【RIZIN/勝敗予想】安保瑠輝也、魔裟斗が「苦手なタイプ」と指摘する“ムエタイの伝説”ブアカーオ戦のゆくえ

 

【RIZIN/勝敗予想】安保瑠輝也、魔裟斗が「苦手なタイプ」と指摘する“ムエタイの伝説”ブアカーオ戦のゆくえ
安保瑠輝也(撮影:SPREAD編集部)

RIZIN.42」は6日、東京・有明アリーナで開催され、約1年4カ月ぶりに復帰する朝倉海、元Bellator世界バンタム級王者フアン・アーチュレッタ、現RIZINライト級王者ホベルト・サトシ・ソウザ、“キンズカズ”ことサッカー三浦知良の次男・三浦孝太らが出場する。

ここでは「元K-1王者」対決となる、安保瑠輝也ブアカーオ・バンチャメークの一戦を展望する。

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■RIZINで再びK-1ファイター対決

「MMAの団体」と言われるRIZINでキックの試合が組まれるようになったきっかけは、“神童”那須川天心の存在だ。那須川はキックルールで衝撃的なKOを連発し、時にはMMAルールに挑戦、キックの地位を飛躍的に向上させた。

そんな中、昨年キックボクシング界に激震が走った。

実現不可能とまで言われた、前人未到のK-1三階級王者・武尊と、那須川天心の試合をメインとした「THE MATCH 2022」が開催され、同時に「K-1 vs. RISE」の対抗戦も実現。昨年6月を終え、那須川はボクシングへ転向、一方の武尊はK-1を離脱し、新生K-1の主力選手の一部も他団体へ流れた。

RIZINキックは那須川不在のなか、元K-1の問題児・芦澤竜誠、元K-1スーパー・ライト級王者・安保、今大会へ参戦するベテラン・城戸康裕らを迎え入れた。今年4月には、一足先にK-1からRIZINへ移籍した「皇治 vs. 芦澤」も実現、立ち技も活気を帯びてきた。

そして再び、元K-1ファイターによるマッチアップが実現する。

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■賛否両論の安保は確かな実力者

元K-1王者・安保は、2021年9月「第2代K-1ウェルター級王座決定トーナメント」で、野杁正明にKO負けし戴冠ならずも、ゲーオ・ウィラサクレックや不可思ら、強豪ファイターを相手に勝利を挙げてきた。昨年6月には当時のRISE王者・山田洸誓に判定勝ちしている。

180センチの高身長ながらも、実は過去に62.5キロのウエイトで戦っていたこともあり、当時から将来を期待された男だ。

また、YouTubeでも格闘家の中では多くの登録者を持ち、良くも悪くも会見やSNSで賛否両論を巻き起こす。その度に何かと話題になるが、自身では“本物の強さ”を見せることをテーマに掲げている。

安保は試合決定の記者会見で「俺はRIZINを視聴者目線で見ていた。見ていて面白いのかなと思っているところがあって。なんか男同士ゴロゴロ寝っ転がって。俺はつまらないと思う」とコメント。MMAファンから大バッシングを浴びた。

しかし、公開練習では「プロモーション成功って感じ。俺としてはこの試合に注目を集めたかったので。本当に思っている部分もありますけど」と語っている。安保としては、天心不在のRIZINでキックをジャンルとして確立させたい思いも強いだろう。

■決定力の高いパンチと蹴りのバランス

安保の強さとはどのようなところにあるのだろうか。バックボーンは空手のため、二段蹴りや飛びヒザ蹴りなどの飛び道具もありながら、三日月蹴りやミドルも効果的に使いこなす。

関西を拠点とし、和歌山にあるCLUB esボクシングスタジオに通う。その効果は絶大で、K-1のリングではタフなムエタイ戦士、松岡力をボディブローでフィニッシュした。

