第97回天皇杯全日本バスケットボール選手権大会を制し、連覇を達成した川崎ブレイブサンダースは、チームの実力のみならず、スポーツ界随一のデジタル戦略を立て、各フォロワー数も他のスポーツクラブを圧倒している。
昨年6月に開催された「B.LEAGUE AWARD SHOW 2020-21」では、川崎が2年連続でソーシャルメディア最優秀クラブに選出された。Twitter、Instagram、Facebook 、YouTubeのフォロワー増加数の合計で決定されたもの。さらに勢いは止まらず今年2月19日にはYouTubeチャンネルの登録者数が10万人を突破した。これはBリーグ、Jリーグを通して初めての快挙。さらにTikTokの登録者数も2月26日に10万人を突破した。日本における全スポーツチームの中でもプロ野球の読売ジャイアンツに次ぐ2位となった。
◆東高西低の勢力図が激変 島根スサノオマジック安藤誓哉が目指すファイナルとその頂点
■「チームや選手が知られている前提のコミュニケーションはしない」
そんな日本スポーツ界のトップを走る川崎でSNSなど戦略・マーケティング領域を統括するのは、藤掛直人事業戦略マーケティング部長。藤掛さんは、DeNAに新卒で入社しゲーム開発に携わりスマホゲームのプロデュースを行ってきた。その後、社外を含め新たな取り組みを模索し、「バスケットボールをやりたい」と志願。2018年、DeNAが東芝から事業承継を行い、新規参入した際の功労者の一人である。現在は、株式会社DeNA川崎ブレイブサンダースに出向という形で手腕を発揮している。YouTubeの企画を考える際には「チームや選手が知られている前提のコミュニケーションはしない」と決め、企画のタイトルには「選手名を入れるのではなく、BリーグMVPやBリーグで一番シュートが上手いなどという表現を用いる」ように工夫した。こうした試みがバスケットボールファン以外の方にも視聴してもらえている秘訣である。

自身もバスケットボール・プレーヤーだった藤掛さん 撮影:SPREAD編集部
そして、藤掛さんが新たに川崎の取り組みとして導入したのが「PICKFIVE」だ。これは試合をより楽しむことができるオンラインゲームである。2月より正式導入され、今後登録者数、利用者はSNS同様増えていくだろう。このゲームが生まれた経緯や楽しみ方、さらに今後の可能性に至るまで藤掛さんに話を聞いた。
SNSやオンラインサロンなどの取り組みを続けていく中で、「お客様が試合観戦中に楽しむデジタルな戦略が欠けている」点に気付いた。試合によっては大きく点差が開いてしまう展開もある。そんな時、自身も「勝っていても負けていてもファン目線で見ていると集中力が途切れてしまう」ケースもある点に気づいた。わざわざ時間を割いて、観戦に来てくれたファンの方々に対し「もっと楽しんでもらえる方法はないか」と生まれたのがこの「PICKFIVE」だった。