ついに来たかと思った。
NBAワシントン・ウィザーズの八村塁は23日(日本時間24日)、名門ロサンゼルス・レイカーズへの移籍が決まったと複数の米メディアが報じた。
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八村塁は2019年、1巡目全体9位で指名され今季、これまで1試合平均24.3分で13.0得点、4.3リバウンドを記録。21日(同22日)のオーランド・マジック戦でもベンチスタートながら30得点とキャリア最多タイの活躍を見せていた。
しかしNBA「ドライチ」のフランチャイズ・プレーヤーに求められるプレーは、そもそもそのレベルではない。日本のスポーツニュースなどでは、頻繁に「八村、2桁得点」などの称賛が目につくが、そのレベルはドライチにしてみれば、あまりにも当然。
■2019年ドラフト1巡目同期から見劣りする八村のスタッツ
以下が八村と同じ2019年ドラフト組上位の今季成績だ。
1位ザイオン・ウィリアムソン(PF)ニューオーリンズ・ペリカンズ 26.0得点、7R、4.6A
2位ジャ・モラント (PG)メンフィス・グリズリーズ 27.2得点、5.5R、7.9A
3位R・J・バレット(SG/SF)ニューヨーク・ニックス 20.3得点、5.5R、2.9A
4位デアンドレ・ハンター(SF)レイカーズ→ホークス 15.8得点、4.3R、1.3A
5位ダリアス・ガーランド(PG)クリーブランド・キャバリアーズ 21.7得点、2.8R、8.1A
6位ジャレット・カルバー(SG)サンズ→Tウルブズ 4.4得点、3.8R、0.6A
7位コービー・ホワイト(PG)シカゴ・ブルズ 8.4得点、2.6R、1.8A
8位ジャクソン・ヘイズ(C)ホークス→ペリカンズ 5.2得点、3.0R、0.7A
9位 八村塁(PF)ウィザーズ→レイカーズ 13.0得点、4.3R、1.2A
10位キャメロン・レディッシュ(SF)ホークス→ニックス 8.4得点、1.6R、1.0A
11位キャメロン・ジョンソン(SG)Tウルブズ→サンズ 13.1得点、3.9 R、1.7A
12位PJワシントン(PF)シャーロット・ホーネッツ 15.4得点、4.7R、2.4A
13位タイラー・ヒーロー(SG)マイアミ・ヒート 20.8得点、5.9R、4.4A
もちろんチーム事情やケガの状況により個人成績は浮き沈みするものだが、八村のスタッツより見劣りするのは、カルバー、ホワイト、ヘイズ、レディッシュぐらい。そして八村を含む5選手が新人としての今季最終年ながら来季の契約を勝ち取っていない。またもっとも見劣りするカルバーに至っては、すでにGリーグとの2ウェイ契約となっており、もはやNBA残留さえ危ぶまれる。もはやこの上位選手の中で、下から5番目の成績しか上げられない八村に、放出の話題が持ち上がるのは、不思議ではなかった。日本のマスコミがもてはやす「活躍」としては見られていなかったのが実情だ。
■カイル・クーズマの加入で浮いた八村
特に21年シーズン、ウィザーズはレイカーズからカイル・クーズマを獲得。八村不在の間にスタメンの地位を手に入れた。そもそもクーズマはレイカーズにて1年目から1試合平均16.1得点、18.7得点と活躍をみせながら、19-20シーズンからアンソニー・デービスを獲得したため、はじき出される形でウィザーズに着地。今季も八村とまったく同じポジションで21.8得点、7.6 リバウンド、4.0アシストとその存在感を見せつけている。本来、これがフランチャイズ・プレーヤーとしてチームが八村に期待する数字だろう。
NBAの各チームのロースター数は15。スターティング5を考慮すると、各チームには各ポジション3人が最多となる計算だ。そんな中、クーズマに加え、同じポジションをカバーできるクリスタプス・ポルジンギス、さらに八村と出場を分け合うデニ・アブディヤもおり、八村は今季難しい立場におかれていた。それがゆえにチームも22年中の八村との契約を更新を見送ったのだろう。
■今回のトレードの勝者はレイカーズか
一方、今季も優勝候補のひとつに上げられていたレイカーズも現在ウエスト・カンファレンスで12位と低迷。キング、レブロン・ジェームズ、八村の元同僚ラッセル・ウェストブルック、米代表デービスとビッグ3を擁しながら……。しかし、これも皮肉というもの。クーズマ放出の原因ともなったデービスがケガで長期離脱。フロントのロースターが手薄となったレイカーズにとって、スリーポイントも武器になりえる八村は、まさにチームに必要なピースだった。
スタッツを眺めてもジェームズ、ウエストブルックに次ぐ得点源となることが期待されるだろう。果たして八村は、NBA王者17度ながら低迷する名門レーカーズをプレーオフに押し上げる原動力となるのか。
シカゴのヒップホップ・ミュージシャン、Ramaj ErocはTwitter上で、このトレードの勝者は誰かアンケートを実施。日本時間24日6時までの時点で、72.1%が「レイカーズ」と回答している。
もちろん、これまでもトレードなど移籍により、花開いた選手は数多い。八村も移籍を機に、ロール・プレーヤーから真のスターティング・メンバーへと変貌を遂げるのか。
レイカーズの次の試合は日本時間25日正午スタート。八村の活躍は、きっとここからだ。
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著者プロフィール
たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー
『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨーク大学などで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。
MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。
推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。
リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。