日本時間10月1日深夜、世界最高峰の一戦凱旋門賞(GI、芝2400m)が、仏・パリロンシャン競馬場で行われる。
日本調教馬にとって悲願とも言える歴史的快挙を目指し、今年はスルーセブンシーズ1頭が参戦。立ちはだかる海外勢は、世界ランク2位のフクムや、地元フランスの無敗のダービー馬エースインパクトなど、そうそうたる顔触れが揃った。102回目を数える欧州最高峰のレースを制するのは。
◆【凱旋門賞2023/オッズ】海外ブックメーカー1人気は無敗の仏ダービー馬エースインパクト、日本産のハーツクライ産駒も圏内浮上
■エースインパクトは距離未経験が懸念材料
今年の一番の目玉は、各ブックメーカーで1番人気に支持されている、地元フランスの今年のダービー馬・エースインパクトだろう。
デビューからここまで無傷の5連勝。フランスダービーでは後方2番手から直線で大外一気の圧巻の末脚を披露し、トラックレコードの快勝劇。後続を3馬身半もちぎり捨てるパフォーマンスには一目置かざるを得ない。
前走はGIIのギヨームドルナノ賞を余力残しで快勝し本番へ。道悪での開催が多い凱旋門賞だが、本馬は2戦目に不良に最も近いcollantの馬場で快勝しており道悪への対応は大丈夫だろう。
問題は、芝2400mの距離が未経験であること。昨年は厩舎の先輩ヴァデニが距離未経験ながら2着に好走しているが、芝10Fまでしか経験していない馬の優勝は1990年ソーマレズを最後に出ていない。
また、フランスダービーが2400mから2100mに短縮された05年以降、同レースを制した馬の凱旋門賞制覇は、20年のソットサスのみ。同馬は4歳時に勝っており、2400mを経験してからの戴冠だった。
これらのことを踏まえると、人気ほどの信頼感は置けない印象があるのは事実だ。
■フクムに立ちはだかる年齢の壁
イクイノックスに次ぐ、世界ランク2位につけているフクムも注目の1頭だ。1歳下の全弟は、デビューから10連勝、さらにGI6連勝を果たし、昨年のカルティエ賞年度代表馬に輝いたバーイード。いつからか“バーイードの兄”と呼ばれていた兄フクムも、一歩ずつ階段を駆け上がり、世界のトップランカーに上り詰めた。
5歳を迎えて本格化を果たし、昨年のコロネーションCでGI初制覇。今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSでは、凱旋門賞出走予定でレーティング2位のウエストオーバーとの激戦を制し、欧州12F路線の頂点に立った。
フクムはこれまでにSoft(=重)やGood to Soft(=稍重)の馬場状態で5戦4勝の道悪巧者。馬場への対応力に加えて距離経験も豊富となれば中心に据えられる存在なのだが、過去101回の歴史の中で、一度も6歳馬の優勝がないという点がマイナス材料だ。さらに、6歳以上の馬の勝利は、32年のモトリコ(7歳)1頭のみで、3~5歳が幅を利かせる凱旋門賞にとって、古豪にとっては厳しい戦いを強いられるかもしれない。
■スルーセブンシーズはどこまでやれるか
今年、日本から唯一参戦するのがスルーセブンシーズ。3歳時はオークス、秋華賞に参戦するも惨敗。5歳を迎えた今年に本格化を果たし、3勝クラスを勝ち上がって臨んだ中山牝馬Sで待望の重賞初制覇。続く宝塚記念では、道中最後方から上がり最速の末脚を繰り出し、世界ランク1位のイクイノックスにクビ差の2着と好走した。
早い段階から凱旋門賞に登録し、宝塚記念の結果を踏まえて同レースへの参戦を決めたスルーセブンシーズ。父ドリームジャーニーは、12、13年と2年連続凱旋門賞2着のオルフェーヴルの全兄。祖父ステイゴールドは、10年2着ナカヤマフェスタも輩出しており、ステイゴールド系は凱旋門賞を得意とする血脈だ。
道悪は3歳時に重馬場のミモザ賞を快勝。特に気にする必要はなさそうだが、初めて背負う58キロの斤量がどう影響するか。また、牝馬は過去10年で【6.3.1.28】と、牡馬より分が良いが、GI制覇のない古馬牝馬は、93年アーバンシー、12年ソレミアがいる程度で、重賞1勝の本馬がどこまでやれるかは疑問符がつく。
日本で発売される馬券では人気も集めそうで、妙味を考えると積極的には買いたくない1頭だ。