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【センバツ】21世紀枠出場を果たした松山東高校野球部OBだからこその感慨と提言 特別枠の是非

【センバツ】21世紀枠出場を果たした松山東高校野球部OBだからこその感慨と提言 特別枠の是非
甲子園を行進する愛媛の名門・松山東高校(旧制・松山中学) 夏目漱石『坊っちゃん』のモデル校としても有名 撮影:篠原一郎

第95回選抜高校野球大会の出場校が27日、21世紀枠も含め全36校がでそろった。

私の母校・松山東がセンバツ出場を果たしたときに開会式で感動に包まれたことは以前も書いた。

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■「この制度はフェアではない」

21世紀枠での出場だった。

母校はその半年前2014年秋の四国大会に出場、私は東京から夜行バスで香川県まで観戦に足を運んだが1回戦で徳島代表の鳴門に完敗した。この時、完投勝利を挙げたのは後にドラフト1位で日本ハムに入団した、当時の1年生河野竜生投手だった。母校は四国大会初戦で姿を消したものの、21世紀枠の候補には最終の9校に残り、15年1月21日、めでたく21世紀枠の3校に選ばれたのであった。

センバツ出場の喜びを爆発させるOB篠原一郎(右) 提供:篠原一郎

この発表の日、私は天の配剤とも思えるような大阪出張を命じられ、そこでの仕事を終えて毎日新聞ホールの選考会場に向かったのである。もちろん部外者なので、「21世紀枠の9校に残っている松山東OB会役員の者です」と名乗っても入れてもらえず、近づくことも許されなかったが、会議が終わると「おめでとうございます」という言葉とともに出場校が列挙された紙を渡された。

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四国地区からは秋の四国大会優勝校の英明、準優勝校今治西の2校が四国代表から選ばれ、21世紀枠で松山東の3校となっていた。私の目を射たのは、秋の大会で準決勝敗退の高知と明徳義塾の2校の名前が「補欠校」の分類で記載され、準々決勝で敗退した鳴門は補欠校にも入っていないという事実だった。

愛媛新聞は号外を発行、OBも野球部以外の卒業生たちも大歓喜に浸ったけれども、私がまず思ったことは、「この制度はフェアではない」ということだった。なにしろ四国大会で2勝した高知も、1勝した明徳義塾も鳴門も出ていないのに、鳴門に完敗した松山東が選ばれたのである。センバツは夏と違って2回しかチャンスがなく、これで卒業まで甲子園の土を踏むことができない選手たちに申し訳ないという思いだった。

当時の四国大会トーナメント表 提供:篠原一郎

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■21世紀枠出場校に負けたら「不覚」な理由

現地に行ってみると校名入りの記念ペナントやボールにも「21世紀枠」と記されおり、「本当は野球の力は出場校にくらべて劣るのはみんなが認めているけれども特別に選んでやっている」と言われているような気がしたものだ。

松山東高校センバツ出場記念ペナント 提供:篠原一郎

実際に21世紀枠の学校に敗れた高校の監督が試合後のインタビューで「21世紀枠の学校に負けて末代までの恥。腹を切りたい」と発言して大騒ぎになったことがある。メディアに言うべきことばではなかったかもしれないが、熱心な高校野球を含め多くの関係者の中に一般出場校が21世紀枠出場校に負けたら「不覚」という思いがあるのは明らかだった。

数字の上でも、2001年に導入されてから昨年まで、21世紀枠出場校の通算成績は18勝58敗、18勝のうち3つは対戦相手も21世紀枠で挙げた勝利である(2020年夏に甲子園で行われたセンバツ出場校による交流試合は数えない)。

ところが、後輩たちは驚くべき大健闘をやってのけた。後に巨人に入団する大江竜聖擁する二松学舎大附に初戦で競り勝ち、2回戦でもその年の準優勝校・東海大四に2-3で惜敗という成績を残した。この戦績で勇気を得たこともないわけではないが、あながちこの制度も主催者にとっては無意味でもなかろうと思う。

松山東が甲子園常連校、東京の二松学舎付属を破った金星を伝える「日刊スポーツ」 提供:篠原一郎

■集客に貢献“バス67台の大応援団”

記憶している高校野球ファンもいるだろうが、1回戦では地元・愛媛からバス67台という大応援団が甲子園に集結した。同窓会関東支部も夜行バスを1台出しており、私はこのバスに3度乗って開会式と2試合を観戦したのである。このバスの台数の記録を主催者やメディアが取っているとは思えないが、この年以後春も夏も注意して聞いていてもこの台数を超える応援団は聞いたことがない。

明治初期に各都道府県にできた公立の旧制中学は戦前までは野球部も強かったのだが、公立高校が甲子園に出る割合は減る一方である。仕方がないことだ。21世紀になってその傾向は顕著になり、それと同時にこうした学校が救済され、そういう学校がたくさんの観客を集めて、理想的には健闘して大会を盛り上げるとなれば、主催者にとってそれもひとつの価値である。ただ勝敗を決する場を用意するだけが主催者の目的ではない。

■長短ある制度に見直しの機会を

特にセンバツは第1回から招待試合である。野球に限らず、ゴルフのスポンサートーナメントではもっと多くの割合で主催者推薦やスポンサー推薦があり、日本オープンでも特別承認選手という枠がある。テニスのグランドスラムですらトーナメントディレクターによるワールドカードがあるものだ。

21世紀枠でも4強まで進出した例が2校あるので、今回も期待したいところである。ただし、2015年の松山東が二松学舎大附を破って以降、21世紀枠の高校は相手も21世紀枠という対戦を除いて全敗が続いている。3校は多いのではないかという気がしないでもないし、21世紀同士の対戦は避けたほうが正確な戦績を測ることができるのではないかという気もする。いずれにしても21世紀も残り78年となり、いずれこの名称は変えなくてはならないわけで、この際名称も含めて見直してはどうかという外野からの提言はしておきたい。

一方で、あの年の鳴門と高知と明徳義塾に対する気の毒な思いは消えることはない。

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著者プロフィール

篠原一郎●順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授

1959年生まれ、愛媛県出身。松山東高校(旧制・松山中)および東京大学野球部OB。新卒にて電通入社。東京六大学野球連盟公式記録員、東京大学野球部OB会前幹事長。現在順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授。


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