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野杁の圧力を受け、KO負けを喫した過去から「圧力には弱い」と評するファンも多いが、それは相手の圧力が世界クラスだからだ。ほとんどの相手に対しては、一定の距離を保ちながら蹴りやパンチをバランスよくヒットさせ、ペースを手繰り寄せる。最近の試合では、先手で動く様子も見受けられ、更に洗練したスタイルとなっている。

その攻撃力で、ムエタイの伝説ブアカーオを沈めることができるか。

■40歳ムエタイ王者のコンディション

ブアカーオは、K-1 WORLDMAX世界一決定トーナメント2004年、06年王者、元WBCムエタイ世界スーパーミドル級王者、S-cup 2010世界王者。元Kunlun Fightムエタイ世界ミドル級王者など数々の戴冠歴を誇る。

2004年にK-1 WORLD MAXトーナメントでは小比類巻貴之をKO、決勝で魔裟斗を判定撃破し、優勝を果たした。格闘技好きにとっては、知らない人はいない伝説のファイターである。

一時は、試合から遠ざかっていたが昨年8月、ラジャダムナンスタジアムでRIZINのMMAファイター・三浦孝太とエキシビジョンマッチを行った。圧倒的なレベル差を見せつけ、10月には過去に4度対戦した佐藤嘉洋とエキシビションマッチで衝撃のKOを見せた。動きを見る限り、蹴りのパワーに関しては健在だ。

ただ、ブアカーオが40歳を迎えたことを忘れてはならない。今回の対戦相手は、伸び盛りの元K-1王者。ブアカーオが制覇した旧K-1とは運営の異なる新生K-1の元代表格だ。それだけに、一筋縄で攻略できる相手ではないだろう。

もっとも、ブアカーオはワンキャッチワンアタックのRIZINキックルールにも慣れている。旧K-1はワンキャッチワンアタック有りルールであったため、掴んでのヒザ蹴りを効果的に使っていた。今回の試合でもK-1 MAXでの試合経験や240勝(73KO)24敗13分と破格の戦績が生きてくる。

それだけに勝負論のあるカードだ。

■魔裟斗が語るブアカーオの強さ

新生K-1では安保の試合を何度も解説、現役時代にブアカーオと拳を交えた魔裟斗は以下のように語っている。

「旧K-1チャンピオン vs. 新生K-1チャンピオンの面白い戦い。(ブアカーオの)前に出る圧力 vs. 安保のスピード。どちらが強いかなっていう試合になると思う。この2人の戦い、相性からいって一番安保が苦手なタイプだと思う」。

まさに前述した通り、安保は自ら圧力をかけるタイプ、野杁やゴンナパー・ウィラサクレックにKO負けしたことがあるからだ。自ら圧をかけ、組んでのヒザ蹴りやミドルを強打するブアカーオは、安保にとっては脅威となるだろう。

続けて、魔裟斗はブアカーオについて、圧力は以前と変わらず“強い”との見解を示しているが、「スピードは昔と比べて落ちてる感じがした」とも指摘した。

ブアカーオのヒザ蹴りや前に出る圧力、これと安保のボクシングテクニックが交わった時、どのような戦いになるかが見どころだろう。

■安保がボクシングテクニックで攻略

ブアカーオの圧力は健在だろう。しかし、安保にはボディや顔面、アッパーと打ち分けるパンチ技術がある。ブアカーオの前進やヒザ蹴りに対し、被せる右フック、アッパーを当て、ぐらつかせる場面を作りだせる。

さらにはボディの打ち分けも勝敗のカギとなりそうだ。安保の左ボディフックや三日月蹴り、この攻撃で終盤までブアカーオを削り続け、判定勝ちを収めると予想する。

40代になり、衰えるのは魔裟斗が指摘するように「スピード」だ。見えない攻撃はダメージを受けやすく、KO負けにつながるリスクもある。最近戦ったMMAファイターの三浦孝太や、既に引退している佐藤嘉洋と比較しても、安保のキレとスピードは明らかに上回っている。

それだけに、ブアカーオに対し、安保は効果的な打撃が打てると予想する。

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文●吉田崇雄