【野球】巨人新助っ人・テームズの「不安なデータ」とは?  浮かび上がる課題を徹底分析

巨人の新戦力として期待されるエリック・テームズ (C)Getty Images

2020年の巨人は、強さと脆さの両方が垣間見えたシーズンを送った。3度目となる原辰徳監督体制の2年目、レギュラーシーズンでは盤石な戦いぶりでセ・リーグを制したが、日本シリーズではソフトバンク相手に2年連続の4連敗。最後まで打線が噛み合わずに屈辱の敗退となった。

オフに入ると積極的な補強に動き、DeNAから梶谷隆幸外野手、井納翔一投手をFAで獲得。さらに、MLBでも実績のあるエリック・テームズ内野手、ジャスティン・スモーク内野手も迎え入れた。

この両外国人の持ち味はなんといっても長打力だ。2020年の目玉補強であったジェラルド・パーラ外野手も、直近までMLBでプレーしていたという点ではテームズ、スモークと同じだが、典型的な中距離打者であるパーラがNPBにアジャストしきれなかったという事実から、今度は長距離砲に絞って補強したという意図も見え隠れする。

新助っ人の2人はNPBに適応し、巨人打線に厚みをつけることができるのか? 本記事ではまず、テームズがMLB時代に残したデータなどから特徴や課題について分析をしたいと思う。

◆巨人の新大砲・スモークをデータで徹底解剖 活躍のカギは「選球眼」

■韓国で打撃4冠、MLBへの逆輸入で結果を残したテームズ

テームズの通算成績

2011年にトロント・ブルージェイズでデビューしたテームズだが、その才能を開花させたのは2014年の韓国・KBO挑戦以降だ。2015年には47本塁打、40盗塁の「40-40」を達成するなど、圧巻の打撃4冠でMVPに選出。在籍3年間で打率.349、124本塁打、OPS 1.172という神業的な成績を残した。

この実績を引っさげて2017年にはミルウォーキー・ブルワーズに“逆輸入”で加入すると、31本塁打を放ちKBOとMLBの両方で30本塁打以上を記録した初の選手となった。2019年にも25本塁打を記録するなど長打力には一定の評価が与えられたが、打率が.250を上回ることはなく、2020年はわずか3本塁打のみ。バリバリのMLB選手であることは間違いないが、成績を落としてからのNPB挑戦となった。

■悪化傾向の「バレル」

MLBで96本塁打、KBOで124本塁打という数字を額面通り受け取れば、巨人は左の長距離砲を獲得したことになるが、近年の成績をデータ面から振り返ると、不安要素が見えてくる。

まず目立つのは2018年以降、打球速度が低下し、打球角度も低くなっている点だ。一般的に、打球速度が速いほどヒットになる確率は上がるとされている。ここに打球角度を組み合わせて算出されるのが「バレル」と呼ばれる指標だ。打球球速に応じて8〜50度の範囲で適切な角度は変動するが、この「バレル」のゾーンで放った打球ほど、長打になる確率が高くなる。

テームズの打球速度は2018年以降、91マイル→90.7マイル→88.7マイルと下降傾向にあり、打球の角度も下がっている。結果、バレルゾーンで放った打球が占める割合も、16.7%→9.3%→6.2%と著しく悪化している。長打を売りにしてきたテームズだが、適切にボールを捉えられなくなり、肝心の長打が飛び出す確率が低下しているのは大きな課題だ。

2017〜20年 テームズの打球詳細 出典:Baseball Savant

ちなみに、DeNA加入1年目から長打力を発揮したタイラー・オースティン外野手は、MLB最終年(2019年)の同指標が15.9%となっており、NPBでの好成績につながった一因のひとつと考えて問題ないだろう。

打球の角度が下がったことで、2020年のテームズの打球におけるゴロの割合は43.2%となっており、これは2017年のMLB復帰後で最も高い数字だ。また、典型的なプルヒッターということもあり、打球はライト~センター方向に集中している。

2020年のテームズの打球分布 出典:Baseball Savant

■左投手攻略が出場機会確保のために必要

さらに、無視できないのが左投手に対しての相性だ。MLB復帰後のベストシーズンである2017年も右投手には打率.265を残しながら、左投手に対しては.打率.182と苦手にしていたが、この傾向は2020年も変わらず対右投手.208、対左投手.182となっている。

2020年 テームズのゾーン別打率(対左投手) 出典:Baseball Savant

2020年の球種別成績を見てみると、直球系に対してはある程度の強み(打率.246)を発揮できているが、変化球全般には崩されるケース(カーブ・スライダー系.172、チェンジアップ系.103)が目立っている。苦手としている対左投手に絞って見てみると、高めの直球&外角低めへのスライダーのコンビネーションで抑え込まれていただけに、いかに日本のストライクゾーンに適応しボール球を見逃せるか、そしてストライクゾーン内の直球や失投を捉えられるかがカギとなる。

2020年 左投手がテームズに投じた球種とコース 出典:Baseball Savant

2020年 テームズのゾーン別打率 出典:Baseball Savant

巨人の外野陣でレギュラー起用が確定しているのは、丸佳浩と梶谷の2名とされており、レフトのポジションに本来はファーストを本職とするテームズが入ることが予想される。外野候補には他にもゼラス・ウィーラー亀井善行松原聖弥陽岱鋼などが控えていることを考えると、仮にテームズが左投手に対しての脆さを露呈した場合、早い段階で出場機会に影響が出ることも考えられる。

タレント揃いの巨人ならではでもあるが、せっかくの大型補強の一角といえど、テームズの立ち位置は決して安泰とは言い切れない。それでも、すでに海外リーグでの経験を積んでいるというポイントは、NPBの環境に順応するうえでアドバンテージになる可能性は高いはずだ。

はたしてテームズは悪化している指標を改善し、巨人が期待する長打力を思う存分発揮できるだろうか。

データ・図表出典:Baseball Savant

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文・SPREAD編集部


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