【競艇】大一番のグランプリ戦に挑む丸野一樹 ボートレーサー界の常識を破るトレーニングとは……

第36回グランプリで優勝を目指す丸野一樹 写真:本人提供

「ここから10年間は僕のキャリアの全盛期に入ると思います」。

真っすぐな瞳で力強く言い切ったのは、ボートレース界で注目を浴びる丸野一樹だ。7日までに開催されていたプレミアムG1 第3回ボートレースバトル チャンピオントーナメントでは鋭いまくり差しを決めて初制覇を成し遂げた。この流れを活かし丸野は、積み上げてきた確かな自信を胸に12月14日からボートレース住之江で開催される第36回グランプリへ向け闘志を燃やしている。

丸野は高校を卒業し、40倍の倍率と言われる難関の入試を突破し養成所に入学。厳しい訓練を乗り越え2011年に晴れて中学時代から憧れたボートレーサーの夢を叶える。そしてデビュー戦1着という見事な結果で競技人生の幕を切り、水上の戦士としてセンスの高さを見せつけた。

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■「ボートレーサーに特化したトレーニング」から見えてきたもの

レースを重ねるごとに勝利への駆け引きを肌で読み取り、4年半でA1級クラスに到達。直線で時速80キロを超えて走るボートを細身な身体で操り、軽々とモンキーターンを決めては水面に水しぶきを輝かせる。この鮮やかに見せる高速ターンこそ丸野が長年取り組んできた「ボートレーサーに特化したトレーニング」から生み出した努力の結晶と言えるだろう。

今も昔もボートレースの勝利の鍵はモーターやプロペラの調整が重要視されるのは変わりない。だが不安定な水上を最速で時速85キロで走行し、体感速度は時速120キロとも言われるなか全速でターンマークを180度回旋する姿には、フィジカルの強さは必要不可欠だ。しかしボートレーサーを指導できるトレーナーは極端に少なく、全レーサーがフィジカル面の強化に重きを置いている訳ではないと丸野は語る。

「ボートレーサーのトレーナーと呼べる方は少ないと思います。むしろゼロに近いかもしれない。ボートレーサーにトレーニングを頼まれたら『体幹をやらせればいいかな』くらいでなかなか知識と経験を持っている方がいません。それにボートレースはモーターボートを扱う競技なので、体のトレーニングをしたからと言って結果が良くなったと実感しにくいスポーツだと思うんですよ。モーターが8割、体が2割くらいの感覚で、体のトレーニングをしていない人もいますしね。でも僕は身体を鍛えることに活路があると思い、自身の体の能力開発を探求しています」。

取材に答える丸野一樹 写真:本人提供

丸野は養成所に入る前から通っていた八木スポーツジム八木賀史氏に「ボートレーサーに必要な身体の使い方やトレーニングを勉強してほしい」と嘆願し、共にボートレーサーの動きに直結するメニューを思案している。それに加え、身体の仕組みやトレーニング効果を自身がより深く理解するためレースの合間に勉強を続け、全米スポーツ医学アカデミー認定パーソナルトレーナー「NASM-CPT」の資格まで取得した。

「月の半分以上はレースなのでトレーニングができる時間も限られています。なので、とにかく強くなるために1回のトレーニングの質を上げかった。八木トレーナーのレベルに追いつかなくとも身体の使い方やトレーニング内容をより理解することでトレーニング効果を上げることができますからね。そして今、確実に成果が出てきているので面白いですよ」。

■高3の夏にボートレーサーを目指す

レースがない時は、毎日ジムに通い身体と向き合う時間を作っている。感覚統合トレーニングを続けたことで、これまで以上に脳内イメージと身体動作の結びつきが増したことを実感。この効果から思い通りに身体を動かしボートも操りやすくなったという。得意のターンの質を上げることに成功し、今季は先日のプレミアムG1で1勝を挙げた他にG1で2勝、一般戦2勝の5勝を挙げてきた。

またレースは天候により波の状態が左右され、走る時間帯によって水面の光の反射具合など視覚から得る情報も変化する。ナイターレースでは波の状態を読み取ることも至難の業だ。丸野は、その特性を経験から補うと同時に、判断力を高めるトレーニングを積むことでいかなる場面も瞬時のコース選びから勝負強さを発揮してきた。

「どれほどモーター整備などのメカニックが強くても、上に行くためには根本的にターンの技術の高さが大事になる。そこを追い求めてトレーニングを突き詰めています。他には目で見たものを一瞬で判断する空間認知能力、そしてボートの上で必要なバランス感覚と重心を把握する能力を高めることです。そのひとつのトレーニング方法としてパルクールを使っています。パルクールの上をピョンピョン飛びながら、着地する前に次の動きを想像しながら動き、実際に体を操作する。無意識に体が反応するように仕掛けています」。

王者への階段を駆け上るためフィジカルの強さを追及し続けている丸野だが、実はここに至るまでにトレーニングへの大きな変化を受け入れ歩みを進めてきた。それは競艇選手になるまでのストーリーが深く関わっている。


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