えた。
■苦しむ巨人…正捕手が固定できない理由とは
勢いに乗るヤクルトとは対象的に、巨人はその失速ぶりが顕著であり、原辰徳監督の采配も“キレ”を欠いている印象だ。例として挙がるのが固定しきれない捕手起用。今季は大城卓三と小林誠司が併用される状態が続き、9日の広島戦では3番手の岸田行倫までスタメンで出場した。かつてコーチも務めた古巣の現状を西山氏はどう見ているのか。
「大城はあれほど打撃がいいのに、正捕手の座を掴めていない。本来であれば『打てる捕手』はスタメンで使い続けてもらえる立場です。大胆なリードをしたとしても、自ら打って挽回できます。若き日の阿部慎之助も、そうやって一流になりました。
定位置を掴みきれず小林や岸田との併用が続くということは、リード面などでの物足りなさが残っているということ。捕手のリードは、痛い目に遭いながら学び、成長していくものでもあるので、失敗を恐れずに高みを目指して欲しいですね」。