サッカー日本代表は9月23日にアメリカ代表と、27日にエクアドル代表とドイツにて親善試合を行う。11月に開幕するカタール・ワールドカップのメンバー発表前最後の親善試合となるこの欧州遠征で、森保一監督は本番の登録メンバーと同じ26人を召集予定で、かつ本番を想定した戦い方をすることを明かしている。欧州リーグも開幕し、各選手が所属クラブで奮闘を見せる中、W杯に向けた代表入りを懸けたサバイバルがクライマックスを迎えている。
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■伊東に挑戦する2人の若手レフティー
森保監督がW杯のアジア最終予選から採用してきた[4-3-3]システムを基本とすると、焦点となるのが前線の3トップの人選である。最終予選では大迫勇也(ヴィッセル神戸)をセンターに、左サイドに南野拓実(モナコ)、右サイドでは伊東純也(スタッド・ランス)がレギュラーを務めた。しかし、ドイツ代表やスペイン代表といった強国との対戦のシミュレートも兼ねた今回の欧州遠征で、序列に変化が見られる可能性はある。
まず、最激戦区といえるのが右サイドである。今夏フランスに新天地を求めた伊東は、28日に行われたリヨン戦でヘディングから移籍後初ゴールを奪うなど初挑戦のフランスでも存在感を示しており、一番手の有力候補であるのは間違いない。しかし、同じく今夏に新天地を求めた24歳の堂安律(フライブルク)と21歳の久保建英(レアル・ソシエダ)という東京五輪の主力を担ったレフティー2人もこの争いに加わっている。
今季から2年ぶりにブンデスリーガに復帰した堂安はプレシーズンから好調を維持すると、中盤2列目のレギュラーを担う。開幕のアウクスブルク戦でチームの4点目を奪うなど攻撃面で存在感を示すだけでなく、第3節のシュツットガルト戦では中盤の要である遠藤航のマンマークを任されるなど、クリスティアン・シュトライヒ監督のもと守備面でも重要なタスクを課されており、攻守に渡るアグレッシブなプレーは評価に値する。
今季から完全移籍でレアル・ソシエダに加わった久保も負けていない。イマノル・アルグアシル監督のもと、2トップという新境地を開拓。開幕のカディス戦でスタメンに抜擢されると決勝ゴールを奪い、いきなり結果を残した。その後もスタメン起用され、パスワークが持ち味のレアル・ソシエダのスタイルにもフィット。ついにそのポテンシャルを開花させようとしている。伊東、堂安、久保という新天地で好調を維持する3人のアタッカーを森保監督がどう起用するのかはひとつのポイントとなってくるだろう。
■2010年、18年大会では直前にメンバー入れ替え
また、長年レギュラーを務めてきた大迫が32歳を迎えている中央のポジションも安泰とはいえない。セルティック移籍2年目を迎えた古橋亨梧が開幕直後から大爆発。3試合連続ゴールで迎えた第5節のダンディ・ユナイテッド戦ではハットトリックで得点ランキング単独首位に立っている。ポストプレーが持ち味の大迫に対して裏への抜け出しやゴール前での駆け引きを得意とする古橋は、周りを活かすことに長けた久保との同時起用などで、日本代表においてもその得点力が活かされる可能性は十分にある。
リヴァプールを離れ、リーグ・アンのモナコに挑戦の場を求めた南野だが、新天地でここまでインパクトを残せておらず、状態が気になるところ。そんな中で、今季からプレミアリーグに初挑戦の三笘薫(ブライトン)はリーグ戦やカップ戦で積極的なドリブルから存在感を示している。日本代表では現状途中出場でのジョーカー的な役割を担う三笘だが、このまま好調を維持し、南野の状態が上がらなければ、森保監督も欧州遠征やW杯本大会での“決断”を迫られる場面が出てくるかもしれない。
W杯に挑む過去の日本代表を振り返ると、2010年南アフリカ大会を前に当時の岡田武史監督は長年中心を担っていた中村俊輔らを直前でレギュラーから外し、本田圭佑らを抜擢しベスト16に進んだ。また同じく決勝トーナメントに進んだ前回の2018年ロシア大会では、予選を率いていたヴァヒド・ハリルホジッチ監督が直前で解任され、後任に指名された西野朗監督のもと、香川真司や乾貴士といった選手たちが直前でレギュラー入りし躍動した。選手個々のクラブでのパフォーマンスに変化が見られる森保ジャパンの前線も、序列が入れ替わる可能性はある。
カタールW杯まで残り3カ月を切った中で、各ポジションで本大会に向けた争いが繰り広げられている。その中でも森保監督が現状を踏まえた上で、前線にどのようなアタッカーを並べるかは欧州遠征、そして本大会を見据えるなかで大きなカギを握るのは間違いない。はたして、メンバー入りを懸けたサバイバルを制するのは誰か。
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文・井本佳孝(SPREAD編集部)