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【スーパーGT】2023開幕戦 クラッシュ、トラブル続出のレインレース、ニスモZワンツーフィニッシュの奇跡

【スーパーGT】2023開幕戦 クラッシュ、トラブル続出のレインレース、ニスモZワンツーフィニッシュの奇跡
トラブル続出の開幕戦を制したMOTUL AUTECH Z (C) GTA

スーパーGT GT500クラスでは今季よりカーボンニュートラル燃料が使用される。それ以外は、大きなレギュレーションに変更はない。したがって、岡山国際サーキットで行われた開幕戦の焦点は、昨季まで2年連続で開幕戦に勝利している#14ルーキーレーシング・スープラ(大嶋和也/山下健太)の3連覇か、昨年ニューマシンのZを投入し徐々に強さを増したニッサン勢が開幕戦から強いのか、トヨタやニッサンと同様にエースチームを2台体制にする強化を図ったホンダ勢がその成果を発揮するのか…の3つに絞られる。

◆【実際の映像】レインレースとなった開幕戦 クラッシュあり、トラブルあり

■奇跡的ともいえるワンツーフィニッシュ

だが開幕戦は2日ともに悪天候に見舞われ、焦点は異なるものになった。

結果はMOTUL AUTECH #23ニスモZ松田次生ロニー・クインタレッリ)がポール・トゥ・ウィンを達成し、2位は#3ニスモZ(千代勝正/高星明誠)。2台はミシュランタイヤ・ユーザーで、昨季もレイン・コンディションで強さを発揮した。その2台がフロントローに並び、レースもワンツーのまま終えた――結果だけを聞けば、雨を味方につけたニスモの完全勝利に思えるだろう。

ところが実は2台ともに紆余曲折に満ちた、奇跡的ともいえるワンツーフィニッシュだったのだ。

決勝が行われた日曜日は朝から快晴で雨が降りそうな気配はなく、レースはドライコンディションでスタート。ところがすぐに雲は近づき、7周目あたりから降り始めた雨はどんどん強さを増し、一転してウェットレースへ。そして、その雨は中盤になるとやみ再びドライのレースとなるも、またすぐに強い雨が降ってくるという、ざっとそんな流れだった。

当然アクシデントは続出、2度のフルコースイエロー(FCY)とセーフティカー(SC)、2度の赤旗中断を経て、最後は3度目の赤旗をもってレース終了。おおよそ3度行われたピットインのたびに、大きく順位は変動した。

そんな中23号車は、ミシュランのレインタイヤが唯一苦手とする序盤のヘビーレイン時に7位まで後退している。そして、雨量が減ってきてから挽回に転じ41周目にトップに返り咲くも、まだ安泰ではなかった。なぜなら23号車は2度目の雨の際、まだ本格的に降るのかどうか分からないタイミングで真っ先にレインタイヤに交換しにピットに入った。これは正直なところ、ギャンブルとも思える判断だった。

3号車も序盤のレインタイヤへの切り替えの際、1周ステイアウトすることを選択したためSC後にピットインすることになり、ここで14位まで順位を落としている。こうなると通常は、優勝争いに復帰するのはかなり難しい。ここでチームが採ったのが、タイヤ交換と同時に給油も行い、ルーティンピットインの際のストップ時間を短縮させるという戦略だった。その後、雨量が少ない時間帯に23号車と同じくミシュランタイヤを武器にコース上で順位を上げ、さらにルーティンピットインで一気に3位に浮上。最後の最後にスタート順位の2位に復帰した。

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度々の大雨にスタンドでの観戦はさぞつらかったに違いないが、このドラマチックなワンツーフィニッシュの一部始終を目の当たりにできたのは現場にいたからこそ。また結果的に順当な1位、2位だったが、実はどのチームにも優勝の可能性があった。その意味では、応援し甲斐のあるレースだったとも思う。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。