【Bリーグ】宇都宮ブレックス、5季ぶり王者 その強さの秘密 前編

チャンピオンシップMVPを獲得した宇都宮ブレックス・比江島慎(C)Getty Images

宇都宮ブレックスはB1リーグ2021―22シーズンのチャンピオンに輝いた。Bリーグ初年度の2016-17シーズン以来、5シーズンぶりに王座奪還を達成した。ワイルドカード上位からチャンピオンシップでは、千葉ジェッツ、川崎ブレイブサンダース、琉球ゴールデンキングスという並み居る強豪に対し無敗で頂点まで駆け上がった。

宇都宮ブレックスはなぜ強いのか。

チャンピオンシップでなぜ結果を残せるのか、強さの秘密を探るため、かつてリンク栃木ブレックスでもプレーし、現在はチーム・アンバサダーも務める白鴎大学男子バスケットボール部・網野友雄監督に話を聞いた。

◆【Bリーグ】宇都宮ブレックス、5季ぶり王者 その強さの秘密 後編

■「BREX NATION」が確立した繋がりと絆

白鴎大学男子バスケットボール部・網野友雄監督(写真提供:白鴎大学)

よく選手やコーチはじめスタッフ、クラブ関係者、ファンまでもが口にする「BREX NATION」という言葉。そもそも「BREX NATION」とは何なのだろうか。端的に言うと「ブレックスに関わるすべての人」だ。スタッフ、選手、ファン、行政、スポンサー、ブレックスを通じて繋がっている全ての人、集団。つまりは組織力の高さとも言えるのだろう。

クラブの創設は2007年。「BREX NATIONという言葉を使うようになったのはBリーグが始まってから」だそうだが、それまでのJBL、NBL時代から築き上げてきた上で確立された繋がりと絆だった。クラブとして、チーム一丸で育むのではなく、地域全体で作り上げてきたものだ。

網野監督は「自分が現役時代ですら、勝った翌日には『これあげるよ』と街中で声をかけられジュースをもらったこともある」という。市民の生活に見事溶け込むことに成功した。その後もファンは増え続けているが、クラブからファンへ、そしてファンからファンへも「BREX NATION」は継承される。

ファイナルではアリーナ会場でも黄色のブレックスTシャツを着たファンの姿が多く見られたが、会場で着替えるわけではなく、自宅から着用したまま足を運んでいた。対戦した琉球のファンも同様だった。そんなファンの様子を「地域をどれだけ好きか……という気持ちの現れ。『地域密着、街クラブ』ですね」と同監督は表現する。「大きなスポンサーが一社というわけではなく大小様々な企業が関わっているため、人からの目が多い。環境面などは他チームの方が優れていることもあるが、それでもブレックスの選手たちは在籍するうちにこのチーム、この地域のためにという思いが強くなっていく」そうだ。

■エースとしての自覚が爆発した比江島慎

それだけ熱狂的に応援するファン、地域の注目を日々浴び続けることで選手にはプラスの変化が生じ、やりがいが生まれる。

話題は宇都宮のチーム作りにまで及んだ。「日本人が活躍するチームを目指している。バスケットボールは5人で行うので1人の力や技量が大きく影響するからこそ、外国籍の選手に頼るのではなく日本人が活躍することが必要」と説く。今シーズン、「ライアン・ロシターとジェフ・ギブスという主軸選手が移籍しチームを去った。新しくチェイス・フィーラーとアイザック・フォトゥが入り大変だったと思う」とその難易度についても振り返った。

宇都宮は帰化枠の選手を要さず優勝を果たしたことも、もちろん価値があった。彼らが抜けたからこそ「比江島慎のエースとしての自覚が爆発したシーズン」だった。シーズンを通し、段々と意識が強くなり周りの選手も引っ張られていく。エースとして比江島は、今回チャンピオンシップの最優秀選手賞(MVP)を獲得した。

今シーズンの比江島を「明確に自分が点を取るとメンタルや表情にも出ていた。俺がやるんだという感じ」と評した。それまでは「すごく上手くセンスがあるけれど一歩引く日もあった。自分に火を付けきれずにいた」と突き抜けきれなかった。昨シーズンのファイナルでは第3戦までもつれ宇都宮は千葉に敗れている。その試合、比江島はファウルアウトし悔し涙を飲んだ。「その悔しさが糧となり、さらにチーム編成の変化も比江島にはプラスに働いた」のだ。

自分がチームを勝たせなければならないという責任感から、一歩も引かず、自ら火を付けられるようになった。ファイナルでも観客を圧倒させるプレーは際立っていた。名実ともに日本を代表するエースとして格を上げた比江島に対し網野監督は「どこへ行っても同じように。日本代表では八村塁、渡邊雄太、馬場雄大ら海外組と一緒にプレーをする。そこで一歩引いてしまうと今シーズンの進化が戻ってしまう。そこでも引かずに代表を比江島が引っ張るというところが次のステップだ」と更なる課題も提示。2023年8月に沖縄アリーナでも行われる「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」でもぜひ日本を勝利に導いてほしい。

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■著者プロフィール

木村英里(きむら・えり)
●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。


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