MLBはオールスターゲームを挟み、14日(日本時間15日)からレギュラーシーズンが再開される。今季メジャーデビューを果たしたニューヨーク・メッツの千賀滉大は、ここまで16試合に登板し7勝5敗。チーム先発トップの防御率3.31、113奪三振と順調な滑り出しを見せている。
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■狙いを逆手にとった、カットボール
千賀の代名詞とも言える、決め球フォークボール。海を渡ってもその威力は健在で、被打率.126、Whiff%(打者スイング時の空振り率)59.6%と猛威を振るっているが、当然ながら打者の警戒は厳しくなる。
ローリングス社製のメジャー公式球は滑りやすく、日本人投手が直面する課題は千賀にも例外なく当てはまるようだ。今季の四球率12.3%はMLB下位9%で、コントロールに苦慮している様子が窺える。ボールが先行するとフォークが投げづらくなり、投手不利なカウントでフォーシームを狙われるケースが増えた。千賀が被弾した10本塁打のうち、5本がフォーシームによるもの。
しかし千賀は、この“悪循環”の中でカットボールに光明を見出している。前半戦最後となる5日(日本時間6日)の登板では、自己最長8回を投げ最多タイの12奪三振をマーク。ボール先行時に、90マイル(およそ145キロ)前後のカットボールでファールを打たせて凌いでいる。
MLB公式「Baseball Savant」によると、千賀のカットボールはRun Value(ランバリュー)「ー9」をマーク。Run Valueとは、カウント・走者状況などを元に、得点期待値がどれだけ変動したかを示すもの。投手で言えば、Run Valueがマイナスであれば、その分「失点を抑止した」球種であると捉えていい。※2023年7月時点(のちに失点も「+」表記へと変更)
このRun Valueにおいて、千賀のカットボールは決め球のフォークボール「ー3」を大きく上回る。フォーシーム狙いを逆手に取り、小さく曲がるカットボールでファールを打たせてカウントを整える。前半戦の最終登板で見せた姿は、今後の躍進を大いに予感させるものだった。
メジャー最高年俸軍団であるメッツは、前半戦を42勝48敗。ナ・リーグ東地区首位、アトランタ・ブレーブスとは18.5ゲーム差の4位と大苦戦。ワイルドカード争いでも、サンフランシスコ・ジャイアンツに7ゲーム差をつけられ崖っぷちの状況だ。
チームのエース、マックス・シャーザーは8勝3敗と体裁を保ってはいるが、もうひとりの大物ジャスティン・バーランダーは故障がちで3勝4敗と振るわない。7月の結果次第では、8月1日(同2日)のトレード期限で売り手にまわる可能性すらある。今後、千賀にかかる期待は一際大きくなりそうだ。
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文●SPREAD編集部