2023年FIA世界ラリー選手権(WRC)第8戦ラリー・エストニアは23日、競技4日目となるデイ4がエストニアのタルトゥを中心に行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのカッレ・ロバンペラが2時間36分3秒1の走りで今季2勝目を挙げた。ロバンペラはこの日、前日から全ステージでトップタイムを叩き出し、圧巻の速さでディフェンディング・チャンピオンの貫禄を見せつけた。
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■エバンスは表彰台逃す
2位には52秒7遅れでヒョンデのティエリー・ヌービル、3位には同じくエサペッカ・ラッピが59秒5遅れで入った。トヨタのエルフィン・エバンスは表彰台獲得を果たせなかった。
ラリー・エストニアの最終日デイ4は、サービスパークの南側エリアで2本ステージを、ミッドデイサービスを挟むことなく各2回走行。4本のステージの合計距離は61.08km。天気は朝から雲が多く、時々雨がぱらつくことも。午前8時の時点で気温は13度前後と、冷涼なスタートとなった。
首位ロバンペラは前日のデイ3で、全9ステージでベストタイムを記録し、2位のヌービルに対するリードを34.9秒に拡大。最終日はステージの合計距離が短いため、十分といえるリードを既に築いたが、それでもロバンペラは手綱を緩めず、前日に続き全ステージでベストタイムを記録。ボーナスの選手権ポイントを獲得可能な最終のパワーステージも制し、最終的に2位に52.7秒差をつけて優勝を飾った。
ロバンペラはこれでラリー・エストニアを3年連続で制覇し、今シーズン2勝目を記録。2021年にラリー・エストニアでWRC初優勝を飾ったロバンペラは、通算10勝目。ロバンペラは3年前の同ラリーでWRC史上最年少優勝。また、これで史上最年少2桁勝利を収めた。
ロバンペラは一大会で獲得可能な最大ポイントである30ポイントを獲得したことにより、ドライバー選手権におけるリードを55ポイントに広げた。なお、今回ロバンペラはデイ3の朝から13ステージ連続でベストタイムを刻み、これは2008年ラリー・ドイチェランドでの、セバスチャン・ローブ以来の記録となった。
ロバンペラは「ここエストニアでWRC10勝目を達成し、3年連続で優勝できたので、とても素晴らしい気分です。自分にとってエストニアは本当に素晴らしいラリーですし、毎回楽しんでいます。土曜日の朝からはすべてのステージで勝つことができましたし、特別な終末になりました。自分たちの速さとクルマの性能をフルに発揮できたと思うので、本当にハッピーです。このようなスピードで走りながらも本当にヒヤッとするような瞬間は一度もなく、常にプッシュしながらもドライビングを楽しむことができたので、自分とヨンネはいい仕事ができたと思います。運転していて本当に楽しかったですし、素敵なステージと素晴らしい応援を満喫しました。また、ステージを走り終えてすぐに、表彰台で佐藤さん(トヨタ自動車佐藤恒治社長)と勝利を一緒に祝うことができたのも嬉しかったですし、彼もとても喜んでいました」と喜びを爆発させた。
4位のエバンスは、最終日もラッピと激しいポディウム争いを展開。逆転叶わずながら、パワーステージでロバンペラに次ぐ2番手タイムを記録、ボーナスの4ポイントを獲得し、ドライバー選手権2位の座を守った。
■勝田貴元は7位
エバンスは「週末を通して非常に激しい表彰台争いをしましたが、最終的に表彰台に上がることができず残念です。とてつもなくタイムが離れていたわけではなく、残念ながら僅かに届きませんでした。金曜日はいいフィーリングが得られるまで少し時間がかかり、それ以降の戦いのことを考えると、出走順という点ではその時点で既に厳しい状況だったといえます。この週末、圧倒的な強さを発揮したカッレは素晴らしい戦いをしたと思います。自分たちの結果に満足することは難しいですが、総合4位と、パワーステージの結果によってポイントを獲得することができました。次のラリー・フィンランドに向けて良いウォームアップにもなったと思うので、来週はしっかりと準備をして、より良い結果を目指したいと思います」と次戦に照準を合わせた。
また、勝田貴元は6位のピエール=ルイ・ルーベ(Mスポーツ・フォード)と激しく順位を争い、SS20では力強い走りでルーべを抜き総合6位に浮上した。しかし、最終のSS21で逆転を許し0.3秒差の7位でラリーを終えた。
