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【スーパーフォーミュラ】王者不在の第4戦、リアム・ローソンが2勝目を挙げランキングトップ浮上

【スーパーフォーミュラ】王者不在の第4戦、リアム・ローソンが2勝目を挙げランキングトップ浮上
今季2勝目でラキングトップに立ったローソン (C) JRP

開幕2連戦でダブルポールを奪取し、2位、優勝という戦績でフィニッシュ。スーパーフォーミュラ3連覇へのスタートダッシュを決めた野尻智紀(チーム無限)が、第3戦はレース中の接触によりノーポイント。再びリードを広げるべく迎えたオートポリスの第4戦だったが、体調不良により急遽欠場となってしまった。2戦連続ノーポイントが確定したということだ。これは2連覇中にはなかった出来事。野尻で盤石だと思われていたタイトル争いは急展開を迎えることになった。

◆【実際の映像】スーパーフォーミュラ第4戦、三つ巴の戦いを制したローソン

■野尻智紀が体調不良で棄権

この週末は好天に恵まれ、ドライコンディションでの力と力との勝負となった。

グリッド前方は、ポールが第2戦から連続2位の坪井翔(セルモ・インギング)、2番手が開幕戦優勝のリアム・ローソン(チーム無限)、4番手には第3戦優勝の宮田莉朋(チームトムス)。優勝は野尻に続くランキング上位者によって争われた。いずれも今回勝利すればトップに浮上できる上、野尻に対し大量リードを築くことができる。レース中の3人のペース、バトル、ピット戦略に大きな注目が集まった。

そして3人のうち誰が勝ってもおかしくない展開となった中、他の2人と比較すると最も展開に恵まれなかったローソンが優勝し、ランキングトップに浮上。オートポリスでのレースは初めてだっただけに大いに価値ある勝利であるとともに、早くもデビューイヤーチャンピオンの可能性を感じさせた。

ローソンにとって最初の想定外がスタート直後で、好ダッシュを決めた3番グリッドの阪口晴南(セルモ・インギング)に前に出られてしまう。ペース的にはローソンの方が勝っていたがオートポリスは抜きにくいサーキットで、序盤ということで無理もできず、しばらくは3位をキープすることになった。

こうなるとアンダーカットを仕掛けて前に出たくなるところだが、タイヤ交換をともなう1度のピットインはルール上の義務であり、燃費的には終盤まで引っ張ることが可能。この日は路面温度が40℃近くまで達しており、タイヤに厳しいサーキットでもあることからタイヤマネージメントがカギを握ると予想されていた。前に出ることだけを考えて早めにピットインしてしまうと、後で逆襲を喰らう可能性も高くなる。

それでもローソンは13周目、アンダーカットに出た。そして5.6秒という迅速なピット作業でコースに復帰し猛プッシュを開始したが、ここで2度目の想定外の事態が生じる。タイヤのデグラデーションが気になるのか今回は後方でもピットインを引っ張るマシンが多く、この集団に追いついたローソンは第2ステイントに入って数周後には早くも、ペースを上げられなくなった。集団からようやく抜け出せたのが21周目。トップの坪井、2位宮田のペースはそう落ちておらず、この時点ではローソンの作戦は失敗に終わる可能性が高そうだった。

ところがそこから、坪井が25周目にピットインするまでにローソンは圧巻のペースアップで坪井を抑えることに成功すると、12周分フレッシュなタイヤの坪井に迫られるどころか、ギャップを築いていく。宮田はセーフティカーが入った30周目にピットインするも、坪井の後ろでコース復帰。ローソンにとって唯一の幸運がこのセーフティカーで、終盤にきて4周のセーフティカーランの間タイヤをセーブできたこと、そして宮田と坪井がリスタート後バトルになったことで逃げ切った。

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現在F1チームのレッドブルのリザーブドライバーで、正ドライバー候補一番手のローソン。かつてピエール・ガスリーも同じような立場でスーパーフォーミュラに参戦していたことを思えば実力が確かであることは間違いないと考えられたが、その真のポテンシャルが良く理解できた第4戦だった。

初のオートポリスで、この戦いぶりは賞賛に値する。次のSUGOもおそらくレース経験がないサーキット。4ポイント差2位の宮田、11ポイント差3位の坪井、15ポイント差3位の野尻と“魔物が住む”といわれる難コースでどんな戦いを繰り広げるのか。ローソンがF1に行く前の、生でその走りを観られる貴重なチャンスを逃さないでほしい。

◆【実際の映像】ハイライト スーパーフォーミュラ開幕戦、波乱の接触にエンジン・ストール続出

◆【実際の映像】新マシン、初参戦、開幕戦デビュー・ウィンのリアム・ローソン・インタビュー

◆国内トップカテゴリー50周年を機に高まる近藤真彦JRP新会長への期待

著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。

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