【ラ・リーガ】なぜスペインには圧倒的なFWが生まれないのか 佐伯夕利子さん・前編 「意思決定」のプロセス

 

Advertisement

【ラ・リーガ】なぜスペインには圧倒的なFWが生まれないのか 佐伯夕利子さん・前編 「意思決定」のプロセス
選手に指示をする佐伯夕利子さん 写真:本人提供

日本サッカー界における絶対的なストライカー不足は長年の課題とされてきており、Jリーグは外国人選手が多くのチームで得点源を担い、海外においても日本人がエースに君臨するケースはまだまだ少ない。

これは2010年にワールドカップを制し、“サッカー強国”という見方がされるスペインにおいても同様で、中盤にテクニックの高い名手を数多く輩出する一方で、前線に世界的なストライカーは多くない。

今回は長年スペインの育成に携わってきたビジャレアルCF佐伯夕利子さんがこの問題について自身のブログで興味深い持論を展開。以下、佐伯さんの許諾を得て「佐伯夕利子オフィシャルブログ PUERTA CERO 〜この世にたったひとつのとっておきの私の道〜」からの転載とした。

◆佐伯夕利子オフィシャルブログ「PUERTA CERO」

Advertisement


■意思決定とは「選択するという行為」

仲間たちと雑談をしていて「なぜ我われスペインには得点力のあるFWが生まれないのか」という話しになった。

スペインにおける「フォワード不足問題」は、少なくとも私がこの国にきてからずっと議論されている永遠の課題だ。

私たちは雑談しながら、まずある立脚点を見つけた。

「意思決定」のプロセスにヒントがあるのではないか…という点だ。

Advertisement


「意思決定」とは、ある状況下において選択肢の中からひとつ「選ぶ行為」である。「選択をするという行為」が意思決定ともいえるだろう。

成長過程もしくは教育課程において、この「選択をするという行為」がより寛容に認め許され機会や環境を与えられている文化圏からは、より得点力があるFWが生まれているのではないか、というのが仲間たちの仮説だ。

人間には視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった五感と呼ばれるものがある。

フットボール選手の意思決定プロセスは、まずこの五感から知覚収集される情報を内的に処理するところから始まる。

また選手には下地として、普段のトレーニングやテクニカルミーティングなどといった体系化された学習から得た知識がある。

こうしたコンテクストに加え、その日、その時の身体的・精神的状態も影響しながら、選手は直感的にアクション(行動)を起こす。

情報を収集・察知する

状況を認知・認識する

解決に導かれるであろう選択肢を列挙する

そこから(その選手にとって)最適なものをひとつ選択する

いざ行動(アクション)

Advertisement


意思決定を行う行為の当事者は、こんな一連の意思決定プロセスを経ている。

そもそも標準装備がハイスペックであるトッププロは、最適な選択をする能力にも優れている。さらに技術・フィジカル的なコンディションも良いので、彼らはこれら一連の過程を1秒未満で実行する。

【キープ → ビルドアップ → フィニッシュ】
・ボールを運ぶために保持する
・シュートを打つためにボールを運ぶ

これは言うまでもなくフットボールの原則だ。だが、フットボールにおいて、この意思決定プロセスを他のどんな状況よりもより「超・最速」「超・高性能」「超・高精度」で行わなければならないのは、「フィニッシュ」=「シュートを打つ」というシーン(状況)であるという点に改めて立ち返ってみたい。

■外野からの「指示」が生む弊害

さて、そのどんな状況よりもより「超・最速」「超・高性能」「超・高精度」で行わなければならない「シュートシーン(状況)」における私たち外野(指導者、観客、ピッチにいる仲間たちも含め)のあり方はいかがなものだろう。

試合中「チャンス!」と見ては、ベンチから浮き腰ぎみに立ち上がりながら「シュート!!」「打て!!」なんて叫んではいないだろうか。私はちっちゃな声で言っている(笑)。

こうした外界からの情報を選手が「無意味な情報」として認知スルーしてくれればパフォーマンスにあまり影響を及ぼさないかと思うが、その選手にとって意味を持つ存在の人(両親や監督など)の場合、「その情報を検証しようスイッチ」、もしくは「その人に従おうスイッチ」が入ってしまい、迷いや判断の遅れ、または意思決定の変更を誘いミスにつながるかもしれない。

外野からの「指示」(指示と行為者が認知するもの)は、選手の意思決定プロセスを阻害する大きな「電波障害」を生む可能性があることを認識したい。

「決定力に欠ける」「決定的チャンスをものにできない」なんてコメントは聞き飽きたし、「じゃあ、どうすれば良いのか」と苛立つ思いに駆られたことがあるのは、私だけではないだろう。

後編では、家族構成・宗教的背景・政治体制という切り口から、「従う人間」を育ててきたスペインのコンテクストを検証してみようと思う。

◆なぜスペインには圧倒的なFWが生まれないのか 佐伯夕利子さん・後編 「フィニッシュは他者が決めない」

◆サッカー指導者のライセンスは不要なのか… 「おもしろいフットボール指導者に出逢える」と佐伯夕利子さん

◆【ラ・リーガ】ビジャレアルCF・佐伯夕利子さん 前編 人口5万人の“田舎街”にサッカークラブが根付く理由「フットボールだけでは得られないもの」

著者プロフィール

佐伯夕利子(さえき・ゆりこ)●ビジャレアルCF、Jリーグ元常勤理事、WEリーグ元理事

スペインサッカー協会ナショナルライセンス。UEFA Proライセンス。03年スペイン男子3部リーグの監督就任。04年アトレティコ・マドリード女子監督、育成副部長。07年バレンシアCF強化執行部に移籍、国王杯優勝。08年ビジャレアルCFと契約、U19やレディース監督を歴任。18〜22年Jリーグ特任理事、常勤理事。著書に『教えないスキル 〜ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術〜』(小学館)。

おすすめPR

META POG

Advertisement


Advertisement

まだデータがありません。