勝田は「ポジティブなことも、ネガティブなこともあった週末でした。ミスや危ない瞬間を経験することなくラリーを終えられたのは良かったですし、クリーンに戦うことはできたと思います。しかし、いろいろな状況でスピードが足りていなかったので、次のラリーに向けて改善しなくてはなりません。序盤はかなり苦戦し、その後フィーリングは良くなっていきましたが、それでもさらに高いスピードを発揮したかったですし、自分のパフォーマンスには到底満足することができません。それでも、この状況をポジティブに捉え、今回の戦いを分析して次のラリー・フィンランドに向けて改善したいと思います。カッレとヨンネ、そしてチーム全員の優勝を祝福します」と悔しさをにじませた。
なお、TGR-WRTはロバンペラとエバンスが獲得したポイントにより、マニュファクチャラー選手権におけるリードを57ポイントに広げている。
チーム代表のヤリ-マティ・ラトバラは「カッレはこのラリーを完全に支配しました。金曜日は出走順一番手でスタートして一日の終わりにはトップに立ち、土曜日と日曜日はすべてのステージでベストタイムを記録し、パワーステージでも優勝するなど、まさに完勝と言えます。彼にとってエストニアはホームラリーのようなもので、多分、シリーズの中でもっとも得意なラリーですし、もっとも走りを楽しめるラリーだと思います。また、タイトル防衛に向けて、最大ポイントを獲得したのも素晴らしかったです。エルフィンもいい戦いをし、パワーステージでは力強い走りで2番手タイムを記録しました。彼自身にとって貴重なポイントを獲得しただけでなく、マニュファクチャラー選手権でもリードを広げることができました。今週末、佐藤(恒治 トヨタ自動車社長)さんが我々と共にいてくれて、一緒に勝利を祝うことができて本当に嬉しかったです。今は、2週間後にフィンランドで開催されるチームのホームラリーを楽しみにしていますし、そこでも優勝できることを願っています」とホーム・ラリーに向け、必勝を期した。
さらに、TGR-WRTの豊田章男会長は「カッレ、ヨンネ、優勝おめでとう! そして、ラリー・エストニア3連勝おめでとう! また今度ドーナッツをプレゼントできたらと思います」と祝福のコメントを寄せつつも「ケニア、エストニアからの良い流れを次戦に繋げられるよう、私も万全の準備でフィンランドに向かいますので、チームの皆さん待っていてください。勝つぞ! 勝つぞ! 勝つぞ!」と昨年取りこぼしたチームにとってのホーム・ラリーに向け、気合いを見せた。
WRC次戦8月3日に開幕する「ラリー・フィンランド」。フィンランドのユバスキュラを中心に開催される本ラリーは、WRCを代表するハイスピード・グラベル(未舗装路)イベント。サービスパークはTGR-WRTのヘッドクォーターのすぐ近くに置かれるため、チームにとってはまさにホームイベントといえる一戦となる。
■ラリー・エストニアの結果
1 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) 2h36m03.1s
2 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +52.7s
3 エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +59.5s
4 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +1m06.8s
5 テーム・スニネン/ミッコ・マルックラ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +2m21.1s
6 ピエール=ルイ・ルーベ/ニコラ・ジルソー (フォード PUMA Rally1 HYBRID) +3m09.9s
7 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +3m10.2s
8 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (フォードPUMA Rally1 HYBRID) +6m25.6s
9 アンドレアス・ミケルセン/トシュテン・エリクソン (シュコダ Fabia RS Rally2) +9m54.1s
10 サミ・パヤリ/エンニ・マルコネン (シュコダ Fabia RS Rally2) +10m03.8s
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文●SPREAD編集部