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【WBC】第2回大会プレーバック 宿敵・韓国との壮絶な決戦、イチローが伝説の決勝打で連覇達成

【WBC】第2回大会プレーバック 宿敵・韓国との壮絶な決戦、イチローが伝説の決勝打で連覇達成
大不振に苦しむイチローが“伝説の一打”で決めたWBC2連覇 笑顔が眩しい侍ジャパン (C) Getty Images

野球の世界一決定戦、「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC」WBC)が3月8日、いよいよ開幕する。待ちに待った6年ぶりの大舞台、MLBに革命をもたらした大谷翔平ら新時代のスーパースターたちがそれぞれ母国の威信をかけて、世界最高峰の激闘に挑む。

待ち受けるのは、歓喜か絶望か。はやる気持ちを抑えつつ、過去の名場面を振り返り、来るべき日に備えよう。今回は2009年、第2回大会の記憶を辿る。

◆第1回大会プレーバック レジェンド・イチローと世界の王が勝ち取った初の世界一

■原辰徳監督へバトンタッチ

“世紀の大誤審”を乗り越え頂点に立った第1回大会から3年、王者として臨む日本代表の指揮官は、王貞治から原辰徳へと受け継がれた。

連覇を託された原辰徳監督、イチロー、中島裕之、青木宣親(右から)
 (C) Getty Images

侍ジャパンの中心は、MLBで8年連続シーズン200本安打、ゴールドグラブ賞、オールスター出場を達成した、シアトル・マリナーズのイチロー。加えて、日本人捕手初のメジャーリーガー・城島健司ダルビッシュ有岩隈久志といった新戦力が代表メンバーに選出された。

■物議を醸した、複雑怪奇な試合方式

第2回大会で鬼門となったのが、予選ラウンドの“敗者復活式”トーナメントである。要約すると、本トーナメントで負ければ、敗者復活トーナメントへ移る。それぞれで勝ち上がった2チームが、次のラウンド1位2位枠をかけて争うといった流れである。

WBC第2回トーナメント方式

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侍ジャパンは、東京ドームでの第1ラウンドを2連勝で滑り出すも、敗者復活枠で這い上がった韓国との順位決定戦に敗れ、2勝1敗の2位通過。舞台をアメリカ・サンディエゴに移し、第2ラウンドへ。

■明暗を分けた先発投手陣

第2ラウンド初戦は、キューバとの対戦。先発は、前回決勝でも登板したボストン・レッドソックスの松坂大輔。6回無失点と好投し、4投手の完封リレーで逃げ切った。

ボストン・レッドソックスの松坂大輔 (C) Getty Images

そして、三たび韓国との対決となるも、痛恨の敗戦を喫する。不調の打線には初回の3失点はあまりに重く、最後まで反撃の糸口が見い出せなかった。ローリングス社製のWBC球は縫い目が高く不ぞろいで、ボールが滑る。精密機械と謳われる先発のダルビッシュが、コントロールを乱し崩れた要因はここにあった。

失意の中、侍ジャパンが初めて迎えた敗者復活戦はキューバとの再戦。先発・岩隈が抜群の安定感を見せ、窮地からチームを救う。そして、第1ラウンドに続き、第2ラウンドの順位決定戦で、またもや韓国とマッチアップした。度重なる日韓戦には辟易した者も多く、“敗者復活式”トーナメントはすこぶる不評だった。

■メジャー軍団の敗北

そして、韓国と4度目の試合に勝利し、第2ラウンドを1位で通過。準決勝で、アメリカとの対戦が3年ぶりに実現する。

侍ジャパンは、ここまで7試合で9失点。コールド勝ちした第1ラウンドの韓国戦以外は、投手陣がチームを支えていた。そんな中ようやく打線が奮起し、1点ビハインドの4回裏に集中打で5点を挙げる。調整不足のアメリカは、デレク・ジーターを中心に据えて体裁を取り繕ってはいたが、本来の動きとはほど遠く、失策の連鎖で呆気なく自滅していった。

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松井秀喜の盟友として日本でも名高いヤンキースのデレク・ジーター (c)Getty Images

侍ジャパンが宮崎で合宿を始めたのが、2月15日。韓国がハワイでキャンプインしたのも同日。一方で、アメリカが集合したのは開幕直前の3月初旬だった。WBCは立ち上げたばかりで権威がなく、開催時期も微妙で、選手の本気度もわからない。そんな手探りの状態で始まったのが現実。各国の取り組みにも、明確な違いが表れていた。トレーニングを積んでいても、戦術が浸透するには時間を要する。入念な準備を続けた二カ国が最後までしのぎを削ったのは、必然だったと言えるだろう。

■連覇を決めた、伝説の決勝適時打

WBC第2回大会の決勝戦は、韓国と5度目の対決。侍ジャパンが先制しては追いつかれ、突き放してはまた追い上げられ、1点リードで迎えた9回裏にもダルビッシュが同点適時打を浴びた。土壇場で振り出しに戻り、試合は延長戦に突入。

2009年3月23日、ドジャー・スタジアムで行われた決勝戦 10回表に伝説の2点タイムリーを放つイチロー (C) Getty Images

まるですべてが伏線だったかのような、美しい結末。最後の最後で主役に躍り出たのは、ここまで不振を極めていたイチローだった。

どこか確信めいた予感を漂わせていた。この男ならやってくれる。瞬く間に世界中を駆け巡った伝説の一打は、今も燦然と輝くWBCの名場面に挙げられる。

◆【実際の映像】大不振に苦しみ続けたイチローが放った “伝説の一打” 観客総立ちの瞬間

世界一を手繰り寄せた決勝適時打に国中が歓喜し、ひとつとなった。その瞬間、塁上で努めて冷静に振る舞い、相好を崩さなかった男以外は誰もが皆、笑顔に包まれていたことだろう。