【テニス】全豪オープン・プレビュー 男子「新ビッグ3」の牙城を崩すのは誰だ 女子本命は地元の星バーティ

全豪オープン制覇を狙うアシュリー・バーティ(C)ロイター

2022年最初のグランドスラム、全豪オープンが17日からメルボルンパークで開催される。昨季から心機一転、選手たちは新たな輝きに向かい再び走り出す時が来た。

◆18歳での引退からカムバック バーティが叶えた夢のウィンブルドン制覇

■ジョコビッチの出場可否は不透明

男子の第1シードにはノバク・ジョコビッチ(セルビア)が組み込まれた。オーストラリア入国時に必要な証明を提示できず、入国ビザが取り消されるという岐路に立たされたが、10日には現地の裁判所が入国を認め、当初より5日遅れで会場へ到着。出場可否についてはいまだ不透明な状況(※)が続くが、高いモチベーションで大会4連覇と21個目のグランドスラムタイトルを狙ってくるのは間違いないだろう。

※オーストラリア政府のアレックス・ホーク移民相は14日、ジョコビッチのビザを再び取り消すと発表した(14日17時、編集部追記)。

テニス=ジョコビッチのビザ再び取り消し、豪移民相「健康と秩序のため」

ダニール・メドベージェフ(ロシア)、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)も含めた現在の「ビッグ3」が大会を賑わす有力選手であることは間違いないが、2021年のズべレフはジョコビッチに対して5戦2勝、メドベージェフも3戦1勝を挙げており、彼らが絶対王者の鉄壁を打ち破る予感も漂う。その他、ステファノス・チチパス(ギリシャ)やアンドレイ・ルブレフ(ロシア)がどこまで「新ビッグ3」に食い込んでいけるのかも見ものだ。

前哨戦のメルボルン・サマー・セット(ATP250)ではスペインのスーパースター、ラファエル・ナダルが5カ月ぶりにタイトルを獲得し、全豪に向けエンジンを温めている。怪我に泣かされることが多いナダルだが「その日のベストを尽くす」という作業を長年遂行してきた彼を見ていると、本調子ではなくとも「何か起こるのではないか」と思わせてくれる。21個目のグランドスラムタイトルも大いに期待できそうだ。

また、アデレード国際1(ATP250)ではガエル・モンフィス(フランス)が2年ぶりにツアー優勝を果たし、歓喜と安堵の表情を見せた。モンフィスと言えば身体能力の高さを存分に生かしたスーパーショットに光が当てられるが、実は返球率の高さなどディフェンスの強さもピカイチ。フィジカルを生かし終始、相手を嫌にさせるほど返球し、攻めどころを逃さない堅実なテニスで勝利をもぎ取った。これこそ彼本来のテニスと言えるだろう。今大会でアップセットを見せてくれるか、要注目だ。

日本からは西岡良仁が登場、素早いフットワークから上位進出となるか期待したい。錦織圭は怪我のため欠場する。

■好調の土居美咲は飛躍のカギをつかめるか

好調をキープし全豪に臨む土居美咲(C)ロイター

女子の目玉は、やはり地元開催で初優勝を目指すアシュリー・バーティだ。シングルスでは2020年大会の準決勝進出が最高戦績となるが、昨季は全英で念願の初優勝を果たし自信を深めてきた。一度リタイアしてからのツアー返り咲きなだけに、精神的な充実度は想像以上だろう。ホームであるオージーの応援を背に、彼女がサービス後にフォアハンドで多くプレーする展開となれば、誰であろうとバーティのテニスを止めることは難しいはずだ。優れたポイント構築能力と、いかなる場面でもスライスでの応戦を持っている彼女を打ち崩す選手は現れるのか。

昨季終盤に好成績を残したパウラ・バドーサ(スペイン)やアネット・コンタベイト(エストニア)、全米を制したエマ・ラドゥカヌ(英国)などが上位に食い込んでくる可能性は高い。またWTAファイナルズを勝ち取ったガルビネ・ムグルサ(スペイン)も、2017年全英以来の四大大会制覇を粛々と狙っている。

そして、前年覇者として登場する大坂なおみは、今大会に焦点を合わせ全米以来4カ月ぶりに復帰。前哨戦のメルボルン・サマー・セット1(WTA250)準々決勝は怪我のため棄権したが、プレーの内容は試合を重ねるごとに上がっているように見えた。今回は「全豪制覇」というよりも、一戦一戦のゲーム内容や闘争心のコントロールなどに重きを置いてくると想像している。なお、メルボルン・サマー・セット1では、昨季怪我で離脱していた元世界ナンバーワンのシモナ・ハレプ(ルーマニア)が持ち味のカウンターを武器に優勝を果たし、復活のきっかけを得た。

日本勢では土居美咲が好調だ。前哨戦のアデレード国際1(WTA500)では、バーティ、全仏覇者イガ・シフィオンテク(ポーランド)、東京五輪4位のエレーナ・リバキナ(カザフスタン)とともにベスト4に進出。準決勝ではリバキナに敗れたが、フィジカル面では刻みよいステップでボールへコンタクトし、武器であるフォアハンドからの展開は威力と安定感に磨きがかかっている。昨夏の東京五輪前には浮上のきっかけに「爆発力あるプレーを」と語った土居だが、先手を掴むプレーでボールをコートに押し込んでいく様には、言葉通りの勢いと共に厳しいツアー生活を楽しんでいる様子が伺える。昨季終盤にはムクリスタスヘルス・プロチャレンジ(ITF8万ドル大会)で優勝し、今季もスタートダッシュに成功。現在のランキング105位から全豪でのチャンスを掴み、大きなジャンプアップを期待したい。

現在進行中の予選では本玉真唯とダニエル太郎が予選決勝に進出。同じく予選決勝に進んでいた日比野菜緒は本戦出場を惜しくも逃した。(※14日、日本時間12時時点)

◆18歳での引退からカムバック バーティが叶えた夢のウィンブルドン制覇

◆全米オープン・ティーンエイジャー対決に見た新時代の予感

◆日本人が知らない人種差別と戦う大坂なおみの偉業

著者プロフィール

久見香奈恵●元プロ・テニス・プレーヤー、日本テニス協会 広報委員
1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動をはじめ後世への強化指導合宿で活躍中。国内でのプロツアーの大会運営にも力を注ぐ。


この記事が気に入ったらフォローしよう

最新情報をお届けします