【プロ野球】大躍進ヤクルトが警戒すべきは「捨て身の巨人」 理論派OB・秦真司が警鐘を鳴らす“CSの落とし穴”

引退後は巨人のバッテリーコーチなどを歴任した元ヤクルト・秦真司氏(写真:SPREAD編集部)

プロ野球のレギュラーシーズンは残り5試合を切っても、首位・ヤクルトと2位・阪神のマッチレースが続いており、セ・リーグの優勝争いは予断を許さない。3位・巨人はここにきて手痛い10連敗を喫し、ついに貯金を使い果たしてしまった。1敗も許されない広島の足音が迫る中、クライマックスシリーズ進出をかけた熱戦が日々繰り広げられている。

SPREAD編集部では、かつて黄金時代のヤクルトで捕手、外野手として活躍、現役引退後はBCリーグ・群馬ダイヤモンドペガサスの監督や巨人のバッテリーコーチなどを歴任された、野球評論家・秦真司氏にインタビューを実施。セ・リーグのペナントレース総括と、クライマックスシリーズの展望を伺った。

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■新戦力が台頭した全員野球のヤクルト

セ・リーグの優勝争いは、9月下旬まで三つ巴の戦いが続いていた。そこから明暗が分かれた要因はどこにあったのか。現在首位を走るヤクルトについて秦氏に伺うと、チームが持つポテンシャルの高さに魅力を感じたと語っている。

石川雅規小川泰弘に頼らざるを得ない先発投手陣が長年の課題でしたが、そこに奥川恭伸高橋奎二などの成長著しい若手が加わったことで状況が好転しました。リリーフ陣においては、抑えをマクガフに固定することで役割分担を明確にでき、セットアッパーである清水昇の安定感が増したことも追い風になりました。

年間を通してのプランや毎試合におけるプランに安定感が出てきたことで、高津監督、現場スタッフ、選手の一体感が生まれ、士気の高まりを感じます。コンディショニングにおいても、非常によい影響が出たのではないでしょうか」。

秦氏は、ペナントレース前半戦終了の時点でヤクルトに大きな可能性を感じたという。不足していたピースが揃っていく確かな手応え。投手陣に限らず、野手陣では塩見泰隆がリードオフマンとして台頭し、山田哲人村上宗隆の前に「塁に出してはいけない打者」の存在が確立できた。加えて、外国人選手の的確な補強も重要だったと話している。

オスナサンタナ、どちらも日本のプロ野球に適応できるクレバーな選手です。不利なカウントからでもしぶといバッティングができるため、ヤクルトのチームカラーにも合っている。打線全体が機能した要因のひとつだと思います」。

「球団と現場の方向性が一致している」と秦氏は強調する。昨年最下位からの大躍進が、偶然の産物ではないと言われるゆえんだろう。

■徹底的に研究された前半戦首位の阪神

連日、ルーキー佐藤輝明の活躍が報じられるなど、前半戦の主役は快進撃を続けた阪神だった。秦氏は、シーズン終盤まで混戦を招いた要因として「東京オリンピック」の存在を挙げている。およそ3週間、プロ野球の公式戦が休止するという変則的なスケジュールにより、仕切り直す猶予がもたらされたというのだ。

「各球団、公式戦が休止している期間を利用して首位の阪神を徹底的に研究したのでしょう。前半戦の原動力になった佐藤輝明の大不振は記憶に新しいと思います。活躍したルーキーが翌年不調に陥ったとき『2年目のジンクス』と評されることがよくありますが、それに近い状況が生まれたのではないでしょうか。前例のないインターバルがいろいろと影響を及ぼすだろうと踏んでいましたが、それが最も悪いかたちで現れたのが阪神でした」。

破竹の強さで前半戦を首位で折り返した阪神。例年であれば、勢いそのままに最後まで駆け抜けた可能性すら考えられる。佐藤輝明の運命も変わっていたのかもしれない。

■捨て身の巨人は下剋上を果たせるか

今年のプロ野球・クライマックスシリーズは、寒風吹きすさぶ11月にようやくファーストステージが開幕する。最終盤で悪夢の10連敗を喫し、満身創痍で10月の戦いを終えようとしている巨人に果たして勝機はあるのだろうか。

「レギュラーシーズンで優勝したチームは、ファイナルステージまでしばらく待たされる。その初戦は、ファーストステージを勝ち上がってきたチームのほうが圧倒的に有利です。勢いがあるので、捨て身で来られると本当に厳しい戦いになります」。

巨人のバッテリーコーチとして、日本シリーズ制覇までの長い道のりを戦い抜いた経験を持つ秦氏の言葉には、大きな実感がこもっている。

終盤にどん底だった巨人もここに来て、前半戦の功労者であるウィーラー丸佳浩に復調の兆しが見られるなど、一筋の光明が差し始めた。奇跡の巻き返しはありえるのか。残された時間をクライマックスシリーズのための「準備期間」と割り切り、虎視眈々と牙を研ぐことができれば、あるいは……。

21日の試合終了時点で、逆転優勝を狙う阪神が首位ヤクルトに0.5ゲーム差と肉薄している。直接対決は残されておらず、現状では阪神より2試合多いヤクルトが優勢と見る向きが多い。成長著しいヤクルトが覇権を握るのか、はたまた前半戦を席巻した阪神が土俵際で競り勝つのか。クライマックスシリーズで下剋上を狙う、巨人の動向も気になるところ。まずはレギュラーシーズンのゴールテープが切られるその瞬間まで、余すところなく各地の熱戦を見届けていこう。

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文・SPREAD編集部


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