【全仏オープン】柴原瑛菜、25年ぶりの快挙 夢のグランドスラム初制覇

優勝したウェスリー・コールホフ(左)と柴原瑛菜(C)Getty Images

グランドスラムでタイトルを獲るなんて夢のようです」。

あどけなくも映る柔らかな表情が光り輝く。日本の柴原瑛菜がローランギャロスで高々と掲げるのは、ミックスダブルスでの初の栄冠だ。

マッチポイントを自らのサービスエースで締めくくると両手を突き上げ、パートナーのウェスリー・コールホフ(オランダ)と抱き合った。同種目の優勝は99年の全米オープンでの杉山愛/マヘシュ・ブパシ(インド)組以来13年ぶり、全仏では97年の平木理化/ブパシ組に続く25年ぶりの歴史的快挙だ。

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■10段飛ばしのシンデレラガールではない

カリフォルニア育ちの24歳は、どんな相手のショットにも臆することはなかった。

ネットでプレーシャーをかけてはオーバーヘッドを逃さない。サービスは180キロのスピードに加え高く弾むキックサーブを併せ持ち、ミックスダブルスの鍵とも言える女子のサービスゲームを簡単に渡すことはなかった。

時には、自身のスピードを上回る男子のサービスを打ち破り、ストレート・アタックでエースを奪っては相手の自信を削ぎ落す。今大会の彼女のパフォーマンスには、対戦してきた選手たちも弱点を見つけるのが難しかったことだろう。

そしてパートナーのコールホフは2020年のATPファイナルズ・チャンピオンであり、今季4勝を挙げているダブルス巧者。柴原のプレーに合いの手を入れ、豪快にポイントを重ねていく。

初ペアとは思えないほど息の合ったプレーには、互いの高いキャリアから培われた戦術の豊富さとテクニック、そしてポジション取りの的確さが何よりも試合運びを安定させた。

決勝でのゲームカウント3-1、40-15の場面で見せたスーパープレーには多くの歓声が沸いた。ヨラン・フリーゲンのスマッシュを柴原が好セーブしたかと思えば、続くウリケ・アイケリのドライブボレーでのアタックをコールホフがカウンターショットのようなボレーで反撃。これにはアイケリも驚きを隠せなかった。

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柴原は今日の瞬間を味わうまでに着実に歩みを進めてきた。決して10段飛ばしのシンデレラガールという訳でなく、1段ずつ正確にこの優勝カップに向かう成長だった。

■ウィンブルドンでのロングランに期待

私が柴原に出会ったのは7年前のこと。まだジュニアの彼女と国内のITFツアーで顔を合わした。その頃から柴原が打つボールは重く、現在の高度なサービスの片鱗を見る試合となった。サーフェスはボールが跳ねづらいオムニコートにも関わらず、キックサーブやストロークでのスピンボールは、打点が押し込まれるような感触が強かったことを思い出す。

翌年の2016年に柴原は全米オープン・ジュニアのダブルスで優勝を果たし、カリフォルニア大学ロサンゼル校に入学。2018年にはITFツアーで5勝を残し、その先にWTAツアーで活躍するきっかけとなった青山修子と出会った。

その頃、青山に柴原のことを聞くと「とても素直で向上心が高い。まだ若いのであまり気負いさせたくないけど、良いダブルスになると思います」と評した。その言葉通り日本人ペアとしてツアー8勝を飾り、念願の東京オリンピックに出場。昨年末にはWTAファイナルズで準決勝まで進み、今年のビリー・ジーン・キング杯のアジア・オセアニア予選では日本代表としてチームの優勝を支えた。

グランドスラムでは青山と組んだ全豪とウィンブルドンでのファイナル4が最高成績だったが、今大会のミックスで初の決勝進出。着実かつ夢に描いたことを叶えていく強さが光っている。

コールホフは「一緒にプレー出来て楽しかったし、これからももっとプレーしたいね」と今後もペア結成を予感させるコメント。ウィンブルドンでも2人のロングランは見られるのか。今から待ち遠しいかぎりだ。

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著者プロフィール

久見香奈恵●元プロ・テニス・プレーヤー、日本テニス協会 広報委員

1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動に尽力。22年よりアメリカ在住、国外から世界のテニス動向を届ける。


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