「すべての人にスケートボードの魅力を届け、価値を創造する存在となる」というビジョンと、国内外のスケートボードとそのカルチャーの発展を目指すイベント「UPRISING TOKYO Supported by Rakuten」が26日から28日に有明アリーナで開催され、男子は堀米雄斗が最終ラストランで大逆転劇を見せて優勝。女子決勝には全員日本人が進出し、21歳の藤澤虹々可以外は全員10代という若い世代が活躍する中、14歳の上村葵が優勝に輝いた。
◆【前編】新・国際大会を制した堀米雄斗と上村葵 〜スケボー最高の瞬間と受け継がれるStyle is Everything〜
目次
■ラストで臨機応変にトリックを変更する堀米雄斗の対応力
堀米雄斗は決勝2本目までノーミスの滑りができず、5位で迎えた3本目のランではダブルセットのハンドレールと最後の12段ステアでのハンドレールのトリックを変え、見事にフルメイク(1つもミスなく滑りきること)。土壇場で大逆転劇を見せての優勝を勝ち取った。
どんな大会でも落ち着いて自分の滑りを見つめ、その時々の調子に合わせて臨機応変に対応する姿に王者の片鱗を見た。
インタビューでは、私がどうしても気になって聞いた「なぜラストトリックを(ノーリーバックサイド270ボードスライドからスイッチ180Kグラインドに)変えたのか」という質問に対して、「(12段ハンドレールで着地の際)最後のバンクの所に当たっちゃってたから、それで変えようと思った」と話しており、確かにレールから降りた先に少しバンクが伸びているため、着地でより前に降りないとメイクできないように見えた。
競技後のインタビューでは「自分の滑りができて本当に嬉しいし、日本でこういった大きな大会ができて良かった。世界のトップが来てくれるのはなかなかないし、みんなと滑れて嬉しい」。
「大会以外のストリートカルチャー(としてのスケートボード)の活動もして行き、本当のスケートボードの楽しさと魅力も伝えていきたい」と話した。
UP RISINGが「他の大会とは違う部分は…」という質問に対しては、「普段オリンピック予選に出ないような、世界のトップスケーター達と滑ることで、インスピレーションだったり、楽しみを見つけられる大会なんじゃないかと思う」と話し、大会だけではない、スケートボードの魅力についても語った。
■カルロス・リベイロはスイッチトリック量産
31歳のカルロス・リベイロは決勝1本目のランで途中、ロングレールでメインスタンスのKグラインド以外はスイッチトリック(通常とは逆のスタンスでトリックを行うこと)もしくはノーリー系(通常とは逆の進行方向側の足で蹴りあげて飛ぶ技)の技、つまりほぼすべての技を逆足スタンスのトリック構成で挑み87点を獲得。
3本目まではずっと首位をキープしていたが、堀米3本目のランで逆転を許し準優勝となった。
競技後のインタビューでは「日本の次世代は短期間で成長を遂げていて素晴らしい。海外の大会も5、6人日本のスケーターが出ていると思っていたら、翌年には10人くらい出ている」と話し、日本人スケーター達のスキルの変化についても話してくれた。
■日本を代表するハンマートリッカー・佐々木音憧
速いスピードから繰り出されるダイナミックなトリックが持ち味の16歳、佐々木音憧は、決勝1本目からも飛ばしまくる。
最初にビガースピンフリップ ボードスライド(空中でデッキを横に450度回転させ、さらに縦にも1回転させてからデッキの真ん中でレールを滑り降りる技)を決めると、その後も一切ブレのないトリックを量産。
つい先週、ロサンゼルスで行われたDamn Amという世界のアマスケーターが目指す登竜門となる大会で2位を獲得してすぐの大会だというのに、疲労の色を感じさせない見事な滑りを見せてくれた。
最後にはビッグなバックサイド360を見せ、ハンマートリッカー(大きなセクションでダイナミックな技を行うスケーター)としてのスキルだけでなく、3本目のラストランでは12段ハンドレールでノーリーヒールフリップ フロントサイドボードスライド(進行方向側の先端を蹴って飛び、後ろ脚の踵でデッキを縦に1回転させてからレールに乗り、デッキの真ん中部分で滑り降りる技)を成功させた。
競技後のインタビューでは、6月に行われるオリピック予選のローマ大会の質問に対して「(オリンピック予選で)決勝に行ったことがないので、決勝に行き上位に入りたい」と話した。
■上村葵はハリウッドハイを得意技で攻略
上村葵はラン2本目でフルメイク(ノーミスで滑りきること)のランを見せ、84.19点を獲得し首位に。そのまま抜かれることなくトップを維持し、優勝を果たした。
インタビューでは、今大会の特徴的なセクションとなったハリウッドハイと呼ばれる12段のハンドレールで「フロントサイドフィーブルグラインドと得意技のバックサイドスミスグラインドが乗れて良かった」と話し、6月下旬にローマで開催されるパリオリンピック予選の質問には「今日本人選手の中で6位なので、(同じ国からは)3人しかオリンピックに出場できないので絶対に(3人以内)に入れるようにしたい」と話した。
※パリ五輪スケートボードは1種目22名まで参加できるが、1か国最大3名まで
日本人は現在、西矢椛[2位]中山楓奈[3位]赤間凛音[5位]織田夢海[6位]吉沢恋[10位]上村葵[11位]と、大混戦の様相を呈している。
[]内は5月28日時点のオリンピックランキング
■次世代スターの片鱗/吉沢恋
13歳の吉沢恋(ここ)は予選を1位で通過、準決勝は7位で決勝に進んだ。
日本スケートボード選手権などで好成績を残し日本代表入りし、昨年7月にローマで行われたオリンピック予選では6位の成績を残しており、今後の活躍が期待される。
競技後のインタビューでは「得意技であるビッグスピンフロントサイドボードスライド(空中でデッキを横に270度回転させてレールに乗り、デッキの真ん中で滑り降りる技)をメイクできて良かった」と話していた通り、12段のハンドレールで完璧な成功を見せた。
今後の目標について聞かれると「自分だけにしかできない技を身につけたい」と話し、今後のニュートリックの目標は「フリップノーズスライドのビッグスピンアウト(デッキを縦に1回転させてレッジにデッキの先端を乗せて滑り、最後にデッキを横に回転させながら降りる技)」が今後の目標と話してくれた。
■衝撃のBS5-0グラインド/大西七海
12歳の大西七海(ななみ)は予選を7位、準決勝を3位で通過し決勝に進んだ。
圧巻だったのは12段のハンドレールで見せたバックサイド5-0グラインド(トラックと呼ばれる車軸の後ろの部分をレールにかけて滑り降りる技)。
レッジやカーブといった幅のある面にかけるのではなく、後ろのトラックを点でレールに乗せて滑り降りないといけないため、難易度も高くなるが中学1年生ながら、大舞台で堂々たる滑りを見せた。