【MLB】大谷翔平が挑む、伝説的投手「タングステンの腕」グルームズメン・オドイルの記録!?

昨年のオールスター、リアル二刀流として先発した大谷翔平 (C) Getty Images

ロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平は12日(日本時間13日)、本拠地エンゼル・スタジアムで行われるヒューストン・アストロズ戦に「3番DH」で先発出場。

大谷はリアル二刀流での2年連続オールスター選出が決まっており、昨年同様ホームラン・ダービーへの出場も取りざたされている。ご存知の通り、投打同時オールスター出場はMLB史上初めての出来事であり、それも2年連続での選出となると、次にいったいいつ誰が大谷と同等のパフォーマンスを見せてくれるのか思い巡らせてしまうほど……。なぜ彼が「ユニコーン」と呼ばれる意味がわかろうというもの。

大谷との比較で掘り起こされる記録は、常に「野球の神様」ニューヨーク・ヤンキース、ベーブ・ルースのものとなっており、エンゼルスのフィル・ネビン監督代行も、大谷には「もはや破る記録がないだろう」と記者団に問いかけるほどだ。

しかし、大谷がかつて存在したチーム「アクロン・グルームズマン」で大活躍した伝説の「タングステンの腕を持つ男オドイル投手の記録に挑んでいるのを知る野球ファンはそう多くはないだろう。

それもそのはず。実はアクロン・グルームズメンもオドイルも、カナダのトロント・ブルージェイズ・ファン、マット・イングリッシュさんがTwitterでつぶやいたことから広がった架空のチームと選手だからだ。このつぶやきがあまりにも的を射ていたため、「いいね」と拡散が相次ぎ、米メディア『ジ・アスレチック』のサム・ブラム記者により特集が組まれるまで至った。

◆【実際のTweet】マット・イングリッシュさんのつぶやきを引用した『ジ・アスレチック』

■“タングステンの腕”オドイル以来の偉業

実際、同紙が取り上げたマットさんのTweetはこうだ。「エンゼルスのハイライトを見る度にいつもこんな感じだ、『マイク・トラウトが3本のホームランを放ち打率を.528に上げ、ショウヘイ・オオタニは1921年、アクロン・グルームズメンの“タングステンの腕”オドイル以来となる何かを成し遂げた…。だが、タイガースがエンゼルスを8-3でくだした』」。

「every time I see an Angels highlight it’s like “Mike Trout hit three homes runs and raise his average to .528 while Shohei Ohtani did something that hasn’t been done since ‘Tungsten Arm’ O’Doyle of the 1921 Akron Groomsmen, as the Tigers defeated the Angels 8-3”」

思いついたのは単なる洒落。「アクロン」は、野球だけが取り柄のような典型的な中西部の都市名を思わせ、「グルームズメン」は「花婿の付添人」という意味であり、このチーム名が、19世紀のふざけた野球チームの名称を想起させるからだという。

実際、こうした「おふざけ」的な名称の名残りは、現在のロサンゼルス・ドジャーズにも引き継がれている。ドジャーズはその昔、ニューヨークのブルックリンを本拠地としていた時代に「トロリードジャーズ」と名乗っていたのをご存知だろうか。意味は「トロリー電車を避ける人々」。由来は、当時ニューヨーク市内を走っていた路面電車がやってる来るの軌道上で待ち構え、迫って来る電車をいかに直前で避けることができるかという、命知らずな遊びが流行ったことによる。この「トロリー電車を避ける人々」がそのままチーム名となり、いつしか「トロリー」が外れ「ドジャーズ」(避ける人々)だけが残った。ボールを避けるゲーム「ドッヂボール」と語源は同じだ。イギリス人からすれば、「避ける人々」なんて愛称がチーム名とは「なんのこっちゃ」と思うのではなかろうか。これと同様グルームズメンには、そんな古めかしさとおふざけが込められている。

また、選手名「オドイル」は東部アメリカに古くから移民したアイリッシュ系を想起させる名字。これもまた古きアメリカの匂いを漂わせるネーミング。「タングステン・アーム」は「アイアン・アーム」つまり「鉄腕」をもじった造語。「鉄腕」ならぬ「タングステンの腕」という意味だ。

マットさん自身も「いくつかのいいねとリツイされるぐらいだと思ってたよ」とその感想を同紙に語っているが、いまや拡散が重なり英語で「タングステン・アーム」を検索すると、すっかりマットさんのTwitterネタ、ひいてはトラウトと大谷が活躍しながらも負けがこんでいるエンゼルスを揶揄するフレーズとして定着している。

トラウトは24本塁打.974 OPS、大谷は19本塁打 .842 OPS に加え81回を投げ奪三振111の防御率2.44 でオールスターに選出されているにもかかわらず、エンゼルスは38勝49敗と、借金も今季最多の11となっている(7月11日現在)。「トラウタニ」が大車輪の活躍を見せても、エンゼルスが負ける試合を『ジ・アスレチック』は、「タングステン・ゲーム」と呼び、エンゼルスは今年も「タングステン・シーズン」を送っていると揶揄している。

マットさんは現在、「タングステンの腕・オドイル」と「1921アクロン・グルームズメン」のイラストをデザイン中だそうで、次回エンゼルスがブルージェイズ戦でトロントを訪れる際は、そのTシャツをスタジアムに着用して行くつもりだという。

さて、洒落は効いているものの、エンゼルス・ファンはもとより日本の野球ファンにとっても、あまり気持ちのいい話ではない。大谷が伝説のオドイルの記録を破るのも期待したいものではあるが後半戦、果たしてエンゼルスが意地を見せ、タングステン・シーズンから脱却できるのか。見ものでもある。

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著者プロフィール

たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー

『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨーク大学などで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。

MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。

推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。

リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。


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