2018年の日本シリーズは、ソフトバンクホークスの甲斐拓也選手が、最後まで広島カープの機動力を封じ続けた年として野球ファンに記憶されるだろう。
11月3日にマツダスタジアムで行われた第6戦でも甲斐選手は、広島が企図した2度の盗塁を刺した。甲斐選手はシリーズを通じて6度の盗塁阻止に成功。
ソフトバンクはチームメイトの高谷裕亮選手も広島の盗塁を完璧に封じている。
広島が今シリーズで喫した8度の盗塁失敗は、これまでの記録を塗り替え日本シリーズ最多になった。
日本一チームから選出されるMVPには甲斐選手が選ばれ、ファンからも納得の声が出ている。
MVP 甲斐拓也選手!
カイキャノンっ!#sbhawks pic.twitter.com/ivxji8WKOU— ハリーホーク (@hawksHarry) 2018年11月3日
#日本シリーズ MVPは、甲斐拓也!育成出身で、しかも捕手とは珍しい・・・というより、なんて夢があるシンデレラストーリーなんだ!これは、3ケタ背番号で頑張っている選手にも励みになるね。
— ポンコッツ (@eishin_flash12) 2018年11月3日
甲斐キャノン凄かった、MVPは納得 #日本シリーズ
— 白黒 (@sirokuro1988) 2018年11月3日
MVP甲斐拓也は予想通りだけど、守備での貢献がメインで選ばれるのは珍しいね。
育成選手からここまで這い上がっての活躍は素晴らしい。#日本シリーズ— マスポケ (@ymasupoke) 2018年11月3日
すっかり“甲斐キャノン”の呼び名が定着し、その強肩ぶりが12球団のファンに広まった背景には、広島がレギュラーシーズンで95個の盗塁を記録し、2位以下を大きく引き離してセ・リーグトップのチームだったことが要因に挙げられる。
強肩捕手VS機動力野球の対決がファンの胸を躍らせたわけだが、その盗塁数95個の中身について少しひもといてみたい。
盗塁数は多いが成功率は高くなかった広島
広島の盗塁数95個がセ・リーグでは断トツであることに疑いの余地はない。2位の阪神タイガースが77個だから20個近い差をつけている。問題は企図数に対する失敗数、つまり成功率だ。
ここから先の数値は日本野球機構(NPB)の公式サイトに載っている、2018年シーズン公式戦成績を基にしている。
今季のレギュラーシーズンで広島が成功した盗塁数は95。それに対して失敗数は49個ある。これをパーセンテージで表すと広島の盗塁成功率は66%となる。
この数字だけを単独で見ても判断がつかないので、盗塁数2位だった阪神の成功率を出してみる。
今季の阪神は盗塁企図が98回あり、うち77回成功で成功率は78.5%になる。成功率で並べ替えると実は阪神がセ・リーグで最も高い。
阪神の場合は主に糸井嘉男選手(25回中22回成功)と、植田海選手(21回中19回成功)が押し上げている。
こうした計算をセ・リーグ全球団分行った結果が次の表だ。
盗塁企図 | 盗塁成功 | 盗塁刺 | 成功率 | |
広島 | 144 | 95 | 49 | 66.0% |
阪神 | 98 | 77 | 21 | 78.5% |
DeNA | 108 | 71 | 37 | 65.7% |
ヤクルト | 97 | 68 | 29 | 70.1% |
巨人 | 83 | 61 | 22 | 73.5% |
中日 | 99 | 61 | 38 | 61.6% |
セ・リーグ合計 | 629 | 433 | 196 | 68.8% |
広島は成功数で見るとリーグトップだが成功率では4位。リーグ全体の平均も下回る結果になった。
失敗を恐れずガンガン仕掛ける広島
広島は田中広輔選手がチームトップ32個の盗塁を成功させ、33個で盗塁王を獲得した山田哲人選手(ヤクルトスワローズ)に肉薄したが、37回中33回成功させた山田選手に対して、田中選手は45回中32回の成功。
成功率では89.2%の山田選手と71.1%の田中選手の間で大きな開きがあった。
盗塁ランキング上位に入った広島の選手では、野間峻祥選手が17個成功させているが失敗も10個あり、成功率では63%にとどまる。
それでも広島の強みを挙げるとしたら、特定の走り屋に依存するのではなく、先発メンバーの多くが走れることにある。
レギュラーシーズンでは田中選手、野間選手に加えて菊池涼介選手、丸佳浩選手も10個以上の盗塁を決めている。成功率では安部友裕選手が8回走って7回成功の高確率だ。
しかし、菊地選手と丸選手は日本シリーズで打撃不振に陥り出塁できず、安部選手は走ったが失敗に終わった。
最後まで広島に付け入る隙を与えなかった甲斐拓也
確実性に欠ける広島の盗塁に対して、ソフトバンク捕手陣は甲斐選手が盗塁阻止率44.7%、高谷選手も38.5%あり、12球団トップと2位のスローイング能力を誇る。
それでも2回に1回は走られている計算になるので、3回に2回は成功している広島の盗塁が甲斐選手の2回に1回を引き当てる可能性もあるにはあったが、そのような博打を続けているうちに日本シリーズが終わってしまった。
失敗を恐れずドンドン走って相手にプレッシャーを与えるチームと、12球団の捕手で最も失敗しない選手の対戦は、走る側に相性が良くない巡り合わせだったと言えるかもしれない。
日本シリーズの大一番でも最後までブレることなく、正確で強い送球を続けた甲斐選手はMVPにふさわしい活躍だった。
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