アシックスが、10月22日に「ヴィッセル神戸」所属のアンドレス・イニエスタ選手と、アドバイザリースタッフ契約することを都内で発表した。
契約によりイニエスタ選手はスパイクシューズをはじめとするアシックススポーツ用品の使用、商品に対する開発面でのアドバイスなどを行う。
アシックスCEOの尾山基氏はイニエスタ選手の「ピッチ内外の振る舞い」などに着目し「素晴らしいアスリートでもあるイニエスタ選手と契約できたことはとても嬉しい」と述べていたが、確かに記者発表会でのイニエスタ選手から発せられる言葉の節々からは、本人の人柄の良さをうかがうことができた。
「責任」という言葉の重み
いくつか理由はあるが、まず、様々な角度の質問に、新たに契約した「アシックス」への賛辞を欠かさなかったことが挙げられる。
会見を通してイニエスタ選手に11問の質問が投げかけられたが、そのうち8問に対してなんらかの形でアシックスの製品や、哲学について言及していた。
これは、イニエスタ選手がブランドとの契約に真剣な思いを抱いていることの表れだろう。同選手はこれまでナイキのブランドを着用しており、来日後も同ブランドを継続して履いてきていた。
イニエスタ選手にとって、そのブランドのシューズを着用するということは、そのブランドを支える一員として大きな役割を担うということだ。
その意識は、「いままで使っていたナイキからアシックスへの変化による『責任』も感じている」という発言からも受け取れた。
自分の意思だけではないところで今回のアシックスとの契約が進んだ部分もあるのかもしれないが、少なくともイニエスタ選手がナイキからアシックスにスポンサーを変えたタイミングでは、本人の中でもそれなりの決断があったはずだ。
それゆえの「責任」という言葉だろう。重みがあった。
だからこそ、シューズへのフィードバックには本人曰く「アシックスの皆さんにはしつこいと思われるくらい」真剣に取り組んでいるし、「アシックスというブランドをより大きくしていけるように頑張っていきたい」という発言が飛び出してくるのだ。
こうした発言からは、イニエスタ選手が受動的ではなく、能動的な様子でそのブランドに関わっていることを感じることができる。
関係者への配慮
また、一つ一つの発言に、様々な関係者への配慮が感じられた。
「日本に来てからの選手生活の中で、印象に残ってるプレー」について聞かれたときも、そのシーンに言及する前に、まず「メディアや、ファンの方々」への感謝の言葉を述べていた。
様々な場所でファンへの感謝の言葉を述べる選手は大勢いるが、こういった場所で「メディア」への感謝を表現する選手は、そう多くないのではないだろうか。
そして、アシックスとの契約について言及する場面でも、ヴィッセル神戸の代表取締役会長を務める三木谷浩史氏への感謝を忘れなかった。
「いま、多大な努力をされている三木谷さんに感謝の気持ちを述べるとともに、日本での挑戦というのは、ヴィッセル神戸をトップチームに育てるということ。それに向けてアシックスのメンバーになったことは大きなモチベーションになります」
謙虚な人柄で知られるイニエスタ選手だが、その片鱗はこうした記者発表会の場所でも十分に感じることができた。
《大日方航》
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