【Bリーグ】宇都宮ブレックス、5季ぶり王者 その強さの秘密 後編

宇都宮ブレックス・比江島慎(C)Getty Images

■選手たちが必死にもがき、生まれた「絶対的な信頼」

白鴎大学男子バスケットボール部・網野友雄監督(写真提供:白鴎大学)

コーチングスタッフの仲の良さも今シーズンのポイントだと監督は語る。

「いい面も悪い面も言い合える関係だった。安齋も町田洋介アシスタントコーチ佐々宜央アシスタントコーチの2人を頼っていた。ヘッドコーチの経験もある佐々は安齋よりも立ち上がって選手たちに声を掛けていたが、バスケットボールへの目線がしっかりしていて意見のすり合わせがきちんとできた。そのバランスを絶妙に取っていたのが町田で、本当にバランスが取れた3人だった」。

練習でのみならず、レギュラーシーズンの試合の中でも目先の勝利にとらわれず選手を起用し成長を促したコーチ陣の手腕も評価される。「(宇都宮は)ディフェンスを大切にするチーム。ディフェンスができなければ試合には出られない。いくつになってもディフェンス上手くなっているな」と選手に驚かされることがあるという。誰もが成長しうる環境下で日々取り組む選手たちは必然的に「必死にもがく」ようになり、コーチとの「絶対的な信頼」が生まれていく。強固な信頼関係、そしてコーチ陣それぞれの長所も重なり合うことで頂点へと導かれた。

今シーズンを持って安齋ヘッドコーチの退任が発表された。だが2013年からアシスタントコーチ、そして2017年から5シーズンにわたりヘッドコーチとして築き上げてきた伝統や文化はこの先も間違いなく継承されていく。おそらく、選手たちの中でも「安齋HCのために」という思いがあり、優勝へ向けて「自己犠牲を払ってでも」とチームがまとまったと考えられる。それほど慕われる指揮官だった。もちろん安齋HCの次の挑戦にも期待をしたい。また、同HCが抜けた後の新たな体制下でチームがどんな進化を見せるのかももちろん注目だ。

■チームとファンと地域の方々で継承される「BREX MENTALITY」

これら継承力の裏側には、編成メンバーが変わっていないことも大きく影響している。「藤本光正代表取締役社長や鎌田眞吾ゼネラルマネージャーなど立ち上げメンバーがずっといて、彼らがどうしてチームを作りどんなチームにしていくかという点がブレない。そこに共感をしっかり得ることができている」ことも強さの秘密だ。もちろんずっと同じメンバーで戦い続けられるわけではないが「体制が変わらない限り、ある程度強いと思う」と監督は笑う。リーグを代表するトップチームであり良いチームであり続けることは間違いないだろう。

宇都宮の磐石さを実感する。

今後は「継続をする」ことと「継承していく」作業に入るシーズンがやって来る。「コアメンバーの年齢も上っていて、どんな選手が来てどんな若手が育つのか」が次の宇都宮に求められることだ。「違うメンバーでも同じメンタリティでチームを作り上げていくこと」が課題。しかし、網野監督の話を聞いている限りでは、チームとファンと地域の方々「BREX NATION」で作り上げる伝統、「BREX MENTALITY」は継承され続けるのであろうと思えた。決して宇都宮出身の選手ではなくても在籍しているうちに、このチームのためにだけではなくこの地域のためにと強く思えることが宇都宮というチームの強さの土台にあるように感じた。

今シーズン、宇都宮はファイナルの舞台に喜多川修平が立つことができず、その他のチームも新型コロナウイルス感染症の影響や過密スケジュールなどで苦しみ、難しいシーズンを戦い抜いた。来シーズンこそは、ヘルシーにどのチームも戦う姿を見たいと思う。

次の戦いはすでに始まっている。

◆【インタビュー前編】宇都宮ブレックス、5季ぶり王者 その強さの秘密

◆白鴎大を初の日本一に導いた網野友雄監督インタビュー 「日本バスケの世界的認知を目指したい」

◆【Bリーグ】今季優勝・宇都宮ブレックスを率いた安斎竜三監督が退任

■著者プロフィール

木村英里(きむら・えり)
●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。


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