【スーパーフォーミュラ】第3戦は松下信治が初優勝 負けてなお貫禄のチャンピオン野尻智紀

トップ快走の野尻智紀(先頭)に迫る松下信治(後方)(C)JRP

週末がスタートしてから、チェッカーの数周前まで主役は完全に野尻だった。

3週連続でトップカテゴリーのレースが開催された4月、トリを飾ったのが鈴鹿サーキットで23日、24日に開催されたスーパーフォーミュラ第3戦の展開だ。

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■今季2勝目に向けて完璧だった野尻だが…

予選ではその野尻智紀(チーム無限)が鈴鹿でSF初のポール獲得。

その圧倒的な速さは、レース巧者のディフェンディング・チャンピオンにとって第2戦からの2連勝の可能性をかなり高めるものだった。ひとつ気になったのが、決勝が雨の予想。これまでスーパーフォーミュラでは、何度も雨がらみの大逆転レースを見てきた。雨が得意な印象があるのが松下信治(ビーマックス)、ジュリアーノ・アレジ(トムス)、ルーキーの三宅淳詞(チームゴウ)もスーパーフォーミュラ・ライツでは雨に強かった。しかし予選は松下が9位、アレジが17位、三宅が21位。誰かが野尻を脅かすとは思えなかった。

そもそも開幕からの2戦ではチャンピオンの強さが際立ち、引き続き野尻を中心とした見ごたえのある戦いが繰り広げられることに期待した。実際、素晴らしいレースに違いはなかった。ただし結果は、予想を大きく裏切った。

予想通り日曜日は朝から雨になり、雨量は変わらないまま決勝のスタートを迎えた。

雨天スタートはほぼ視界ゼロ状態(C)JRP

先に伝えていくと、このレース、荒れるかと思いきやアクシデントらしきものは何もなし。つまり野尻は、スタートに成功しホールショットを奪った時点で限りなく有利だったのだ。大きな水しぶきを各マシンが上げ走っている中、野尻だけは視界がクリーンなまま走り続けることができる。ウェットレースではピットインもない。野尻は5周で2位に10秒のギャップを築き、今季2勝目に向けここまで完璧だった。

2位は最初2番グリッドスタートの山下健太(コンドーレーシング)だったがペースが悪く、7周目に牧野任祐(ダンディライアン)に代わった。その牧野はペースで野尻をも上回り、ジワジワ近づいていく。その場面、タイヤをセーブするために野尻はペースをコントロールしていると思っていた。そしてレースはそのまま終盤に入り、ペースを緩めない牧野は残り7周のところで約3秒差、残り4周のところで約1.5秒差となおも迫ってくる。野尻はレース序盤にタイヤにグレイニングが出て、実はタイヤが厳しかった。2連勝のためには、牧野の攻撃を4周の間凌ぎ続けなければならなくなった。

■厳しい状況で光った牧野と松下の見事な走り

ところが最後は意外な展開に。ここでその牧野をさらにペースで上回ってきたのが、9位スタートから1周目に5位までジャンプアップし、7周目に4位、9周目に3位まで浮上していた松下。その残り4周のところで、牧野を一気にオーバーテイク。追手は急遽、松下に代わった。

そして松下はその周のシケインで野尻にも仕掛け、ここでは抜けなかったが、接近したままストレートを通過し30周目の1コーナーでオーバーテイクし前へ。なんと、そのままスーパーフォーミュラ初の勝利を飾った。

濡れた路面と摩耗したタイヤ、その厳しい状況をものともしない牧野と松下の終盤の走りは、実に見事だった。今シーズンの主役は野尻や平川亮(インパル)だけではない。21人の参戦ドライバー、すべてにその可能性があると痛感させられた。5月にオートポリスで開催される第4戦でも、新たなヒーローが生まれるのだろうか――。

記者会見場でそんなことを考えていると、野尻がある記者の「オーバーテイク・システムを残していたのに、松下との最後のバトルでなぜ使わなかったのか」という質問にこう答えた。「松下選手のペースを考えると、使っても使わなくても同じ。濡れた路面でタイヤが厳しいときに使えば、ブレーキングをミスして松下選手に接触してしまう可能性がある」。そんな王者らしいふるまいを知ると、やはり第4戦で強いのは野尻だと思わざるを得ない。

次戦、チャンプの貫禄を見せつけるのか、果たして。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター
2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。


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