第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)の男子決勝が29日、東京体育館で行われ、福岡第一が福岡大学付属大濠との福岡県勢対決を63-53で制し、4大会ぶり通算5度目の優勝を達成した。
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■けが人続出で危機的状況も「2週間で作り上げたチーム」
最終結果が示す以上の、圧倒的な差をつけての完勝だった。フルコートプレスを含めた伝統の粘り強いディフェンスで、大濠を前半でわずか14得点に封じ、24点の大差をつけてハーフタイムに入った。
最終クォーターに大濠も3Pを次々と決めるなど点差を縮めるが、反撃の狼煙を上げるのはあまりに遅すぎた。11月の本大会予選・福岡県予選決勝リーグで破れた相手に雪辱し、昨年の決勝で準優勝に終わった悔しさをすすいだ形となった。
福岡第一は9月に左足を骨折し2か月間、戦列を離脱した崎濱秀斗(3年)をはじめ、主力にけが人が続出する危機的状況に置かれた期間があった。幸い彼らは復帰できはしたものの、同校の井手口孝コーチによれば「12月に入って2週間で作り上げたチーム」で臨んだ大会だった。
「初戦から厳しい組み合わせとなって、正直、『いつ負けるのかな』という大会でした。何回もウインターカップに出させてもらっていますけど、こういう気持ちで臨んだのは初めてでした」
大会終了後、同コーチはそう気持ちを吐露した。
■優勝の立役者・崎濱が見据える挑戦
その中で、優勝の立役者となったのが崎濱だったのは明白。身長177センチとそこまで大きくはないにも関わらずダンクができるなど身体能力が高く、ドライブや3Pによる得点やアシストパス能力にも秀でたオールラウンダーで、今大会でも屈指の技量を有した選手として注目を集めていた。
大濠との決勝戦でも、序盤からレイアップや遠い場所からの3Pを決め、かつノールックパスで仲間の得点のお膳立てをした。18得点、7リバウンド、4アシストをマークした崎濱。絶対的な中核選手としてチームを引っ張った。
国内高校バスケットボール最大のタイトル獲得を果たした崎濱だが、見据える場所はまだまだ高い所にある。中学3年の頃から海外でのプレーを目標としてきた彼にとって、「日本で無双した」からといって慢心するつもりはない。
海外の大学等へのネットワークを持つ東京のクラブチーム「Tokyo Samurai」にも加わり、7月には同チームの選抜メンバーとしてユースクラブの出場する大会のためアメリカ遠征にも参加した。その機会を振り返って、崎濱はこう振り返った。
「ディフェンスはどちらかというと日本人のほうが上手だなと感じたんですけど、やっぱり身体能力やシュート力とか、そういった部分は日本とは大違いというふうに感じたので、自分も高めていかないところだと思っています」
■英語力もすでにハイレベル、準備万端で渡米へ
今夏には「スラムダンク奨学金」の奨学生に決まり、来年からは渡邊雄太(NBA/フェニックス・サンズ)も通ったセントトーマスモアスクール(コネチカット州)へ進学することになっている。当然、NBA入りは頭にあるとは思うが、「まだそういうレベルではない」(崎濱)と大風呂敷を広げることはなく、まずはアメリカ大学のディビジョン1(1部)の大学に行くことを目標としている。
今後の予定としては、高校卒業後の4月からセントトーマスモアに通い始め、学期後の夏季期間中はフロリダ州のIMGアカデミーでワークアウトなどに取り組み、9月に再度、セントトーマスモアへ戻ってシーズンに入ることとなる。
中学3年生の頃からアメリカでのプレーを目標としてきたという崎濱。当時からオンラインの英語レッスンを受け、現在では相当なレベルに到達している。また上記のアメリカ遠征を経てフィジカルなプレーの重要性もすでに十分に認識しているようで、頼もしさを感じる。八村塁(NBA/ロサンゼルス・レイカーズ)や渡邊を筆頭にこれまで幾人もの日本人選手がアメリカの大学等へ進学を果たしてきたが、崎濱ほど準備ができた状態で渡米する選手はこれまでいなかったのではないか。