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【スポーツビジネスを読む】バスケ版「チャンピオンズリーグ」の仕掛け人 東アジアスーパーリーグ、マット・ベイヤーCEO 後編 「アジアの世紀」が世界の勢力図を変える

【スポーツビジネスを読む】バスケ版「チャンピオンズリーグ」の仕掛け人  東アジアスーパーリーグ、マット・ベイヤーCEO 後編  「アジアの世紀」が世界の勢力図を変える
「スーパー8」では千葉ジェッツが初代王者、富樫勇樹がMVPに (C)EASL

■「アジアの世紀」をバスケで実現する

「代表チームとしても日本のバスケのほうが組織的で強いかもしれないと思い始めています。実際、NBAのラスベガス・サマーリーグにおいて2019年には5人もの日本人がプレーしています。前年はゼロでした。日本におけるバスケットボールの隆盛には刮目すべきです。高校からの草の根運動や育成システムも十分に機能しているようですし、Bリーグのサラリーも悪くない。優秀な外国人プレーヤーも増えている。中国の代表チームに帰化選手はいません。逆に日本の代表チームでは帰化選手がうまく機能し、多様性が融合しているように見えます。富樫のように日本のガードプレーヤーは、サイズが小さくてもクイックネスに優れた選手もいます。中国人は、こうした違ったアプローチにも非常に注目しています」とバスケ・スタイルの違いにも言及した。

中国の代表チームは、バスケという競技の特性に焦点を当てるあまり、とにかく長身の選手を集める傾向にあるという。すると、どうしてもボールハンドリングに長けたガードプレーヤーが育たない。よって中国国内リーグのチーム編成では、外国人選手がガードを担当する局面が散見されるという。国内リーグのレベルについても、中国が上という見方があったものの、この5年で日本のレベルが上がり、同等のレベルにあると見られているそうだ。

この影響でベイヤーさん自身の会社は昨年から中国でBリーグのテレビ中継も担当している。レギュラーシーズンは週に1試合のみながら、プレーオフは全戦中継に迫る勢いだという。ベイヤーさんは、これをBリーグが国際的な存在感を示している現れだと指摘している。

最後にEASLの「最終ゴール」について訊ねた。

「私たちはアジアのプレミアバスケットボールリーグになりたいんです。ベストプレーヤー、ベストチームを招き、ベストなプレーをご覧に入れたい。そのためには、2025年までにオーディエンスサイズとして、まず世界のトップ3リーグになりたい。もちろん、収益という観点からも、そのレベルを目指しています。これからはスポンサー獲得も重要になってきます。しかし、私たちにとってより大きな目標は、とにかくバスケットボールの発展に寄与すること。アジアのバスケットボール隆盛は、次の世代に向け、どのように試合を見せるのか、どんな見せ方ならインパクトを残せるかが課題です。(アジア圏では)NBAや他のトップリーグへ行くエコシステムが出来上がりつつありますが、EASLはそのために次世代の選手たちの露出にも役立つショーケースになると信じています。アジアのバスケが世界のトップを担うような時代が来れば、世界におけるバスケのバランスを保つことができると思っています」。つまり、アメリカ、ヨーロッパに偏りがちな世界のバスケットボール勢力図において、アジアが台頭すれば、バスケットボールがより世界的なスポーツとして、隆盛を期待できるというのが、ベイヤーさんの基本哲学なのだ。

これによりFIBAランキングが低いアジア各国もよりTOP10に迫ることができるとベイヤーさんは主張するが、アジアに住む日本人としても、そのビジョンと大会実施について両手を挙げて賛同したい。

この日は香港とのリモートによるインタビューだったが、ベイヤーさんは「新型コロナ・ウイルスの狂騒時代にスタートしたプロジェクトですが、(これが収まれば)自由に行き来できる時代が戻ってくると思います。21世紀は『アジアの世紀』と言われて久しいですが、バスケットボールもまた、そんな時代を具現化する力を持っていると思います」と締めくくった。

来年10月の開幕、その歴史的瞬間をぜひこの目にしたいものだ。

◆【インタビュー前編】EASL実現までの道のり

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著者プロフィール

松永裕司●Stats Perform Vice President

NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ Microsoft毎日新聞の協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Directorなどを歴任。出版社、ラジオ、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験を持つ。1990年代をニューヨークで2000年代初頭をアトランタで過ごし帰国。Forbes Official Columnist