【プロ野球】引き分けを挟む10連敗の巨人が、CSファーストステージで勝ち上がった要因は……

 

【プロ野球】引き分けを挟む10連敗の巨人が、CSファーストステージで勝ち上がった要因は……
(C)Getty Images

「今日負けたら、このままBクラスに転落する」。

これは9月15日、巨人DeNA戦でサヨナラ勝ちしたにもかかわらず、東京ドームのライトスタンドで幾人もの巨人ファンが交わしていた会話だ。4位の中日とは10ゲーム以上離れていたものの、熱狂的なファンたちがはっきりと「このままいけばBクラス」と口にしていた。それほどシーズン終盤のファンは呆れ返っていた。この日は9回裏にハイネマン、代打・八百板卓丸、松原聖弥、坂本勇人とヒットが続き、岡本和真の犠牲フライでかろうじて勝ったが、9回表までドームはお通夜かと思うほど静まり返っていた。

菅野智之、山口俊、戸郷翔征、髙橋優貴、メルセデスの先発陣を中4日ないし5日で回すローテーションは、選手という資産を焼き尽くす焼畑農業のような野球だった。5回と持たない先発陣をマウンドから降ろしては、中継ぎも惜しみなく投入した。消耗戦を強いられて負ける選手を観るファンの心もすり減った。巨人ファンの目に精気が蘇ったのは、皆から愛された亀井善行の引退セレモニーと、主砲・岡本和のホームランと打点のリーグ2冠に輝いたニュースだけだったろう。

ケガ人が続出し、外国人選手は軒並み帰国。将棋指しのように先手先手で手を打つも、今シーズンはことごとく裏目に出た原監督の手腕。クライマックスシリーズ ファーストステージの戦いを巨人ファン目線で見ていく。

◆巨人・菅野 勇気もらった小林の眼力「強気でいくぞ、と」主砲不在のチーム引っ張る

■矢野監督、今日も佐藤輝明はベンチ?

6日に甲子園球場で行われた、阪神とのクライマックスシリーズ ファーストステージ第1戦、先発は阪神・髙橋遥人と巨人・菅野だった。ジャイアンツはシーズンのハイライトだった9月25日の巨人-阪神戦で、髙橋遥にプロ初完封を許している。あの坂本勇が髙橋遥に対して、体勢を崩されて三振する姿も衝撃的だった。ジャイアンツ攻撃陣は左脇腹痛で主砲・岡本和を欠く中、苦手な髙橋遥を攻略するのが鍵。この日はパ・リーグ打線のように初球からブンブンと振っていった。

先発の菅野はシーズン中、打者を追い込んでからの球数が多かった。ネックは守備時間の長さ。将棋「竜王戦」の長考かと思うほどだ。楽天に移籍した炭谷がかつて調子の悪い菅野とバッテリーを組んだ時、縦の変化を使って球数を少なくしたように、キャッチャーの小林誠司にもカーブやスプリットを使ってほしい。そう思っていたら、この日の小林は見事その通りの配球となった。菅野は3回までにカーブ、フォーク、カットボール、スライダー、ストレートと、ほぼ全球種を使い気持ちよく投げていた。

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対する髙橋遥も譲らない。一段ギアを上げて臨んだ坂本勇の打席では、4回まで三振とダブルプレーに仕留めていた。どちらに勝機が転ぶかわからない投手戦だった。

試合が動いたのは5回表。丸が一塁へヘッドスライディングをして内野安打にすると、次のウィーラーが来日以来初となるバントを決めて、ランナーを2塁に進める。次の中島は甘く入った3球目のカットボールを、詰まりながらもライト前にタイムリーヒット。ジャイアンツは少ないチャンスをモノにした。さらに2点追加した6回表は、ツーアウトで坂本勇がレフト前ヒット、丸が四球で出塁すると、ウィーラーが138キロの低め変化球をフェンス直撃の2点タイムリーにした。

巨人はウィーラーにまでバントをさせ、是が非でも得点圏にランナーを進めていたが、阪神の攻撃陣は少ないチャンスの芽を摘んでしまった。5回裏ノーアウト1塁の糸原の打席では、ランナーのマルテが盗塁死してしまう。ベンチワークだと推測するが、2球目を大きく外した小林に見破られたのだ。球数とフライアウトが増えた菅野に対し、6回裏、ツーアウト2、3塁の近本光司の打席。菅野は、6球目のスライダーをインコース膝元に投げ込み、難を逃れた。

結果、この日全得点に絡むウィーラーが8回裏にタイムリーを放ち、ジャイアンツはさらに1点追加、4-0で第1戦をモノにした。

それにしても阪神は近本、マルテの他に、大山悠輔、佐藤輝明がスタメンだったならば、どんなに怖い打線だっただろう。球場の大歓声を味方につけられた上に、巨人バッテリーやファンに圧をかけられたからだ。結果、佐藤輝は8回裏に、大山は9回裏に代打で出場して甲子園は大いに湧いたが、時は遅かった。9回裏、乱調だったビエイラに対し、阪神打線は大山のヒットなどでツーアウト満塁まで追い込んだものの、あと一押しが足りなかった。