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【WTA】東京五輪金メダリストをゲーム・マネジメントで上回ってみせた大坂なおみ、決勝進出は復活の序章となるのか

【WTA】東京五輪金メダリストをゲーム・マネジメントで上回ってみせた大坂なおみ、決勝進出は復活の序章となるのか
マイアミ・オープン決勝進出を決めた大坂なおみ(C)Getty Images

■苦手ベンチッチをIQテニスで攻略

大坂は、その困惑を見逃すことなく要所でビッグサーブを発揮しプレッシャーをかけ続ける。リターンゲームでは相手の足元となるセンターマークぎりぎりの深さにボールを差し込み、ベンチッチの打ち損じを確実に仕留めては無駄なリスクを背負わずにゲームを進めた。

勝負の要となった第3セット、2-2で迎えた2度目のデュースで大坂はここぞとばかりに勝負に出る。ベンチッチがスライスでワイドに滑らせたサーブを今までのセンターへのリターンが伏線だったかのように、思いっきりクロスにひっぱたきエースを抜いた。これにはベンチッチもボールを見送るだけ、大胆に隙を突かれたようだった。そして握ったブレークポイントでは、予想していたかのようにワイドに来たサーブを見事にバックで鋭角のクロスへ合わせきり、力なく返ってきたボールをオープンコートへと沈めて勝機の流れを掴み取った。

このリスクと駆け引きを天秤にかけたようなゲーム・マネージメントには、大坂が女王への復活ロードを歩み進んでいることを実感する。

試合後に「今日はスイッチが入ったとは思ってなかった」と振り返る大坂だったが、端から見れば3敗を喫していたベンチッチを相手に完全なIQテニスで攻略したようにさえ思えた。

また勝利後には涙を浮かべながらベンチに座る彼女を見ていると、これまでに辿ってきた様々な想いをこの試合と同時に乗り越え、喜びを噛み締めているようでもあった。

「再びナンバーワンになりたいと思わないと言ったら嘘になるけど、そのためのプロセスだとわかっている」と語る大坂を決勝で待ち受けるのは、新女王のイガ・シフィオンテク(ポーランド)だ。ベンチッチと違い、テンポの速さの中にもスピンボールで空間を操ってくるシフィオンテクに対し、大坂はどんなテニスを見せてくれるだろうか。

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著者プロフィール

久見香奈恵●元プロ・テニス・プレーヤー、日本テニス協会 広報委員

1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動に尽力。22年よりアメリカ在住、国外から世界のテニス動向を届ける。