マラソン世界記録保持者であるエリウド・キプチョゲ選手が来日し、自身のコーチであるパトリック・サング氏とともに、日本の陸上競技選手やコーチに向けた「ナイキ エリート ランニング キャンプ」と称されたトレーニングセッションを11月10日に駒澤大学で行った。
キプチョゲ選手は2018年9月16日に開催されたベルリン・マラソンで、これまでのマラソンの世界記録を1分以上更新し、2時間1分39秒の世界記録で優勝を果たした選手。
世界記録を出すためにした練習は?
そのベルリンマラソンを迎えるにあたって準備したことなどを、セッションでは明かした。
「ベルリンへの練習ですが、特に普通のトレーニングと変わったことはしていないです。4ヶ月前から少なくとも準備していました。新しい場所に行くこと、目指す場所はわかっていた」
サング氏曰く、1年間に2回ピークをもってくるようにしているということだ。 そのピークを大会などのタイミングでもってくるために必要なのが、「マイクロサイクル」と称した、時期によって取り組む練習の質を変えるというやり方だ。
半年で3段階に分けて、取り組む練習、意識を変えている。 それは、リカバリーフェイズ、準備フェイズ、試合フェイズという区分だ。
それぞれの段階について詳しくは言及されなかったが、各時期でメリハリをつけて練習に取り組んでいくことが必要だということだろう。
サング氏によると、キプチョゲ選手の練習の「量」は、他の選手と変わるわけではない。
「練習ボリュームは選手によって変わらないが、能力はアスリートによって変わるので、どのくらいの厳しさにするかはアスリート次第だ」
「リカバリー時期のペースは自分で考えるもの」
大会前となった7~10日前からは、最後の厳しいトレーニングをし、直前までにリカバリーフェイズにもっていく。
ベルリン・マラソン前は1200メートルを13回行い、それぞれ67秒~68秒のラップ(陸上競技では、通常400mを基準にする)で、全体を3分18秒~24秒で走っていたという。
ちなみにリカバリー時期のランニングは、40~50%の力で行うということだ。
「リカバリーの時期は1kmあたりどのくらいの速さで走るのか」という質問があがったが、「あくまでも自分で考えるもの」であるということで、キプチョゲ選手からは具体的なタイムについては言及されなかった。タイムは個人や、路面によって変わるものだという。
「大切なのは準備」
最後に、キプチョゲ選手から印象的な言葉があった。
「大切なのは、準備をしっかりすること。勝つことは大事じゃない。いかに(勝つための)準備をするかということが大事」
続けて、日本のランナーに向けて「自分を信じること。そして、コーチのプログラムから大事なことを理解して、優先順位をつけて、きっちりとした生活を送ること」というアドバイスを送った。
《大日方航》
キプチョゲ選手が来日しています〜!????#キプチョゲ 選手 #来日 #厚さは速さだ pic.twitter.com/QmYtS6aJo6
— SPREAD (@editor_spread) 2018年11月10日
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