イクイノックスの凄みは「71.4%」にあり 最強馬論争に“終止符”か

 

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イクイノックス/2023年天皇賞・秋(C)Toshihiko Yanagi

第168回・天皇賞秋(GI、芝2000m)が29日、東京競馬場で行われ、1番人気のイクイノックス(牡4、木村)が単勝1.3倍の圧倒的な支持に応えて優勝。2020年のアーモンドアイ以来、史上3頭目となる同一レース連覇の偉業を達成した。

◆【実際の映像/天皇賞秋2023】「これが1分55秒2の世界……」イクイノックス騎乗のC.ルメールのジョッキーカメラが捉えた“異次元のスピード”

■その強さはもはや“モンスター”

「1分55秒2」

レコードの赤い文字が表示されたその刹那。私は映像を二度、いや三度見してしまった。

昨年の雪辱に燃えるジャックドールと藤岡佑介。1ミリも脚を余すまいと覚悟を決めて逃げた結果、1000m通過は57秒7を計時した。昨年のパンサラッサが刻んだラップと遜色ないハイペース逃げ。レコード決着の伏線として張り巡られたのは間違いない。

当たり前だが、レコードを計時するためには一定以上のペースアップが大前提。1分56秒1を計時した2011年の天皇賞・秋は1000m通過56秒5の激流で、1~5着馬はすべて道中7番手以下。逃げ先行馬の展開に付き合わないことが上位進出の後押しとなった。

その法則に倣えば、今年の天皇賞・秋は道中10番手で運んだジャスティンパレスが突き抜けていたはずだが……同馬より0秒4速くイクイノックスはゴール板を駆け抜けた。道中は3番手、逃げるジャックドールを射程圏に捉えるポジションでの追走だから、もはや“モンスター”としか形容できない。

■「これは正しい時計か?」

凄いのはレコードだけではない。1分55秒2が生まれたラップを走破地点ごとに振り返ると、さらにイクイノックスの強さが際立つ。

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・1000m 0:57.7
・1200m 1:09.1
・1400m 1:20.5
・1600m 1:32.1
・1800m 1:43.5
・2000m 1:55.2

今年、ローズSを制したマスクトディーヴァが更新した芝1800mのレコードタイム。それ以前に1分43秒5以内で走破した馬は1頭もいない。1600m通過地点の走破タイムも、安田記念やマイルCSの勝ち時計と言われても違和感ないものだ。これを道中3番手追走で叩き出したことに計り知れない価値がある。

「これは正しい時間か?」

world Horse Racingによる「X」へのポストは偽らざる本音だろう。ウサイン・ボルトが1000m9秒58の世界新記録を叩き出し、人類最速を新たなステージに引き上げたのと同じ衝撃。ロンジン・ワールドベストレースホース・ランキング1位の実力をまざまざと見せつけた一戦だった。

■イクイノックス勝利時の“6番人気以下2着率”は驚異の71.4%

イクイノックスが異次元のパフォーマンスを発揮するたび、にわかに騒がしくなるのは競馬ファンで終わることなく続く“最強馬論争”だ。大谷翔平しかり、久保建英しかり。2000年代以降のアスリートの評価は世界基準か、否か。その物差しで測れば「世界が認めるイクイノックスが歴代最強である」という結論にさほど異論はないはずだ(私はエルコンドルパサーが最強馬だと思っていた)。

最強馬の基準はそれぞれが持っていると思われるが、私は走破タイムやラップ、世界基準であること以外に勝利時における“2着馬の人気”をチェック項目に入れている。以下に記すのは、歴史に名を刻んだ馬たちの勝利時における“6番人気以下2着率”だ。

・アーモンドアイ 9.1%(11回中1回)
・ディープインパクト 41.6%(12回中5回)
・キタサンブラック 50.0%(12回中6回)
・リバティアイランド 60.0%(5回中3回)
・イクイノックス 71.4%(7回中5回)

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GIをバンバン勝つ馬は当然、1人気に支持されることがほとんど。“もっとも負かす可能性が高い”人気馬が自身のスタイルを崩してまで上記の馬を負かしに行った結果、連対を外すパターンは珍しくない。イクイノックスをマークする形でレースを進めた昨日のドウデュース、反対にイクイノックスに目標とされたタイトルホルダーの有馬記念がその典型と言えよう。

この数値において、イクイノックスの71.4%はもはや異常値。記憶に新しい牝馬三冠馬・リバティアイランドも60.0%と近年では“バランスブレイカー”と言えるレベルの数字を誇るのだ。

■リバティアイランドとの対決は最大級の注目度に

2頭の名前が出たところで、ファンの焦点は早くもジャパンCに向いているはず。イクイノックスとリバティアイランド、さらにはタイトルホルダー。海外から参戦表明をはたしたコンティニュアスも虎視眈々と牙を研ぐ。今年最大級の注目を集めるカードだ。

三冠牝馬と現役最強馬の対決で思い出すのは、2012年のジャパンC。オルフェーヴルとジェンティルドンナが壮絶な追い比べのままゴール板を駆け抜け、ハナ差でジェンティルドンナが勝利の美酒に酔った。競馬史の1ページに刻まれた死闘から11年。奇しくもそのシチュエーションは似通っている。雌雄を決する11月の東京決戦から目が離せない。

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著者プロフィール

田原基成(たはらもとなり)●競馬評論家
競馬予想の魅力を世に発信し続ける「競馬ストーリーテラー」。予想に対して謎ときに近い魅力を感じており、ローテーション・血統の分野にて競馬本を執筆。現在はUMAJIN内「競馬サロン」にてコラム【競馬評論家・田原基成のいま身につけるべき予想の視点】 執筆中。『SPREAD』ではデータ分析から読み取れる背景を紐解き、「データの裏側にある競馬の本質」を伝えていく。

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