FIFAロシア・ワールドカップ(W杯)グループH最終節が6月28日に行われ、日本はポーランドに0ー1で敗れたもののフェアプレーポイントの差により、2位で決勝トーナメントに進んだ。
しかし、負けているにも関わらず試合終盤に攻める気を見せず、ボールを回し続けたことで賛否が分かれる結果となった。
最後は両チームの思惑が一致
ポーランドの高速カウンターに対して川島永嗣がビッグセーブを連発した日本。前2戦ではミスも出た守護神だが最終節で名誉を挽回した。
引き分けでも決勝トーナメントに進める日本は前半を0ー0で折り返す。だが後半14分に警戒していたセットプレーからポーランドに先制を許してしまった。

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追いつきたい日本だが決定的なチャンスを作れない。残り時間が少なくなるなかで西野朗監督は、他会場で行われているセネガル対コロンビアの戦況も踏まえて決断する。
後半37分に2トップの一角で出場した武藤嘉紀選手をベンチに下げて、代わりに長谷部誠選手を入れる。長谷部選手は「イエローカードの枚数で日本はセネガルよりも少ない」ことを伝え、リスクを冒さず0ー1で終わらせて他会場の結果に賭けることで意思統一を図った。
2連敗中だったポーランドも今大会の初勝利のため、無理にボールを奪おうとはせず日本の思惑に乗ってくる。
アディショナルタイムを含む最後の10分間はボール回しで終わった。

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思い出された1982年大会の「ヒホンの恥」
スタンドからブーイングも聞こえた試合に、英国『BBC』でアナリストを務めるマーク・ローレンソンさんは「茶番だった。W杯は順位表を確定させるのにもっといい方法がなければならない」と辛口のコメントを残した。
エヴァートンでプレーしたレオン・オズマンさんも、「両チームが最後の10分間で行ったのは、我々がW杯で見たくないと思っているものそのものだった」と辛辣だ。
北アイルランド監督の経験があるマイケル・オニールさんは、「自分の運命を他チームの試合に委ねるなど信じられない」と西野監督のギャンブルに否定的だ。
また、オニールさんは1982年、1986年のW杯のようだったとも語っている。
1982年のスペイン大会では、グループステージ最終節で西ドイツとオーストリアが対戦し、ドイツが先制したあとは互いにリスクを冒さずロングボールを蹴り合って試合を終わらせた。
初戦でアルジェリアに敗れたドイツだが2連勝で2勝1敗としてオーストリア、アルジェリアと並んだ。
このうち第2節でチリに大勝していたドイツが得失点差で首位通過し、最終節のドイツ戦を最少失点で終えたオーストリアが2位で通過した。
このときの大会ではアルジェリア対チリの試合が前日に行われており、最終日の2チームはライバルの結果を見てから自分たちの試合結果をコントロールできる立場だった。
そのため地理的に近いドイツ語圏の両国は談合疑惑も持たれ、次の大会からグループ最終節は同じ日の同時刻に始めるようルールが改正された。
これを俗に「ヒホンの恥」と呼ぶ。
土壇場で見せた西野監督の勝負度胸

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日本は日程的にセネガル戦とポーランド戦のどちらかで勝利を狙い、どちらかは選手を休ませる必要に迫られていた。
西野監督は2連勝狙いでコロンビア戦とセネガル戦に同じラインナップを並べて勝負に出た。セネガル戦では試合終盤に宇佐美貴史選手を投入し、守って引き分けではなく最後の瞬間まで攻めて勝ち点3を取りに行く姿勢も見せた。
そのためポーランド戦では連戦で疲弊した選手を休ませ、先発メンバーを6人入れ替えた。その影響もあって前2戦ほどスピーディーで効果的な攻めが見せられない。
残り時間と自分たちの攻撃力、コロンビア守備陣のディフェンス力を考慮して、他力本願にはなるが最も負ける可能性が少ない可能性にすべてを賭けた。
失敗すれば決勝トーナメント行きも、ここまでの試合で得た評価や名声も捨てることになってしまうが、それでも自分たちが同点ゴールを奪うより、コロンビアがセネガルを封じる可能性のほうが高いと判断し、無理に攻めて致命的な2点目を失うことは避けた。
土壇場で勝負師の勘と度胸を見せ、試合には負けたが勝負には勝った。
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