野口啓代が素顔で語るこれからのこと…オリンピックや結婚、後輩との関係についても

2008年に日本人女性として初めてボルダリング・ワールドカップ(W杯)で優勝し、現在も世界トップレベルで活躍するプロフリークライマーの野口啓代(のぐち あきよ)選手。

TEAM auに所属しながら、日本代表チームのエースとして、成長著しい後輩クライマーたちを牽引している。

スポーツで社会貢献する女性を表彰する『Woman in Sports(ウーマン・イン・スポーツ)』アワード(ウィメンズヘルス主催)でウィメンズヘルス特別賞を受賞した際に行ったインタビュー後編では、野口選手の素顔に迫った。

インタビュー前編:野口啓代の語る新種目「コンバインド」の面白さ…初代アジア王者に輝いた女王の目線

登っているのが一番楽しい

ーーーシーズンオフに入りましたが、何かシーズン中にできないことはしてますか?

野口:アジア選手権がシーズン最後の大会だったんですけど、終わった後にプライベートでハワイに遊びに行ってきました。初めてのハワイですごく楽しめましたが、行っている間も早くトレーニングしたいなって思っちゃって(笑)。

大会はすごく好きなんですけど、それ以上に自分が登ったりトレーニングしたりするのがすごく好きで。やっぱり登りたいなって。

 

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ーーートレーニング中はどんなことを考えているのでしょう?

野口:クライミングってちょっと特殊で、同じ動きをずっとやるわけではないので……。筋トレ何回とか何分間何かをやるというよりは、目の前の課題を登れるか登れないか(を考えます)。

どんどん新しい課題が出てくるので、単純にできない課題を登っているだけでもすごい楽しいし、そこは一般の趣味でやっている方と変わらないのかなと思いますね。

私も趣味で始めたので、愛好家の延長にいるような感覚なので……やっぱり登っているのが一番楽しいですね。

ーーークライミングとの出会いは、小学5年生の家族旅行で訪れたグアムだったそうですね。どの部分がご自身の中でピンと来ましたか?

野口:ん〜、ゲームセンターで始めたので競技というより「初めて登ってみた」という感じだったんです。

実家が牧場を経営していたので、子どもの頃から木登りをするのがすごい好きで。高い所に登ることが好きでしたが、家の木だったら落ちたら危ないし、屋根とかも危険じゃないですか。

それが(クライミングなら)安全で楽しめる、木登りをしている感覚で楽しいなって思いました。

ーーー木から落ちたりしたんですか?

野口:しましたね(笑)。

野口選手の手。「(滑り止めの)チョークがついてないから普通ですね」と笑った

先輩クライマーとして

ーーー国内のクライミング界では16歳でアジア選手権ボルダリング3位の伊藤ふたば選手(TEAM au)など高校生、中学生もどんどん力をつけています。大会の会場では皆さん仲良く話している姿をよく見かけますが、若手選手とは普段どんな会話をしていますか?

野口:クライミングの話もしますし、プライベートな話もかなりしますね。

ーーー2016年までは野口選手の2学年先輩で同郷の小林由佳さんがW杯を一緒に転戦されていましたが(2017年3月で現役を引退。今年の福井国体では野口選手とペアを組み、女子リードで優勝)、今はご自身が女子日本代表では最年長。後輩クライマーによくされているアドバイスなどありますか?

野口:やはり何か相談を受ける機会は増えてきてしまっているので、相談された時は自分の経験したことがあるものだったら「私はこうした」と伝えています。

たとえば高校の進学はどうしたかとか、大学に行くか迷ってるなど進学の相談もされます。あとは初めてケガをしてしまって大会に出るか出ないか迷っている相談もありますね。

野口選手に続く後輩クライマーも成長。森秋彩選手(左)と伊藤ふたば選手(右)

ーーーもはや人生相談ですね(笑)。さて来年は30歳を迎え、8月に八王子で世界選手権も開催されますよね。

野口:世界選手権の結果でオリンピックの切符がもらえます。そこでオリンピック出場権を獲得するのが一番の目標ですね。

その前後のW杯や国内の選考大会は世界選手権のための前哨戦みたいな形になると思うのですが、本当に世界選手権にピークを持っていきたいです。

ーーー9月には野口選手の地元茨城で国体(いきいき茨城ゆめ国体)も行われます。

野口:そうなんです!

ーーー茨城出身クライマーには野口選手がいて、小林さんがいます。今年の世界ユース選手権ユースB女子リードで優勝した15歳の森秋彩選手(もり あい/つくば市立手代木中学校)もいる。茨城県出身者が強い理由はあるんでしょうか?

