冬は、よりエンターテイメントの煌めきが眩しさを増す季節。秋が去り、街がクリスマス色のネオンで輝きはじめた12月9日、D.LEAGUE(Dリーグ)セカンドシーズンのラウンド3が今宵も有明の東京ガーデンシアターで開催された。今回もコロナ対策で、座席数やマスク着用・声援控えめ等の制限はあるものの、観客を入れての開催だ。
寒空の下、会場に向かい足を踏み入れると、既に人々の期待と熱気が作り出す高揚感がシアターのドーム全体に充満し、冷えた体と心までを温めてくれる。やはりライブでエンターテイメントに触れる喜びは、人間にとってかけがえのないものだという思いをことさら強く感じながら席に着く。
◆神田勘太朗が語る『D.LEAGUE』 世界初日本発プロダンスリーグ 「ダンスは世界を獲れる」
■“第1コーナー”に突入したDリーグセカンドシーズン
1シーズン12ラウンド中のラウンド3となれば、サーキットに例えれば第1コーナーに突入、エンジンに油がまわり、アクセルの具合を確認してフルスロットルに踏みこみ始めるタイミングとも言えるだろう。そんなことを連想させるほどに、オープニングを飾ったラウンド2の覇者、SEGA SAMMY LUXから始まり、11チームの全Dリーガーの演技は、身体のすみずみまでを鍛え切って生きる、プロ・ダンサーの凄みを充分に感じさせてくれるものとなっていた。
ダンスに限らず、競技者というものは、試合に向けて、よく最高の状態に“身体を仕上げていく”というが、12ラウンドが2週間隔で容赦なくやってくるDリーグでは、常時、自分という表現する器を完璧に仕上げ、それを維持しながら毎回新しいナンバーを憶えて踊り込み、舞台に立たなくてはならない。その究極の緊張状態を半年以上続ける訳だが、そんなプロとしての激務を続け、セカンドシーズンのラウンド3まで到達した彼らは、ますます舞台上で発するオーラを強くし、踊りに宿る凄みが増していて、それがひしひしと伝わってくるのだ。
演技はもちろんだが、そのようなDリーガー達の変化を見られるだけでも、この壮大なる営みは意義深く、今後さらに価値あるものとなっていくのだろう。
■世の中の憂いを突き飛ばしたレイザーズの踊り
さて、そんなプロフェッショナルの凄みを強く感じさせてくれたラウンド3の覇者は、ファーストシーズンでは惜しくも総合優勝を逃し2位となったが、まごうことなき実力派のFULLCAST RAISERZ。各メンバーのタレント性が光り、人気もトップのレイザーズだが、今回はいつもの男気香る革ジャンを脱ぎ捨て、全員がグレーのスーツ姿という、これまでのレイザーズを見慣れた目には新鮮な出で立ちでの登場だ。
テーマは「社会人」。“拳を振り上げる”荒らくれ者がイメージだった彼らだが、プレーンなスーツに身を包んだサラリーマンの日常を描写し、その細かな心理が表現された。とはいえ、おとなしめの衣装に身を包んでいても、そこはさすがのレイザーズ。電話のやり取りなど、一見、よくある仕事の一場面が彼らのダンスでデフォルメされ、ものすごいインパクトを持って胸に迫ってくる。そこに見える、社会人の日々の苦悩や闘い、そして、そんな世の中の憂いを突き飛ばしてくれるような踊り。レイザーズのこのナンバーに不思議に慰められ、勇気までを渡されたような気持になったのは筆者だけではないだろう。
その、新生レイザーズとでも言いたくなるような抑制と爆発のコンビネーションが素晴らしい演技は、みごとにジャッジポイント、オーディエンスポイント共に最高点を獲得し、完璧なる優勝を飾った。それは、このコロナ禍で鬱屈していたオーディエンスの心に元気を届けたという意味でも、時代に求められていたナンバーだったのかもしれない。
一方、2位となったavex ROYALBRATSは、ショーアップされた心浮き立つ愉しいナンバー。8脚の椅子や新聞などの小道具を活用しながらも、すべての音を無駄にしない音楽にぴったりと合わせたタイミングや、各メンバーの“顔芸”とでも呼びたくなるほど豊かな表情を含めた演技も素晴らしく、最後に全員が椅子と一緒に倒れた後に飛び出すギフトのような演出と共に、観る者を自然に笑顔にしてしまうようなショーマンシップに溢れた踊りとエンタメ性とのバランスの良さで高い評価を得た。本当に、何度でも見たくなるようなハッピーなナンバーだ。