FIBAアジアカップを控える日本女子バスケットボール代表(世界9位)が16日から3日間、デンマーク代表(同52位)と強化試合を行い、3連勝を収めた。
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■新たなスタイルの精度向上
2021年の東京オリンピックでの銀メダル獲得から一転、昨年のFIBA女子ワールドカップでの惨敗という結果を受けて再出発を図る女子「アカツキジャパン」。今月初旬のカナダ遠征に続き、高崎アリーナ(群馬県)での開催だった今回の3試合では、ワールドカップでの反省も踏まえつつ新たなスタイルの精度向上に務めた。
今年の代表活動に入って施したもっとも明確な変化の一つは、ポイントガードもシューティングガードもできる選手を2人同時にコートに立たせることでボールが停滞しないようにしていることだ。2021年の東京オリンピックでは昨年、WNBAワシントン・ミスティックスでもプレーしたPG町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)の卓越した司令塔ぶりが面白いように機能したことで偉業を達成した。が、ワールドカップでは日本の攻撃の起点となるPGにボールを持たせないようにするなどの対策をされ、それによってボールの動きが滞ってしまったことが、得点力の低下につながった(東京オリンピックの平均得点82.2点、ワールドカップでは同63.2点)。
この課題を解決するために施したのが、この「ボールハンドラー(ドリブルができる選手)」を複数置くという措置だった。デンマークとの3試合では、先発メンバーこそボールハンドラーは山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)だけだったものの、その後は宮崎早織や星杏璃(ともにENEOSサンフラワーズ)と本橋菜子(東京羽田ヴィッキーズ)らの中から常時、2人の選手が出場しているという状態となった。
遠征時のカナダとの試合の際にはまだボールの停滞はあったというが、デンマークとの3試合を見る限り、おおむねそういった時間帯は少なかった。試みは徐々にうまくいっていると見ていいのかもしれない。それは選手たちの声からも感じられた。
ワールドカップで屈辱を味わったメンバーの1人、宮崎は、デンマーク戦を見る限り本橋と同時出場する場面が多く、普段は別チームでプレーする仲ながら、息の合ったコンビネーションを見せた。
■2ガードのワクワク
「今まで『2ガード』(2人のPGが同時出場すること)で出たことって代表ではほとんどなかったので、すごく楽しいですし、こんなバスケットもあるんだなっていう。ENEOSでは私は完全にPGという感じで、菜子さんと一緒に出るとなったら本当にどっちもできる。自分が走ったら菜子さんが合わせてくれるし、自分がボールを持ったら菜子さんが合わせてくれるしっていうのはすごく楽しいですし、ワクワクしますよね」(宮崎)
宮崎と出場する際は彼女がボール運びをし、本橋はシューティングガード的な役割となる傾向があった。それもあってカナダ遠征から本橋がスコアラーとして良さを発揮している。
「2人で出ている時は機動力が生かせると思うし、お互いに考えていることもガード同士でわかるので合わせやすいし、(宮崎などが)中に切り込んでいってくれる分、私が外から打ちやすいというのは感じています」(本橋)
このボールハンドラーが2人以上コートに立つことに関連して、他にも今年の日本代表は異例の試みを施している。それは自軍の選手のフリースローの際に、通常であれば身長の高いセンターやフォワードの選手がレーンに入ってリバウンドを取りにいくところを、小さなガードの選手2人がその役割を担っていることだ。
これは日本のディフェンスが、ガード陣が前から相手のボールキャリアーにプレッシャーをかけることで相手の攻撃回数を減らそうとすることにつながっている。フリースローレーンに身長の高いビッグマンが入らなければオフェンスリバウンドを取る可能性は少なくなってしまうが、ガード陣が入ることで、フリースロー後、相手の攻撃となった瞬間から激しく前から守ることができるのだ。
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著者プロフィール
永塚和志●スポーツライター
元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。