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【MLB】ピッチクロック…新ルール導入による是非について考える

 

【MLB】ピッチクロック…新ルール導入による是非について考える
オープン戦で投げあいとなった大谷翔平、藤浪晋太郎ともにピッチクロックの影響はなかった (C) ロイター

近年MLBでは次々とルールや試合の運営に関して変更を打ち出している。

日本の野球界はプロとアマで若干の違いがあるが、リクエスト(MLBではチャレンジ)制度、コリジョンルール、申告敬遠制度などが導入されてきた。

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■バスケ、サッカー、バレーも大胆なルール変更

サッカーなど多くの競技は国際競技連盟(いわゆるIF)がそうしたルールの改定を推進して全世界に通達、全世界がそれに従うけれども、バスケットボールや野球のように、アメリカのプロリーグが人気と競技レベルがともに最高峰である場合、リーグが主導していくことが多い。

バスケットボールで24秒以内にシュートを放たなくてはならないルールも全米プロ・バスケットボール・リーグ(NBA)が定めた。リードしているチームが味方同士でパスを続けてボールをキープ、相手に渡さないことを続けていれば失点することはないが、シュートをすれば相手にわたるリスクが必ず生じる。リードしたまま、ボールをキープし続ければ、当然退屈な試合になる。それを是正するルール導入だった。ファンから見れば大変素晴らしい変更で、国際バスケットボール連盟(FIBA)がそれを他の国際大会で導入するのはずっと後のことである。

IFがルールを変えた事例で私が知っている大きなもののひとつが、サッカーのバックパスである。1992年にスウェーデンで開催されたサッカーのヨーロッパ選手権を仕事で何試合か見たときに、ゴールキーパーへのバックパスの多さにブーイングが頻発した。私がサッカーの国際試合をスタジアムで見たのが初めてだったので、それが目に余るレベルのものかは今もはっきりとはわからないのだが、驚いたことにその年にFIFAはバックパスをゴールキーパーが手で扱うのを禁止して今に至っている。

チームにとっては必要な作戦なのかもしれないが、ファンの不満を解消するための変更だと私は解釈している。

バレーボールでは、かつて15点先取が1セットで、サーブ権を持たない限りサイドアウトが続くルールだった。これが完全ラリーポイント制で1セット25点に変わったのは1999年からである。サイドアウトの繰り返しによる試合時間のあまりの長さがテレビ向きではないという判断だったと記憶している。これも国際バレーボール連盟(FIVA)による決定であり、アメリカのプロリーグが変えたわけではない。

■コミッショナー支持派

こうした変更は時に選手を守るためだったり、ファンのためだったり、はたまたテレビの都合に合わせたり、そのときどきでよかれと思って踏み切るわけで、総じてその意図を聞かせてもらえれば納得がいくものである。

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たとえば、コリジョンルール。前から私は明らかなアウトなのにボールを持った捕手に体当たりする走者に対しても、明らかにセーフのタイミングなのに本塁を完全にふさいで送球を待つ(つまりボールを持たないブロック)捕手に対しても、これはおかしいとずっと思っていた。併殺を防ぐためにあらぬ方向にスライディングをする一塁走者も同様である。近年死語になったがラフプレーというものだ。それがコリジョンルール導入ですべて禁止され、私は快哉を叫んだものである。

これで選手のケガが格段に減ったと思う。

近年申告敬遠やワンポイントリリーフ禁止など、矢継ぎ早に打ち出される時間短縮のための変更については、野球をやってきた者の立場からいうと「野球はサッカーやバスケットボールのように時間に制限されない競技だし、テニスや卓球やバドミントンのように一定の点数に届くまで終わらないスポーツではない」と言いたくなるけれども、MLBコミッショナーはとにかくベースボールの人気を落としたくないという一心であるのは理解できる。牽制球や四球などの時間がベースボールのファンを減らしているという分析である。

WBCではピッチクロックの適応はない

それも含めて野球なのだから、いつも動いている必要はない、静と動が両方あってこそ野球だと私も思うけれども、それがわからない人は野球を見なくて結構だというところまで開き直ることは私にはできない。野球はおもしろいものだ、と多くの人に分かってほしい。そう思うと、今年MLBで導入されるピッチクロック制度に私は反対ではない。しばらくは投手も打者も戸惑うことが多いだろうが、慣れで対応できると思う。

実は、投手がテンションを上げてモーションを起こそうとするときに打席を外す打者は好きではない。1993年6月、ヤクルト・スワローズのルーキー伊藤智仁が読売ジャイアンツを相手に8回まで零封。9回、篠塚和典に二度も打席を外されサヨナラ本塁打で敗れたことが思い出深い。ことさらインターバルを長く取ったり、セットポジションを取ってもなかなかモーションを起こさない投手も好きではない。

反対する野球ファンも多いのは理解できるが、私はMLBコミッショナーの肩を持つ。

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先発登板した大谷翔平が、降板後も打席に立つ「大谷ルール」も支持されるべき変更のひとつだろう。

ただし、試合時間を短くするためにたとえば野球は8イニングにする、などというレベルに達したら「ちょっと待ってくれ」思う。時短の時代とは言え、そんな顛末とならぬことを願う。

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著者プロフィール

篠原一郎●順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授

1959年生まれ、愛媛県出身。松山東高校(旧制・松山中)および東京大学野球部OB。新卒にて電通入社。東京六大学野球連盟公式記録員、東京大学野球部OB会前幹事長。現在順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授。