終わってみればロマンチックウォリアーの圧勝だった。
検疫期間を伴う出走間隔、距離、慣れない左回り、なんといっても日本競馬が誇る東京競馬場。乗り越えなければならない壁は多く、ヴォイッジバブルが左回りを苦にし、17着に沈んだことを踏まえれば、決して簡単な遠征ではなかったはず。
だが、真のチャンピオンにとって、それらは関係なかった。王者は条件を選ばない。そもそもGI7勝馬に適性を持ち出すのはナンセンスだった。
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■GI7勝、絶対的存在だった“香港の怪物”
日本で国内外芝GI7勝といえば、シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、ジェンティルドンナ、キタサンブラックと名馬ばかり。このなかではウオッカが安田記念を連覇したが、GI6勝目となった2009年は単勝オッズ1.8倍。対してロマンチックウォリアーはその倍、3.6倍もあった。
近年、外国馬は日本で勝てなくなっており、日本特有の高速馬場の影響が大きいとされてきた。実際、ロマンチックウォリアーのマイル最高時計は1分33秒8、得意の2000mでも1分59秒2であり、今回は1秒5も短縮した。遅い速いという問題ではなく、主戦場の香港は起伏こそないが、洋芝を使用した馬場でオーバーシードの日本より時計はかかる。キャリアを通じ、函館や札幌に出走してきた馬が東京に出走するようなもの。
速い馬場から遅い馬場へのシフトチェンジより、速くなる方がしんどいはずだ。近年、外国馬を苦しめてきた日本独自の馬場を一発でクリアできるのは、並大抵ではない。それもこれも近年、日本にやってきた外国馬とは比べものにならない実績だからこそ。日本馬が海外のなかでも好成績を残す、近くて親和性の高い香港のトップオブトップは日本のGI7勝馬と同列で考えるべきだった。
そんなロマンチックウォリアーはなぜ、得意の中距離ではなく、マイルの安田記念を選んだのか。そこには陣営の計算もあったと読む。
宝塚記念だと競馬場で検疫期間を過ごせないというデメリットもあるが、久々のマイル戦出走はチャレンジだったはずだ。だが、そこにはおそらく日本のマイル戦線との力量比較があった。安田記念に出走したGI馬は7勝馬ロマンチックウォリアーに対し、ナミュール、セリフォス、ジオグリフ、ダノンスコーピオン、そしてヴォイッジバブルのGI1勝馬5頭で、複数勝利馬がいない。国内マイル戦線はソングライン引退後、次のスターホースを待つ状態にある。2、3番人気ソウルラッシュ、セリフォスは6、5歳で新鮮味に欠く。これは国内の事情も大きい。