今週はいよいよ競馬の祭典・第90回日本ダービー(GI、芝2400m)。今年はクラシック二冠を目指すソールオリエンスが主役の1頭。これに待ったをかけるのが、タスティエーラやファントムシーフといった、雪辱を期す皐月賞敗戦組。加えて、青葉賞を制して勢いに乗るスキルヴィングや、京都新聞杯を制したサトノグランツなど、別路線組からも有力馬が揃い、頂点を目指す激しい戦いが期待される。
そんな中、皐月賞3着から巻き返しを期すファントムシーフが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。
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■ダービーで上位に来ない、臨戦過程と血統背景
皐月賞では1番人気に支持されたファントムシーフだったが、ソールオリエンスから0秒5差の3着に完敗。しかし、レースでは向正面で落鉄してしまい、重馬場で思うような力を発揮できなかった面も大きい。まともなら、勝ち馬と着差ほどの力差はないように思え、今回も有力馬の1頭に数えられるだろう。
2走前の共同通信杯では、好位から抜け出す強い勝ち方を見せており、東京コースに変わるのはマイナス材料ではなく、日本ダービーでの逆転を狙いたい同馬だが、この共同通信杯が、意外と日本ダービーとの関連性は薄い。
近年、皐月賞においては、共同通信杯組が多く活躍しており、過去10年の同レース勝ち馬から、2014年イスラボニータ、16年ディーマジェスティ、21年エフフォーリアと、3頭が皐月賞馬に輝いた。一方、2015年ドゥラメンテや、21年シャフリヤールなど、共同通信杯で敗れた馬が、のちに日本ダービーを制している例はあるものの、共同通信杯を制覇した馬で日本ダービーも制したのは、01年ジャングルポケットが最後。以降、勝ち馬は輩出しておらず、何とも不思議な現象だが、ファントムシーフにとっては好材料とは言えないだろう。
また、ダービー馬はダービー馬から、とはよく言われる格言だが、過去10年の日本ダービー馬のうち、10頭中6頭がディープインパクト産駒で、2頭がキングカメハメハ産駒と、これまではディープvsキンカメの覇権争いが繰り広げられてきた。
この両巨頭がクラシック戦線から姿を消し始めたものの、昨年は2014年ワンアンドオンリー以来となる、ハーツクライ産駒のドウデュースが制覇。ハーツクライ自身は日本ダービーは2着に敗れているが、ドバイシーマクラシックを制しており、芝2400mのGIウイナー。つまり、日本ダービー馬は芝2400mのGIを制していることが、近年は重要な要素となっている。
ファントムシーフの父ハービンジャーは、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSの勝ち馬で、すでに平地GI馬5頭を輩出している名種牡馬ではあるが、東京の芝2400mのGI(日本ダービー・オークス・ジャパンC)において、産駒の成績は【0.1.1.14】とあまり良績を残せていない。複勝圏内の2頭はいずれもオークスでの結果で、日本ダービーは【0.0.0.5】。18年に2番人気に支持されたブラストワンピースも5着に敗れており、あまり日本ダービー向きの血統背景とは言い難い。
今回は武豊を鞍上に迎えるファントムシーフ。昨年のドウデュースと同様、皐月賞3着→日本ダービー1着の再現を期待する方も多いことだろう。しかし、前走まで騎乗していたC.ルメールが、こちらよりもスキルヴィングを選んだという見方もできなくはない。共同通信杯勝ち馬との相性の悪さや、血統背景を鑑みると、人気ほどの妙味は感じられず、思い切って「消し」でいきたい。
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著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか
20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。