スーパーフォーミュラ2022シーズンは後半戦に突入。
第6戦は富士スピードウェイが舞台となった。
注目は、野尻智紀(チーム無限)が断然優位にいるタイトル争いの勢力図がどう変化するのか。この週末は天候が不安定な予想だったこともあり今までのようなスムーズな展開にはならないのではと思っていたが、その通り、予選も決勝も波乱の連続となった。
予選が行われた土曜日は朝から大雨となり、キャンセルはなんとか免れるもヘビーウェットに変わりはなく、公式予選は従来のノックアウト方式ではなく30分間の計時方式に変更された。その結果、スピン、コースアウトが相次いだ上に雨も激しくなり、3度の赤旗中断。翌日は天候こそ回復したものの、フォーメーションラップで1台がストップ、スタート後もバトルでの接触やアクシデントが多いレースとなり、2度セーフティカーが導入され順位は荒れた。
◆野尻智紀が4戦連続PPでランキング1位堅持 一発の速さが王者決定に影響する熾烈な予選を見よ
優勝したのは今季がフル参戦デビューの笹原右京(チーム無限)で、勝因は2度目のセーフティカータイミングでピットインし一気にトップに浮上できたことだった。だがそこは、国内トップカテゴリー。ラッキーだけで勝てたのではもちろんない。笹原はウェットの予選こそ13位に終わったものの、ドライでのレースではスタートから中団に埋もれながらも安定した速さを見せていた。そこから一気にトップに立てたのは幸運としか言いようがないが、最後のリスタートからチェッカーまでの10周は、それまで実力でトップを走っていた坪井翔(セルモインギング)との実力勝負であり、最終的に約2秒差で振り切ったのだから優勝に値する速さがあったのは確かだろう。
とはいえ、笹原がこれで王者を揺るがせたわけではない。
■天は平川亮、サッシャ・フェネストラズに味方せず
今回のいくつかの波乱を一番味方にしたかったのはおそらく、タイトル争いでトップの野尻智紀(チーム無限)を追う2番手平川亮(チームインパル)と3番手サッシャ・フェネストラズ(コンドーレーシング)。ところがこの2人には、その波乱が完全に負となってしまった。
平川は予選で6位のタイムをマークしながら走路外走行との判定が下され、ベストタイム抹消となり11番グリッド。レースでもうまくスタートを切って順位を上げたその次の瞬間、1コーナー先で接触に遭いリタイアを余儀なくされた。予選7位のフェネストラズも3周目にバトルで接触し早々と戦列を離れ、ともにノーポイントで第6戦を終えることになった。
そんな中だからこそ、より野尻の安定感が光った。予選も連続ポール記録は更新できなかったが優勝を十分狙える3位につけ、レースでもスタートでひとつポジションを上げると、その後もトップ浮上の可能性があるレースをしていた。唯一、セーフティカーが出たタイミングが悪く3位に再び後退という不運はあったが、その後の走りは圧巻。上位では唯一ミニマムピットインの作戦だったため終盤のペースが周りよりも苦しかった中、フレッシュなタイヤで明らかに野尻を上回るペースでオーバーテイクを仕掛けてくる4位の宮田莉朋(チームトムス)を巧みなブロックでかわし続け、3位表彰台を最後まで死守した。このレースでは数少ない、見ごたえのあるバトルシーンだったように思う。
これで野尻は2位の平川に29ポイントとさらに大差をつけ残り4戦に挑むことになった。セーフティマージンだなと感じるのは数字上ではなく、野尻のセッティング力を含めた速さの安定感、そしてレースでの勝負強さを目の当たりにした。
◆KONDO RACINGのサッシャ・フェネストラズがSF初優勝 PP野尻智紀はジンクス破れず3位
◆第3戦は松下信治が初優勝 負けてなお貫禄のチャンピオン野尻智紀
◆ダブルヘッダーの開幕2戦、もっとも躍動したのは前年チャンピオンの野尻智紀
著者プロフィール
前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター
2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。