野口:茨城県はそんなにクライミングジムもないし、みんな一緒に登っているわけでもないので本当に不思議なんです(笑)。

ーーー隣の栃木県は楢崎智亜選手と明智選手(ならさき ともあ、めいち/ともにTEAM au)や安間左千さん(あんま さち/元日本代表のプロフリークライマー)がいますよね。

野口:でも栃木はまずクライミングジムがたくさんあって、塩原という有名な岩場があります。茨城はジムも少ないし有名な岩場もないし、何かがあるわけではないので不思議ですね。

ーーー岩場にはよく行ってますか?

野口:オフシーズンはよく行きますね。今年はまだお仕事や大会が終わったばかりで行けていないのですが、冬には岩に行きたいと思っています。

オリンピック、その先にある自分の未来

ーーー今日の服装は赤がとても映えますが、ご自身で選んだのですか?

野口:(少し照れながら)こちらのスタイリストさんが選んでくれて、黒か赤か、だったんです。今日は黒を着る受賞者が多かったですし、私、ネイルもいつも赤で、勝負カラーなんです。

なかなか自分では買えないような服だったし、すごい可愛いなって思います。

ーーーでは普段のオフの服装はどんな感じに?

野口:私は地味な服が多くて。黒とか白とかグレーとか無難なものが多いです。(この日のドレスは)自分ではなかなか買えないチョイスだから、こういう機会に着れてすごくうれしいです。

競技中はシンプルな色使いのウエアを着る

ーーー受賞した方々にお会いして、何か得られたことはありましたか?

野口:これまではあまり他の競技をやられている方にお会いする機会がなくて、直接お話を聞けなかったんです。でも受賞して思ったのは、フィットネスのトレーナーの方だったら自分が子供を産んでから始めたりとか、皆さん第二の人生ではないけど、そういうのを輝かせている。

私は子どもの頃から競技をやっているので、競技生活が終わったらその先は何かをやりたいというよりは普通の生活をするイメージしかなかったのですが、受賞された方々を見て競技を終えても何かできることがあるかもしれないと思いました。

単純に東京オリンピックが終わったら31歳なので、多分結婚したり子供が欲しいなって気持ちもあるので、それの後でまた何かを始めてもいいなって思いました。

ーーーまだ自分の未来や、こういう風に生きてみたいといった理想像は描けていない感じでしょうか?

野口:やっぱり自分は競技をするのが一番好きで、その後何かやりたいこととかまだ見つかっていなかったんです。でも受賞者は私よりも年上の方ばかりでしたし、(オリンピア部門で受賞した)高橋尚子さんや(審査員長の)伊達公子さんみたいにオリンピックに出てその後の人生も競技中と同じように輝いている、カッコいいなと思えました。

今回いらっしゃったのはロールモデルの方々だと思うので少しでもヒントを得て、そこから自分のやりたいことを見つけられたらいいですね。

今までクライミングを通じてスポーツに感謝している部分も大きいので、それを広めていける活動であったり、恩返しができるような活動がいいなと思っています。

ーーーありがとうございました。

Climb to 2020

国内の大会では野口選手が登るとすぐに観客席から「啓代ちゃん、ガンバ!」という声援があちこちから聞こえてくる。世界中のクライマーから目標にされる存在であっても、一回り以上年下の子たちも「啓代ちゃん」と親しみを込めて呼んでいる。進学の相談もされるというのだから、彼女の人柄の良さがうかがえる。

大会やトレーニング後は「絶対にタンパク質と炭水化物を食べる」とトップアスリートの食事をしながらも、一日オフの時は「ケーキもすごく好き」と甘いものに手が伸びるそうだ。クライミングの話にはひときわ目を輝かせ、競技中の真剣なまなざしとは対照的な笑顔が印象的だった。

最後に署名をお願いすると「Climb to 2020」と添えてくれた。クライミング一筋で常に上を目指してきた彼女にとって、TOKYO2020は集大成の大会になるはずだ。これからも野口選手は未来へ向けて手を伸ばし、登っていく。

野口啓代(のぐち あきよ)

TEAM au所属のプロフリークライマー。1989年5月30日生まれ、茨城県龍ケ崎市出身。身長165cm。

2008年に日本人女性初となるボルダリングW杯優勝を成し遂げ脚光をあび、翌2009年には年間総合優勝。以降2010年、2014年、2015年と通算4度達成している(2018年は2位)。

ボルダリング・ジャパンカップは2005年第1回大会から9連覇、通算11勝。2年に一度行われる世界選手権は今年ボルダリングで準優勝。リードも得意で今季はW杯最終戦で銅メダルを獲得。

地元茨城では龍ケ崎ふるさと大使として親しまれている。

《text & photo Hideyuki Gomibuchi》

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