ついに夢の一戦が実現する。
WBA、WBC、IBF世界ウエルター級チャンピオン、エロール・スペンスJr.とWBO同級チャンピオン、テレンス・クロフォード(ともにアメリカ)が7月30日(日本時間31日)、4本のベルトをかけてラスベガスのT-モバイル・アリーナで激突する。間違いなく、近年で一番のビッグファイト。試合の見どころを整理したい。
◆井上尚弥、自分は「スーパーバンタム級最強と言える」 残り2本をかけて「年内やりましょう!」と宣言
■真の頂上決戦がいよいよゴング
当初、今年1月と発表されたスケジュールもあえなくキャンセルされた。本当にふたりは同じリングに上がるのか、思わず頬をつねりたくなる。それほどまでにボクシングファンが待ち続けたドリームマッチだ。
スペンスの戦績は28勝全勝22KO。対するクロフォードは39戦全勝30KO。リング・マガジンの最新パウンド・フォー・パウンドでは、クロフォードが3位、スペンスが4位。初のウエルター級4団体統一王者を決めるにふさわしい、真の頂上決戦と断言できる。
■パワーのスペンスか、巧さのクロフォードか
両者のスタイルを一言で表せば、スペンスはサウスポー・スタンスから左右の強打を叩き込むパンチャー。クロフォードはスイッチしながら試合を作り、機を見て攻勢をかけるボクサー・ファイターだ。
体格も両者のスタイルを現している。記者会見で対峙したふたりを比べると、明らかにスペンスががっしりと力強い。身長も5センチ上回る。一方、ライト級、スーパーライト級を経験してきたクロフォードは細身だが、リートは5センチ長い。しなやかに伸びるリードパンチが対戦相手を翻弄してきた。
■持ち味が違う両者の対決は見どころ満載
スペンス有利とみる識者は当然、攻撃力を挙げる。
体力差を生かしてプレッシャーをかけ、強いパンチを叩き込むという見方だ。直近の試合では、マニー・パッキャオ(フィリピン)を引退に追い込んだヨルデニス・ウガス(キューバ)を10ラウンドTKOに葬った。タフなウガスを終盤に失速させたのは、まさにスペンスが与え続けたプレッシャーだ。これまで倒してきた防衛戦の相手は当時の最強挑戦者ばかりで、対戦相手の質という意味でもクロフォードより勝っている。
それに対してクロフォードの利点は、ボクシングの引き出しが多いこと。試合展開に応じて、スタイルもスタンスもスムーズに変えることができる。相手にとってはやりにくいだろう。ウエルター級ではパワー不足という指摘があるが、階級を上げてからの7戦はすべてKO勝ち。その前から数えれば10連続KOを続けている。決して非力とはいえない。スーパーライト級の4団体を統一した経験も大一番で生きるはずだ。
■オッズはクロフォード有利と出ているが……
33歳のスペンスは酩酊運転での有罪判決、そしてその後の大事故とトラブルに見舞われた。また、35歳のクロフォードもトップランク社のボブ・アラムとの泥試合というスキャンダルがあった。モチベーションと力が落ちていないタイミングで対戦が実現したことは、ボクシングファンとして、本当によかったと思う。
最後になるが、試合の予想。
これは本当にむずかしい。1年3カ月ぶりの試合となるスペンスのコンディションも気になるところだ。一応、スペンスの破壊力に期待してKO勝利を予想しながら、最高の試合を楽しみたいと思う。ちなみに執筆時点(7月24日)でのオッズは、13対8でクロフォード有利。
◆井上尚弥、8R1分14秒TKO勝ち “右ストレート”でフルトン圧倒し世界4階級制覇 2階級4団体統一へ前進
◆4階級制覇のモンスター井上尚弥、年内にスーパーバンタム級4団体統一戦も残された時間はあと10戦か
◆井上尚弥、試合後の記者会見で「気持ちいい最高の日になりました」 「彼が勝つべき日」とフルトン
著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。