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【Bリーグ】「バスケで水戸を元気に!」、茨城ロボッツのオールスターを巡る冒険とこれからの課題……

【Bリーグ】「バスケで水戸を元気に!」、茨城ロボッツのオールスターを巡る冒険とこれからの課題……
アリーナゲート 撮影:中田由彦

「この景色を見たくて、頑張ってきたんだな」。

水戸を舞台のBリーグオールスター戦がB.BLACKの勝利で幕を閉じたとき、茨城ロボッツ堀義人オーナーはこう呟いた。この夢舞台が再び水戸に巡ってくるのは20年後か25年後か……。しかし、ここから再開されるのがロボッツとしての戦いの道だ。

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■ロボッツが変わったのは堀オーナーから

幹線道路に面したビルボード 撮影:中田由彦

Bリーグオールスターが水戸で開催されたのも第一義的にロボッツが存在したことだ。リーグに属するチームとホームアリーナの存在なくしての開催はありえないのは言うまでもない。

しかしBリーグ発足からわずか6年でオールスターを水戸に迎えることができようとは、初めてロボッツとコンタクトした時を思うと信じられない。それだけ凝縮された時間の中を彼らはトップスピードで走り抜けてきた。

2013年に「つくばロボッツ」として発足したチームは運営母体の度重なる変遷、本拠と頼んだつくば市のアリーナ建設が撤回されたため、水戸市をホームタウンに加えて事務所を水戸の郊外に置くことになる。私自身CMプランナーとして初めて事務所を訪れたとき、スタッフは外から来た人間とどう接していいのかわからないというのが手に取るようにわかった。組織としても人材としても未熟、そういうレベルに感じたのだった。

ほどなくロボッツは事務所を水戸の「ど真ん中」に移す。ロボッツが変わり始めたのはその頃だろう。それを急加速させたのがロボッツのオーナーとなっていた実業家の堀氏による「いい意味での現場介入」だ。故郷・水戸の衰退を憂い都市再生のプロジェクトを立ち上げ、ロボッツもその素材の一つに選んだ堀オーナーは公の場にもロボッツのユニフォームを着用して自らを広告塔とし、また街頭でのPR・観客動員活動の先頭にも立った。

「あの堀くんが……」。私が彼を知ったのは、互いの存在を知らず共に水戸を離れてからだ。

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その後ビジネスマンとして頭角を現してきた彼の名を目にしたときに、ほんのわずかな接点を持ったことのある彼の記憶が急速によみがえってきた。彼にとってはすでに遠い記憶となっていただろうが、私にとっての約40年ぶりの再会は意外と早くやって来た。

2017-18シーズンの開幕初頭、アリーナで観戦を終えたあとに「みんなで勝利の祝杯をあげましょう」との堀オーナーの呼びかけがSNSのタイムラインに表示された。図々しくも祝勝会に加わったのは言うまでもない。

B1への昇格を目指して試合と集客活動は年を追うごとに熱を帯び、2020-21のプレーオフでは準優勝を得て、ついにロボッツは宿願の昇格を果たした。

ロボッツピンズ 撮影:中田由彦

■B1昇格後の本当の課題が……

オールスター後、事業としてのプロスポーツをめぐる戦いはすでに始まっている。クラブ分配金の変更がされたサッカーJリーグも同様だ。

試合と事業の両方で勝ち残るためには、クリアしていかねばならない課題は常に存在する。第一は「新Bリーグ構想」での観客動員のハードルだろう。ロボッツがホームとするアダストリアみとアリーナのキャパシティは5000。平均4000人以上の動員が必須の条件とすれば、毎回キャパシティの80%を確保しなくてはならない。

あるロボッツ・ブースターが語ってくれた。

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「正直、B2時代より熱は冷めているかもしれない。最近はほとんどアリーナに足を運んでいない。だって、勝つところが見たいじゃない?決して弱いとは思わないけれど、何かが足りないんだ」

こうして足の遠のくブースターもいる。それ以上のスピードで新しいブースターを常に補充していかねばならない。そのためには、現状のファン・ブースターの「外」に向けロボッツとバスケットボールの価値をリーチさせる必要がある。その「外」にある、街の声も聞いた。

「選手の名前がわからないから、楽しめそうになくて・・・」。
「街の中でたくさんオールスターって見かけたけれど、何のオールスターなのか分からなかった」。

ロボッツに限らずBリーグはSNSなどの活用が巧みだ。反面アナログ活用に弱さも感じる。それが「選手の名前を知らない」「何のオールスターか分からない」という声となって現れているのだろう。

プロにとって一番大事なのは『観客動員』と水戸で語ったのは、日本トップリーグ連携機構川淵三郎会長だ。
◆【スポーツビジネス】「やり残したことがある限りは続ける」と川淵三郎会長が水戸で怪気炎 茨城ロボッツはBリーグ改革とともに成長するのか

今アリーナに足を運んでくれるファン・ブースターは、完全に満席となったとしても「数えられない人数」ではない。だが、その外側には容易には数えられない人たちがいる。

「その外側の人たちに響く言葉(手段)を持っていますか」。

そしてそれは、さらなる観客動員を求められることになった今も変わらない。

タイムアップの瞬間 撮影:中田由彦

ドットエスティBリーグオールスターは1月14日に閉幕したが、水戸では翌15日までがオールスターディだった。水戸市南町のM-SPOではクロージングイベントが開かれ、B.BLACKの選手として出場したロボッツ平尾充庸キャプテンをねぎらうために多くのブースターが集まった。

その進行を務めたのが川﨑篤之(あつし)氏だ。元水戸市議会議員、コミュニティFMラジオパーソナリティーという経歴の川﨑氏のトークは主役の平尾選手やロボッツ西村大介社長を巧みにリードしつつ、集まった観衆を飽きさせない。

トークショー(左から川崎氏、平尾選手、西村社長)  撮影:中田由彦

もちろん川﨑氏もロボッツのスタッフの一員となっている。川﨑氏だけではない。堀オーナーのもと才気あふれる人材の集結したロボッツは課題を乗り越え、新体制下のBリーグでもトップディビジョンでゲームに臨むだろうと思われる。

オーナーを同じくする茨城放送の玄関。ロボッツのオフィスは2Fに 撮影:中田由彦

「バスケで日本を元気に」はBリーグの理念だが、「ロボッツで水戸を元気に」は、今後もさらに続いて行くに違いない。

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著者プロフィール

中田由彦●広告プランナー、コピーライター

1963年茨城県生まれ。1986年三菱自動車に入社。2003年輸入車業界に転じ、それぞれで得たセールスプロモーションの知見を活かし広告・SPプランナー、CM(映像・音声メディア)ディレクター、コピーライターとして現在に至る。