【ボクシング】「井岡一翔vs.福永亮次」大みそか防衛戦展望 異色の大工ボクサーは絶対王者に迫れるか

井岡一翔(2019年12月31日・WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ時) (C)Getty Images

WBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔は31日、大田区総合体育館で4度目の防衛戦を行う。恒例の「大みそか決戦」、10回目となる節目の一戦だ。今回の対戦相手は、同級6位の福永亮次。決して世界レベルでの知名度は高くないチャレンジャーがどんな選手なのか、実力分析をしながら、見どころを考えたい。

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■挑戦者は異色の大工ボクサー

福永の戦績は15勝(14KO)4敗。大阪出身、35歳のサウスポーだ。年齢の割に試合数が少ないように感じるが、実はボクシングを始めたのが25歳と遅い。「近くにエディ・タウンゼント・ジムが移転してきたから」というのが、入門のきっかけだった。プロのキャリアは8年、本業は中学卒業以来、大工という異色の経歴を持つ。もし、35歳4カ月で初の王座か獲得となれば、史上最年長となる。

福永の出世試合は、2020年2月14日に行われた、フローイラン・サルダール(フィリピン)とのWBOアジアパシフィック・スーパーフライ級タイトルマッチ。木村翔のWBO世界フライ級に挑戦経験のあるチャンピオンを7回に連打でストップした。そして、その10カ月後には中川健太との打撃戦を制して日本タイトルとOPBF東洋太平洋の2つのタイトルを獲得、スーパーフライ級3冠王者となった。

■顔も戦いぶりも“リトル・パッキャオ”

福永のベストブローは、長いリーチを生かした思い切りのいい左ストレートと右フック。一発で相手を失神させるパンチではないが、連打で弱らせていく戦法だ。サルダール戦でも、コーナーに追い詰めてパンチを集中し、レフリーストップを呼び込んだ。顔が似ていることから、“リトル・パッキャオ”の異名を取るが、遠い距離から打ち込む左ストレートも本家譲りだ。

記者会見では、「すべて一流」とチャンピオンをリスペクトしながら、「最後は、ぼくの手が上がるイメージがある」と、自信をのぞかせた。世界タイトルマッチのオファーは、12月中旬に建設現場で受けたという。35歳で突然巡ってきた人生最大のチャンス。しかも、相手は世界戦18勝と日本記録を更新中のレジェンド。モチベーションは最高潮といえるだろう。

■井岡の心理状態が試合のポイントか

一方の井岡は、11月25日、IBF同級王者ジェルウイン・アンカハス(フィリピン)との統一戦発表の会見で、「率直にいって、すごくうれしいです。驚いた」と、喜びを隠さなかった。常々、ビッグファイト、統一戦を熱望する発言をしてきただけに、“夢が叶った”という一言が偽らざる気持ちだったはずだ。

ところが、わずか10日後に政府のコロナ水際対策のために試合の延期が決定。チャンピオンの落胆は想像に余りある。しかも、興業自体はキャンセルにならず、代役に福永を立てて防衛戦を行うことになった。正式発表は試合の2週間前だった。どうしても、チャンピオンの心理状態を心配したくなる。9月のフランシスコ・ロドリゲス・ジュニアとの指名試合も、明らかにモチベーション不足による凡戦だった。果たして、チャンプは気持ちを盛り上げることができるのか。

■チャレンジャーは腹を決めた打ち合いに活路を見出す

メンタル面を別にすれば、技術、パンチ力、スピード、経験、すべての面で井岡が勝っている。特に差があるのは、ディフェンス力。福永はガードが緩く、オーソドックスの右ストレートを不用意にもらう癖がある。これまでは強い体で耐えてきたが、一流の世界チャンピオン相手にそれは通用しない。順当にいけば、井岡の中盤までのKO防衛とみる。

波乱があるとすれば、チャレンジャーが思い切りよく攻撃に徹したとき。矢吹正道が、安定王者の寺地拳四朗をTKOした試合運びだ。失うものは何もない、と腹を決めて打ち合いを仕掛けるべきだろう。ボクシングをしたのではチャンスはない。

井岡に期待したいのは、福永を同じサウスポーの仮想アンカハスと考えて、来るべき統一戦に向けていい試合をすること。2022年こそ、ビッグマッチが実現する。みんなでそう信じつつ、大晦日のファイトを楽しみたい。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。


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