【ラグビー】日本一の大学はどこだ 全国大学ラグビーフットボール選手権の行方を占う

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■伝統のジャージで戦う学生ラグビー

全国大学ラグビーフットボール選手権は12月19日に準々決勝4試合が行われ、1月2日の準決勝の顔ぶれが出そろった。予想通り、強豪校同士の対戦となり、今から胸をワクワクさせているラグビーファンも多いことだろう。

大学選手権は箱根駅伝と並ぶ正月の風物詩。試合のレベルだけを考えれば、トップリーグや国際試合のほうが格段に上だが、なぜかファンからの注目度は高い。

理由のひとつはジャージのデザインではないだろうか。近年、プロのクラブチームはサッカーと区別がつかない“いま風”のジャージを採用している。その点、大学チームは伝統のジャージを着る。頑固なファンの心を、特に正月のイベントにおいて、くすぐる要素がここにありそうだ。それは駅伝にも共通する魅力といえる。

またTMO、いわゆるビデオ判定による中断がないのもいい(決勝戦のみ採用)。胸のすく見事なトライに喜びを爆発させた直後に、スローフォワードのTMO……。これ程しらけるものはない。

ようするに、クラシックなラグビーを存分に楽しめるのが、正月の大学選手権ということになる。

■フィフィタ選手を中心にした天理大の攻撃に注目

準決勝の組み合わせは、明治大学vs天理大学早稲田大学vs帝京大学となった。

注目したいのは天理大だ。関西リーグを全勝で制し、流通経済大との準々決勝では12トライを奪い78-17で圧倒した。フォワード、バックスともに決定力があり、どこからでも攻撃を仕掛けられる破壊力が魅力だ。

中心選手はトンガ出身のシオサイア・フィフィタ選手。187cm、110kgの大型センターで、2020年のサンウルブズのスコッドにも選ばれた。110mハードルのトンガ国内記録を持っていた脚力が出色。とにかく前に出るアタック力が強い。彼のスピードに乗った突進を止めるのは、たとえプロチームでも容易ではない。

■ラインアウトを制するチームが主導権を握る

天理大のもうひとつの魅力はラインアウトだ。ラインアウトは地味に映るが、実は最も高い戦術が要求されるセットプレー。細かいサインプレーと駆け引きでクリーンにボールを獲得し、そこからモールやサイドアタック、あるいはライン攻撃につなげる。近年、ゴール前ラインアウトからの得点シーンが多いのは周知のとおりだ。

天理大はラインアウトの練習に時間を割き、緻密な攻撃と防御を完成させた。自信を持ってタッチに蹴り出すプレーを続けることができれば、試合の主導権を握りやすい。

■力が向上していくのも大学ラグビーの特徴

天理大と対戦する明大は、準々決勝で日大に苦戦した。最終スコアは34-7だったが、後半には一時12-7と迫られるシーンもあった。明大の箸本龍雅キャプテンは、試合後のインタビューで「試合の入りで、相手にいけるかも、と思わせて苦しくなった」と反省した。

天理大と明大は2018年の決勝で対戦し、22-17で明大が勝利した。あのときも天理大にチャンスがあるとみていたが、大舞台で固くなったか、一歩及ばなかった。今回は雪辱を期すチャンスだろう。

大学ラグビーの特徴のひとつは、試合を重ねるごとにチーム力が変動すること。夏合宿が終わってチームを作り、試合経験を積み、選手を入れ替えてチーム力がまとまっていく。勢いに乗る天理大がパワーアップすれば、波乱が起きる可能性がある。

思い返せば、8月、天理大は部員62人が新型コロナに集団感染し夏合宿を断念、9月から練習を再開するという苦難に見舞われた。決勝の舞台に進出すれば、コロナ克服の象徴ともなる。

■早大が順当に決勝戦進出か?

もうひとつの準決勝は、早大の優位が動かないだろう。帝京大は対抗戦で早大、明大、慶應義塾大に破れて4位。準々決勝でも、一歩、力が劣ると思われた東海大相手に14-8の接戦を演じた。ノーサイド直前には逆転シチュエーションで防戦となり、東海大のノックオンで辛くも終了のホイッスルを聞いた。試合後の岩出監督のコメントも「内容の出来、不出来ではなく……」と歯切れが悪かった。

早大は12月6日の対抗戦で明大に14-34と敗れたが、その原因はラインアウトとスクラムとはっきりしていた。準々決勝の慶大戦を見る限り、その修正はきっちりとできていた。期待のルーキー、伊藤大祐選手がセンターで初先発し、55メートルの独走トライを含む活躍をしたのも大きい。

昨年も対抗戦で明大に7-36と負けた後、決勝までにチーム力を上げ、45-35と逆転した。今回も準決勝は無難に突破して、頂点争いに駒を進めるだろう。

準決勝2試合は1月2日に秩父宮ラグビー場、決勝は1月11日に国立競技場で行われる。残り3試合をじっくりと堪能したい。

著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」(産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

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