福島千里が東京五輪に懸ける思い…目の前の辛さを乗り越えるための思考法とは

11月24日、アスリート、芸能人、一般ランナーら536名がバトンをつないで42.195kmを走り切るアシックス主催のイベント「42195DASH!!」が代々木公園陸上競技場で開催された。

開催日は2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会開幕の20ヶ月前。大会への気運を醸成するために開催された同イベントには、女子100、200メートルの日本記録保持者である福島千里選手も参加した。

福島選手は東京オリンピックを「選手としての集大成」と位置づけている。編集部はイベント後、福島選手へ東京オリンピックにかける意気込みを聞いた。(聞き手・撮影=大日方航)

「オリンピックはなんかこう、特別というか」

—:本日のイベント含め、2020年のオリンピックに向けて、少しずつ日本全体が盛り上がっているように感じます。

福島千里選手(以下、敬称略):やはりオリンピックは、出る大会の中では一番メインの特別な大会だと思っています。

勿論どの大会でもベストを尽くすし、どの大会でも周りの人は応援してくれますが、オリンピックはなんかこう、特別というか。自然と周りの人も盛り上がり、自然と私たちも盛り上がります。

「オリンピック」って聞くと血がさわぎます(笑)。それだけ特別。競技者である以上ここで結果を出したいし、結果を出すのは名誉なこと。今後の人生においても大きな経験になると感じています。

—:東京オリンピックへはどういった意気込みを抱えていますか。

福島:本当に私自身、色々変えたり挑戦しています。選手生活の集大成としているほど思い入れは強いですし、強い気持ちで臨んでいきたい。その舞台が東京だということはチャンスですし、今までお世話になった方への絶好の恩返しになる舞台でもあると思っています。

「山縣選手も、普通の人間。骨が一個多い訳でもない」

—:東京オリンピックに向けて「色々変えたり挑戦している」ということですが、具体的にはどういったことを変えていますか。

福島:大きく変えたのは環境ですね(福島選手は今年1月から、山縣亮太選手も在籍しているセイコーホールディングス株式会社に入社している)。

リオ・オリンピックが終わって達成感は味わえなかったのですが解放感はあり、そこからもう一度環境を変えてやろうとしました。新しいことをするというのは簡単なことではないので、躊躇した部分もありましたが、そこを思いっきり挑戦できました。

山縣選手と一緒に練習しているのですが、レベルが本当に違うので、同じレベルの選手だとは間違っても言えないです。

でも、(山縣選手の)陸上競技に対する姿勢からは学ぶことも多いし、多くの時間を過ごしているからこそ、山縣選手の存在が「よし、今日も頑張ろう」と思える大きなモチベーションになっています。

また、どれだけ足が速くても、あんな強い選手でも練習は辛いということや、簡単に全てをこなしているわけではないことを知ることができたのも大きかったです。「ああいうすごい選手が、あれだけすごい練習をしているなんて」と刺激を受けています。

練習を易しくすることも自分次第ですが、そうしないであれだけ厳しく練習できるのは、山縣選手の強みだと思います。

10秒ちょうどで走れても人間味があったり、とんでもなく自分と変わるわけではない同じ人間なんだ、というのを感じることができています。それこそ「骨が一個多い」わけではないですし(笑)。参考になることがたくさんあります。

「目の前のことを辛いと思ってしまったら、次はもしかしたら砕けてしまうかもしれない」

—:福島選手ご自身はどのようにして辛い練習などを乗り越えているのですか。

福島:同じく辛い練習を頑張っている仲間のことを考えたり。今だったら山縣選手だったり、寒い中ビデオを撮ってくれるマネージャーさんだったり。

辛くなればなるほど速くなれるとは思っていないのが大前提ですが、辛くなることは覚悟しています。

今、これを辛いと思っているけれども、明日、明後日、もしかしたら一年後の方がもっと違うものにぶつかってもっと辛くなるかもしれない。

もっと何か違うもの、もっと辛いのが先にあると思うと、今の辛いものはポンと飛び越えなければいけない、今、つまずいている場合ではないと思えるというか。

目の前のものが「最後の辛さ」だったら、時間をかけてその辛さを乗り越えようとするかもしれないですが、この先もっと何があるかわからない、その場にある辛さより考えてみるともっと辛いことがあるかもしれない。

だから、目の前のことを辛いと思ってしまったら、次はもしかしたら砕けてしまうかもしれない。そう考えて目の前の辛さを乗り越えています。

そしてもちろん、辛さは軽減するわけではないですが、辛いときに「辛いねぇ」と言える練習仲間がいることは、私は恵まれていると思います。

目標がしっかりと自分の中で見えていれば、ヒントを聞き逃さない

—:山縣さんから刺激を受けているというお話でしたが、今日のイベントにもたくさんのアスリート(桐生祥秀選手らも参加した)が来ていました。そういった周りのアスリートと関わる上で意識していることはありますか。

福島:たわいもない会話の中でヒントを得ています。自分のモチベーション次第で、普通の会話でも入ってくる言葉が変わってくると思うんですよね。モチベーションが低かったら聞き逃してしまうことも、目標がしっかりと自分の中で見えていれば聞き逃さない。

モチベーション高く、情報を敏感にキャッチできるセンサーを張っていたいと思っていて、そうすればヒントになるものはやってくるのではないかと考えています。

—:最後に、オリンピック含めた今後の目標を教えてください。

福島:陸上では、東京オリンピックをしっかり最高の形で迎えて締めくくれるようにしたいです。まずは東京オリンピックを目指して練習を積み重ねたこと、自分の目標に向かうことが、今後の人生をきっと豊かにしていくと思っています。

それが終わってからも、目標に向かうプロセスは変わらないと思うし、私がやってきたことを誰かのために伝えたり、支えてくれた方に恩返しをしていきたいです。東京オリンピックは、少なくとも競技生活における集大成だと思っています。

人生においては、大きな目標ではありませんがまず人の役に立つこと。私なりのできる特別なこと、特別じゃなくてもできることをしていきたいです。

プロフィール

セイコーホールディングス株式会社社員。北京・ロンドン・リオデジャネイロオリンピック日本代表。女子100m、200mの日本記録保持者。日本選手権の100mで2010年から2016年で7連覇を成し遂げ、2011年の世界陸上では日本女子史上初となる準決勝進出を果たした。

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