【スポーツビジネス】WBC表彰式での記念Tシャツに見た優勝セレモニーのユニフォーム露出問題

 

【スポーツビジネス】WBC表彰式での記念Tシャツに見た優勝セレモニーのユニフォーム露出問題
ユニフォームの上から優勝記念Tシャツを着用する大谷翔平(C)Getty Images

ワールド・ベースボール・クラシックWBC)優勝の余韻が冷めないうちに、読者に注目しておいてもらいたい観点がある。

選手が着用するユニフォームについてだ。これはどの競技でも気になっているが、個人競技ではユニフォームと言わないので、選手がプレーするときに着る「競技服」とここではしておこう。

WBC決勝戦直後にマウンドの輪がほどけかけたころ、スタッフが持ってきた優勝記念Tシャツを侍ジャパンのメンバーが「競技服」の上から手を通し始めたのに気がついた人は多かったと思う。

ナインがそのTシャツ姿のまま優勝メダルを首にかけてもらい、次に特設ステージに上がって再度歓喜を爆発させたシーンも、あれだけの視聴率を取ったのだから、目に浮かぶ人も多いだろう。

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■優勝記念Tシャツの是非

近年、大リーグでも地区やリーグやシリーズを制するたびにあのようなTシャツを配られることが多い。それは日本のスポーツ界でもときどき見受けられ、昨年、バスケットボールBリーグで優勝した宇都宮ブレックスも、そのTシャツで集合写真を撮っていた。

前職の経験から、チームを一年中支えてきたメインスポンサーである栃木銀行の担当者は、その日以来世の中に出回る大切な写真に「競技服」の胸についている栃木銀行ロゴをTシャツによって覆われても手放しで祝福できたのか、とても気になった。

サッカーではワールドカップを見ても天皇杯を見ても、選手は「競技服」でステージに上がり、トロフィーを掲げている。アルゼンチンのメッシだけはカタールの黒い衣装を渡されていたが、心中はどうだったか。こちらも物議を醸し出したのは記憶に新しい。

自身初のW杯を掲げたメッシ(C)Getty Images

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さかのぼって、東京五輪で野球に限らず、すべての日本人メダリストはメダルセレモニーでアシックス製のオレンジ色の「ジャージ」(ウィンドブレーカー?)を着用していた。これはおそらく日本オリンピック委員会JOC)とアシックス社の契約だから着用しないわけにいかないのだろうが、選手たちの思いはどうだったか。

それぞれの競技団体(NF)にも多くの場合契約するウエアメーカーがある。野球と陸上競技は「競技服」もアシックス(WBCではミズノに変わっていたが)、バドミントンならヨネックス、体操ならミズノ、バスケットボールとスケートボードならナイキ、メダルは取れなかったがサッカーならアディダス、という具合である。観戦中になんとなく目に焼きついているという読者もいるかもしれない。

一年中いろいろな営業努力と品質向上を重ねて、NFと折衝した結果勝ち取ってきたオフィシャル・サプライヤーとしてのアパレルメーカーの権利だというのに、あのようにJOCパートナーによって、しかも注目度の極めて高いメダルセレモニーで自社のロゴが隠されるのは気の毒だし、なにより選手は「競技服」でメダルをかけて表彰台に上がりたいのではないかと思う。また、ファンもそんな姿を見たいのではないだろうか。

それを裏づけたとまでは言えないかもしれないが、東京五輪で優勝したブラジルのフィフティーンはブラジル・オリンピック委員会(COB)の契約メーカーであるPEAKのウエアを腰に巻き、ブラジルサッカー連盟(CBF)と契約してきたナイキの「競技服」のままメダルを授与されている。明らかな契約違反で大騒ぎになった。サッカーのチャンピオンのように、野球のチャンピオンにもユニフォームでメダルを首にかけてもらって表彰台にあがってほしかったな、というのが私の思いである。

■ベスト・ショットに選ばれたのは、選手の競技服姿

例年野球殿堂が野球報道写真展を開催しているが、2021年度のベスト・ショットオブザイヤーに輝いたのは、サンケイスポーツ新聞・松永渉平カメラマンが撮影した「金メダルの記念撮影」というタイトルの写真であった。

男子シングルス・車いすテニスで東京五輪金メダルの国枝慎吾(C)ロイター

しかし、その写真をよく見ると、選手は「競技服」でグラウンドに集合して日の丸をかかげてはいるが、メダルはかけてないのである。つまり厳密にはタイトルが誤っている。もちろん、オレンジ色のジャージでいちばん高い段に上がってメダルをかけている写真も展示されていたが、それは選ばれてはいない。

つまり、少なくとも野球殿堂を訪れて投票した人は、金メダルをかけたオレンジ色のジャージを着た写真よりも、「競技服」を着た金メダルをかけてない選手の写真を上位に選んだことになる。

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侍ジャパンのメンバーがTシャツを着たので私の想像は違うのかもしれない。スタッフが気を利かせたのかもしれない。

しかし自分がスタッフなら、スポンサー(特にロゴが見当たらなかった)などの縛りがないのだったら、Tシャツはメダルをかけ、グラウンドで集合写真を撮影した後で、シャンパンファイトの前に選手に手渡す。

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著者プロフィール

篠原一郎●順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授

1959年生まれ、愛媛県出身。松山東高校(旧制・松山中)および東京大学野球部OB。新卒にて電通入社。東京六大学野球連盟公式記録員、東京大学野球部OB会前幹事長。現在順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授。