【北京五輪】歴史的な残像を焼きつけたクワッドアクセルと羽生結弦の闘い

羽生結弦(C)Getty Images

なんとも言い難い複雑な心持ちである。

少し悲しく、残念な気持ちはあるものの、一方でどこか清々しく誇らしい気分も感じている。

此度の北京オリンピックで、おそらく最も日本中の人々が注目したであろう種目のフィギュア男子。金メダルはアメリカのネイサン・チェン、日本勢は鍵山優真が銀メダル、宇野昌磨が銅メダルという結果となった。

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■前人未到の4回転アクセル

そして、もしも達成すればオリンピック史上二人目、94年ぶりの3連覇ということで、世界中の注目を集めた羽生結弦は、ショートプログラム冒頭の4回転サルコーが不発となり、まさかの8位スタート。フリーで巻き返しを図るも、こちらは成功すれば史上初となる全人未踏の4回転アクセルの着氷時、およびその後の4回転でも転倒し、追い上げ及ばず、結果4位となった。

しかし、羽生がこだわり続けてきた前人未到の4回転アクセルは、“着地後”の転倒で減点はあったものの、ジャンプそのものは国際スケート連盟の公認大会で初めて正式に4回転アクセルとして認定された。

羽生は競技後のインタビューで、「全部出し切ったというのが正直な気持ちです。明らかに前の大会よりいいアクセル跳んでましたし(中略)あれが僕のすべてかなって。」と呟やいた後、「もちろんミスをしないというのは大切ですし、そうしないと勝てないというのは分かるんですけど、でもある意味、あの前半2つのミスがあってこその『天と地と』という物語ができあがっていたのかなと思います。」と語った。

最初、その言葉を聞いた時、私はある程度直感的にその意味を理解したのだが、しばらくは羽生の3連覇という快挙を見たかったという残念な気持ちをぬぐい切れずにいた。だが、闘いから一夜明け、時間が経つにつれ、“確実な得点”よりも、これまでのすべてを掛けて4回転アクセルに挑んだ上で勝とうとした、真の挑戦者であり表現者としての羽生結弦のプライドと想いが、彼の鋭くも優雅で美しい演技の残像と共に、胸の奥にまでつき刺さっていくのを感じていた。

もしかしたらあの演技は、羽生の言う通りジャンプのミスも含めて、『天と地と』という文字通りの壮大なストーリーを彼が天から遣わされ、現世に表したものだったのかもしれない。という、“不思議な納得感”が、自分の腑に落ちてきたのだ。


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