世界スーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥(大橋)の防衛戦が5月6日に迫った。相手は元世界2階級制覇王者、ルイス・ネリ(メキシコ)。4本のベルトがかかる大一番、さらに34年ぶりの東京ドームでの興行と話題性も高い。いったい、どんな試合になるのか、勝負の行方を占ってみたい。
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■山中慎介との因縁が鮮明な悪童
ネリといえば、山中慎介との因縁が記憶に鮮明だ。2017年8月15日、WBCバンタム級王者だった山中は、具志堅用高が持つ同一王座の連続防衛記録、13回をかけて島津アリーナ京都にネリを迎えた。試合はネリの強打が炸裂し、山中は4ラウンドKO負けを喫してしまった。ところが、試合後、ネリのドーピング違反が明らかに。最終的にネリの王座は公認されたが、後味の悪い決着となった。
第2戦は2018年3月1日。今度はネリが前日計量で1.36キロの体重超過を犯し、試合前に王座剥奪。しかも、試合当日になんとか体重を作って試合が成立すると、またも山中をKOしてしまった。山中は引退、ネリは“悪童”のレッテルを貼られた上に日本への“出入り禁止”となった。
ネリの悪童ぶりは山中戦だけに止まらない。2019年7月のファン・カルロス・パヤノ戦、同年11月のエマヌエル・ロドリゲス戦と連続で体重超過を犯している。ロドリゲス戦では2度目の計量を拒否して試合をキャンセルしてしまった。今回、大橋会長が「1ポンドでも超過したら試合はやらない」と強い態度で臨んでいるのも当然と言える。
■スイング系の左右フックは破壊力抜群
ネリの戦績は35勝(27KO)1敗。井上の26戦全勝(23KO)に見劣りはしない。最も警戒しなければいけないのは、山中戦で見せたスイング系の左右フック。特にサウスポー・スタンスから打ち下ろす左は破壊力がある。いくらモンスターと言えども、まともに受けると危ない。
リング外のトラブルも相まって、ネリはラフなファイターと思われがちだが、実はそうではない。2021年のアザト・ホバニシャン(アルメニア)とのWBCスーパーバンタム級王座決定戦では、ガードを固めるホバニシャンにコツコツと的確にパンチを当て続け、11ラウンドに倒し切ってテクニックがあるところを見せつけた。
唯一の敗戦は、2021年5月のブランドン・フィゲロア(アメリカ)とのWBC、WBA統一戦。この試合は両者接近しての乱打戦となり、6回まではネリがリードしていた。しかし、7回にフィゲロアの強烈なレバーブローが決まるとネリは悶絶、立ち上がることができなかった。ポイントは取っていたが消耗も激しく、スタミナ面の不安やボディの弱さが指摘される結果となった。