アスリートの社会貢献活動を表彰する「HEROs AWARD 2018」の授賞式が、12月17日にグランドハイアット東京で行われた。
「HEROs AWARD」は、アスリートの社会貢献活動を促し、様々な社会問題を解決する動きを加速させ、ソーシャルイノベーションの輪を広げていくことを目的に立ち上がった。日本財団が創設した「HEROs Sportsmanship for the future」プロジェクトの取り組みの一つ。
2018年の受賞者は、赤星憲広氏、有森裕子氏、飯沼誠司氏、長谷部誠氏、浦和レッズ(登壇したのは淵田敬三氏、近藤伸一氏、落合弘氏)、ビーイング・アライブ・ジャパン(登壇したのは北野華子氏)。
受賞者は日本財団が任命した選考委員により決定、プロジェクトに寄せられた寄付金から活動奨励金が贈呈された。なお、授賞式は民間資金で開催された。
盗塁した数の車椅子の寄贈を続けてきた現役時代
赤星憲広氏は、「Ring of Red」と題した車椅子を寄贈する社会活動が表彰された。同氏は2001年、足に病(骨肉腫)を抱えた体の不自由な女性ファンとの出会いをきっかけに、様々な人に「プレー以外でもお返しを」と考え、車椅子の寄贈をはじめた。
2003年から現役を引退した2009年まで毎年1年間、盗塁した数の車椅子の寄贈を続け、通算301台の車椅子を寄贈した。引退後も同活動を続けたいと考え、「赤星基金」を設立。現役引退後の車椅子寄贈数は現在までに648台に達している。
当初は「偽善」だと非難されたことも
活動をはじめた当初は、周りからの心ない声もあったという。
「正直、過去には色々ありました。最初は、『偽善』だとか言われたりしましたが、僕は気にせずやろうと思っていました。でも、続けていくと応援してくれる人が増えた。今は僕よりも若い選手が色々な活動をしています。こういう選手が増えれば(社会貢献活動をして行くのが)当たり前になっていく」
その若い選手の1人が、今回の授賞式で赤星氏に賞を渡した、阪神の鳥谷敬選手だ。2015年に発足した一般社団法人「レッドバード」の理事を務め、アジアの恵まれない地域の子供に靴を届ける活動を継続しており、同賞の昨年の受賞者だった。
「現役の時から(赤星さんが)車椅子を寄贈しているのは知っていた。当時、自分はただそれを見ているだけだった。今はそういった赤星さんの活動があって、自分も靴を送る活動ができている。今後は何か一緒にできたらなと思います」(鳥谷選手)
「こうした活動は、賞をもらうために始めたわけではなかった」
赤星氏は、賞をもらった時の気持ちを正直に吐露。嬉しさと戸惑いが混在した複雑な気持ちだったようだ。表彰されたこともそうだが、どうしても「社会貢献活動をしている」ことで目立つことに当初は葛藤もあったようだ。
「こうした活動は、賞をもらうために始めたわけではなかったので、嬉しいは嬉しいですが…。正直、(社会貢献活動をしていることを)知ってもらったから何か変わるのか、という思いもありました」
「でも、いまは活動を広げることで、『社会貢献をしたかったけれどどうやったらいいのかわからない』といった思いを抱えている人がたくさんいることを知りました。きっかけがなかったり。だから、活動で知ったことを発信して知ってもらうことも必要なんだな、と感じています」
「HEROs」のような社会貢献活動に関心のあるアスリートが集まる場所があることで、融合反応が生まれていくことに期待をかけている。
「僕自身ひとりでスタートさせた活動ですが、人数が少ないとなかなか大きな取り組みをしていくのは難しい。たくさんの人たちが集まって活動することで膨大な力になる。今後、何ができるか楽しみ。すごいことができるかもしれない」
《大日方航》
《関連記事》
「不動産転がして儲けるなんてそんなの屁にもならない」村田諒太が明かす、アスリートが社会にできること
五郎丸歩が指摘する社会課題…人との繋がりが軽視される中、アスリートができること
バスケ・田臥勇太が感じた、スポーツの無限の可能性…社会を良くしていくために
中田英寿の今後の取り組みは?「僕は、自分が好きなことをやるだけなので」
有森裕子、日本スポーツ界の社会貢献活動への発想の変化を明かす…20年前の当たり前とは?
赤星憲広、盗塁した数の車椅子の寄贈を続けてきた現役時代、そして今…当初は「偽善」だと非難されたことも