株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は3月3日、Bリーグ・川崎ブレイブサンダースが使用する新アリーナに関する概要発表会見を開いた。
◆群馬クレインサンダーズのホーム名称は“OPEN HOUSE ARENA OTA” 「どんな光景が見えるか楽しみと五十嵐圭
■主要ターミナル駅から徒歩数分のアリーナ
場所は京急およびJR川崎駅から東に徒歩で数分、多摩川沿いで、現在は自動車教習所の「KANTOモータースクール川崎校」のある場所に建設される(同スクールから土地を借りる形となる)。
DeNAによればJR川崎駅と京急川崎駅の1日の平均乗降客数(2019年の数字)はそれぞれ約43万人、13万人となっている。
収容観客数は約1万人となる予定のアリーナの仕様などの細かい点についてはこれから詰めていくとのことだが、東京都心や羽田空港からも近いこれだけの主要ターミナル駅のアリーナが徒歩圏内に建設されるというのは、21年に開業の沖縄アリーナ(沖縄県沖縄市)や先行して概要が公表されているほかの新アリーナと比べても大きなセールスポイントとなる。
ブレイブサンダースが新アリーナ構想を打ち出したのは、同チームのオーナーシップが東芝からDeNAへと継承された18年だったが、新型コロナウイルスによる影響もあってか、建設地を含めた概要の発表は今回まで遅れた。そのなかで、同チームの元沢伸夫社長は、候補地が駅からのアクセスは良いが、アリーナ周辺の付帯イベント等を催すことのできるスペースはさほど確保できない場所と、駅からのアクセスはもう少し離れてしまうが周辺のスペースは確保できる場所の2カ所にまで候補を絞っているという話はしていた。
会見で配布されたパースを含めた資料やKANTOモータースクール川崎校の敷地面積(約12,400㎡)を見ただけでは敷地の大きさが十全にわからなかったこともあり、私は会見後、同予定地へ足を運んでみた。少し遅れて元沢氏もそこを訪れたが「敷地自体はそこまで広くないんです」といったことを話していた。
しかし、その場所から京急川崎駅は目と鼻の先。JR川崎も数百メートルの場所にある。駅からのこの近さが、多少の敷地の狭さを上回ったとでも言えよう。
「この2年間くらい、2つの候補地の両方とも、じつは『駅チカ』の場所でした。ビッグターミナルから近いという意味では両方とも大変、魅力のある場所でお話をさせていただいておりました」。
■川崎に「アリーナシティ」誕生か
会見中、元沢氏はそのように話し、こう付け加えている。
「もともと川崎駅でできるのであれば、われわれとしてももう最高に幸せだなと思っておりました」。
ちなみに、京急川崎駅から新アリーナの場所へどれくらいの時間がかかるか計ってみたが、同駅中央口から約5分で到着した。JR川崎駅からだと約8分だ。京急川崎駅と同施設はペデストリアンデッキで結ばれる可能性も高く、となれば所要時間はさらに短くなりそうだ。
今回の発表は、新アリーナについてのそれというよりは、実際には、アリーナを中心としたエンターテイメント施設プロジェクトについての発表という側面のほうが強かった。
概要によれば、アリーナのはいる横長の建物とその横に縦長のビルが建つことになっており、この2つで商業施設や宿泊施設、飲食施設、公園機能等を備えることになっている。Bリーグのホーム試合数は30ほどでしかない。が、試合日だけでなく365日、なにかしらが催され、つねに賑わいが生み出される「アリーナシティ」を作り出すということだ。
同施設にはまた、スケートボードやダンス、3X3バスケットボールなどができるエリアも整備され、若者文化の発信地としての役割も担うとのことだ。
会見には川崎市の福田紀彦市長も出席したが、同プロジェクトはDeNAと京急が主体となって共同開発をしていく。行政のサポートを受けながら建設される「官・民」の施設ではなく、こちらはより施設運営での自由度の高い民設のそれとなる。
同じDeNAグループのプロ野球・横浜DeNAベイスターズは、16年に友好的TOBで横浜スタジアムの運営会社となり、球団とスタジアムの一体経営体制へと移行し、赤字体質だった経営を刷新し、魅力あるスタジアム環境を作り出しながら屈指の人気球団となり、黒字化に成功している。同時に、同スタジアムを中心とした関内地域一帯の新しいまちづくりにも取り組んでいる。
◆【後編】ブレイブサンダースが「駅チカ」新アリーナ建設へ 川崎球場のグレーな印象一掃、アーバンな街の象徴なるか
◆マヨネーズご飯からの逆転人生 川崎ブレイブサンダース元沢伸夫社長 前編 「すべての仕事が楽しい」
◆河村勇輝がスキルズ・チャレンジで史上最速を記録し優勝 オールスターDAY1
著者プロフィール
永塚和志●スポーツライター
元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。